「あとで後悔しないために、マンションを買うときは、この『3つの価値』を押さえてください……」。アドバイスするのは、不動産コンサルタントで、著書に『中古マンション これからの買い方・売り方』がある後藤一仁氏だ。マンション購入を考えているなら、失敗しないために絶対に知っておきたい、この「3つの価値」について、本人に解説してもらった。 絶対に押さえるべき「3つの価値」とは これから実際にマンションを買う際に失敗しないためには、絶対に押さえるべき価値が3つあります。 (1) 資産価値……いざというときに「売れる」「貸せる」 資産価値があるマンションか、そうではないマンションかの選択によって、将来の運命が大きく変わります。 利便性や住み心地といった自分が「住む」という価値のほかに、いざというとき「いつでもお金に換えられる(売れる)または貸せるという安心感」を持つことが大切です。 「そのマンションをもし10年後、20年後に売るとしたら、売るときの価格は住宅ローンの残債を上回るか?」「貸すとしたら月々の支払額(ローン返済額、管理費・修繕積立金額や固定資産税月割分などの合計額)を上回る賃料で貸せるか?」が重要なポイントです。 「資産価値があるマンションを所有している」安心感はあらゆることに対して気持ちに余裕をもってのぞめる力になると思います。 (2) 安全価値……自然災害の被害を最小にとどめられる 日本は地震や水害などの災害が多い国ですので、何よりも「命」、そして「資産」を守るために、災害などに際し、なるべく被害が最小でとどめられる安全な場所・建物である必要があります。 たとえば、マグニチュード7や8〜9クラスの大地震などで大きな被害を受け、建物が滅失してしまった場合でもローンは残ります。 国や金融機関が救済措置を講じるとした場合でもとうてい足りるものではありませんし、地震の損害にしっかり備えた住宅ローンのプランや保険と考えると、それにかかる費用に閉口してしまう人も多いと思います。 今後、いつ発生しても不思議ではない大地震などに備え、「大地震が起きても自分や家族の生命や資産は守れるのか?」「水害が起きても水没しないか?」などを必ず購入前に調べておく必要があります。 自分が住んで満足できる家か? (3) 利用価値……利便性・居住性・幸福度が高い 「利用価値」とは「資産価値」とは違って、自分にとっての利便性、居住性など、人それぞれの価値です。 利用価値は、「そのマンションに住んでいて便利か? 満足か? 幸せか?」という、わかりやすい価値観なので、物件探しも楽しいでしょうし、暮らしていて日常的に感じられるものです。 「資産価値」や「安全価値(安全性)」という視点は、仮に自分がそのマンションが気に入っても、資産価値という視点から見るとよくなかったり、安全性に何か問題があったり、物件選びの際にその2つのせいでなかなか決めることができず、はがゆい思いをしたりすることもあります。 「利用価値」は「自分だけのもの」なのでシンプルです。 やはり、家を購入する以上、自分が住んで満足できる家でなければならないので、もちろん「利用価値」も大切です。 ただし、利用価値は、自分にとっての利便性や趣味・嗜好、価値観ですので、基本的に他人とは違うものだと理解しておきましょう。 「利用価値」を重視しすぎると…… 利用価値は、自分たちの生活スタイルの今後の変化にともなって変わります。 たとえば今の職場は郊外にあるので、その職場に近く通いやすいといった面も、それは「今」の自分にとっての利便性です。一生その場所に通うという保証はなく、自分都合で勤務先が変わることはもちろん、会社都合で勤務地が変わることも考えられます。 そもそもその職場に勤めていない他人にとっては、郊外のその場所が利便性がよい場所とは限りません。 自分の心に100%従った結果、たとえば郊外・駅遠などの広い面積の場合では、途中で売却や賃貸に出さなければならなくなったときに、お金の面で苦労する可能性が出てくるかもしれません。 つまり、「利用価値」がいきすぎると「資産価値」を削ってしまうことがあります。利用価値は、どうしても優先したくなりますが、不動産を「借りる」のではなく「購入する」場合には資産価値とのバランスが大切です。 「3つの価値」のバランスを考えて買おう 住宅選びは「資産価値」と「利用価値=住み心地(居住性)」の割合を自分の心にそって決め、仮にどちらかに100%近く寄ったとしても自分に正直に選んだほうが幸せになれるとアドバイスをするエージェントもいます。 私はそうは考えていません。資産価値と住み心地は「どちらか」ではなく、資産価値を気にしなくていい一部の人や場合を除き、多くの人にはこれからは「どちらも大切」です。 自分にとっての住み心地に寄りすぎていたために、お金の面で苦労した人たちをたくさん見てきたからです。 住み心地(居住性)は自分にとっての利用価値に含まれているため、その「利用価値」と「資産価値」のバランスが大事です。さらに、災害などに対する「安全価値(安全性)」を加えた3つのポイントが大切だと知っておくとよいでしょう。 ここで紹介した「3つの価値」を押さえて買うか、あまり考えずに買うかで、その後の運命が大きく変わってしまうことがあります。どうかぜひ念頭に置いてください。 【もっと読む】直近5年で爆騰したタワマン「ベスト120」でわかった「値上がりするタワマンの5条件」