【パリ＝平地一紀】テニスの四大大会第２戦、全仏オープンは７日、パリのローランギャロスで行われ、車いす部門女子シングルス決勝で第１シードの上地結衣（三井住友銀行）が、第２シードのアニク・ファンクート（オランダ）に６—２、６—２で快勝し、５年ぶり５度目の優勝を果たした。 　上地は四大大会通算１０勝目。コタツソ・モンジェーン（南アフリカ）と組んだ女子ダブルスも制しており、今大会２冠を達成した。 　６日は男子シングルス準決勝が行われ、第１シードのヤニク・シナー（イタリア）と、前回王者で第２シードのカルロス・アルカラス（スペイン）が決勝に進出した。女子ダブルスの穂積絵莉（日本住宅ローン）、ウルリケ・アイケリ（ノルウェー）組は準決勝で敗れた。 視線はウィンブルドンへ 　３１歳の上地が、ローランギャロスで２番目に大きいコート「スザンヌ・ランラン」で拍手を一身に浴びた。試合開始から１時間１０分、ファンクートのダブルフォルトで優勝が決まり、「全仏で、新たなタイトルを取ることができうれしい」と穏やかな笑みを浮かべた。 　過去の対戦成績で大きく勝ち越し、１月の全豪決勝でも圧倒していたが、油断はない。「気迫に押されないように、という気持ちでいっぱいだった」。強打にはコースを読んで対応し、鋭い返球で相手のミスを誘った。立ち上がりから１ポイントも与えず２ゲームを先行して主導権を握ると、第２セットも最後は４ゲーム連取で試合を決めた。 　上地の強さの源は、昨年のパリ・パラリンピックで宿願の金メダルをつかんでも満足しない向上心だ。「自分が初めて出た２０１２年ロンドンの後にそうだったように、昨年のパラで『頑張ろう』って思った選手たちの士気は高い。今は誰が勝ってもおかしくない状態」と気を緩めず、筋力アップを図ったり、より心地よくプレーができるように車いすのセッティングを変えたりと、新しいトレーナーとともに自身を磨く。 　先月、左の手のひらを痛め、「（優勝できると）思っていなかった」。前夜は午後１０時頃まで会場で治療を受け、強敵らの挑戦を退けての単複２冠達成。「今年一番の目標」と明言するウィンブルドン選手権の初制覇へ、また入念に備えを進める。（平地一紀）