東海地方は梅雨入り間近。15年前の梅雨時期に岐阜県で起きた豪雨では、冠水した道路の危険が広く知られることになりました。 【写真を見る】「まさか」が命取りに 梅雨に潜む冠水道路の危険 岐阜・可児川氾濫から15年 ハザードマップで変わる地域の防災力 しかしその後も車の水没や死亡事故が相次いでいます。大雨シーズンを前に、身近に潜む危険を検証しました。 毎年のように繰り返される、記録的な豪雨。 (運転手)「ダメだ、冠水でエンストして止まってしまった」 アンダーパスが濁流で冠水することも…。 (カメラマン)「出ちゃダメですよ、深いですから出ちゃダメですよ」 (要救助の女性)「早く来て!船がないと出られない」 普段、何気なく使っている道路にも、危険が潜んでいます。 (桜沢信司気象予報士)「岐阜県可児市の鳩吹山です。ここから眺めると可児市が一望できます。こちらを流れる大きな川が木曽川、そして木曽川の支流、可児川も見えます」 濃尾平野の北の端、岐阜県可児市は、木曽川やそこに注ぐ可児川が流れ、平坦な土地が広がっています。 安全度が高い「可児川」 衝撃的な氾濫 豪雨による災害は、15年前、普段は水の量が少ないこの可児川で起きました。 (土田自治連合会 酒向浩幸さん)「道路も完全に冠水した状態がこの辺り一帯続いていたので、とてもじゃないけど近寄ることもできないような状態」 近くに住む土田自治連合会の酒向浩幸さんは、当時の事が忘れられません。 2010年7月、ゲリラ豪雨で可児川は氾濫。押し流されたトラックが折り重なる光景は衝撃を与えました。 (桜沢気象予報士)「(可児川は)そんなに氾濫しやすい川なんですか?」 (大同大学 鷲見哲也教授)「この川は安全度が比較的高い川の部類に入る」 大同大学の鷲見哲也教授は、豪雨の直後に、この周辺を調査しました。 (鷲見哲也教授)「当時でも50年に1回とかまれな雨でも安全に流せる容量を持っている川」 整備が進み、「優等生」の部類だったという可児川ですが、あの日、上流の観測所では、6時間雨量238ミリと、130年に1度の雨が降っていました。 どこでも起こる…危険な“アンダーパス”での立ち往生 可児川は中洲によって川幅が細くなる、この辺りから濁流が名鉄の高架下を通る「低い場所」=アンダーパスへ。 水の深さは7メートルにも達し、死者・行方不明者3人を出しました。 あのアンダーパスは、いま…。 (桜沢気象予報士)「“平成22年7月15日豪雨実績浸水深”と書いてありますが…」 (鷲見哲也教授)「最初は雨だけで水がたまって排水しきれなくて(車が)立ち往生する。そのあと川の方から一気に水がやってきて、車などが流されてしまう。でも一番最初に車が止まってしまった原因は雨。それはどこでも起きること」 豪雨を機に、その危険が広く知られるようになったアンダーパス。 現場では、いち早く通行止めにする対策は進みました。 しかし、全国ではその後も、大雨シーズンにアンダーパスで立ち往生してしまう車が、あとを絶ちません。 (鷲見哲也教授)「夜間であると水たまりは反射する。(水が)たまっているかどうかが、すぐに分かりにくい」 運転席から見える実際の水の深さとは? こちらは2016年に1人が死亡した愛知県清須市のアンダーパス。画像では、濁った水がどれくらいの深さなのか、よく分かりません。 運転席からは、実際にどのように見えるのか…桜沢気象予報士が車に乗って確かめてみました。 (桜沢気象予報士) 「行きます、結構深い?浅い?よく分かりません」 「これに大雨だったり周りが暗かったりすると、どれだけ浸水しているのか分からないから、突っ込んでもそのまま行けてしまうのではという感覚」 今回の実験で設定した水深は約20センチ。深みや、沈んでいるものは、濁流でまったく見えず…。車種によっては、止まってしまうこともあるそうです。 (JAF愛知支部 水野彩さん)「前の車が進んでいるから大丈夫だろうと思うのが、同調バイアス。車の種類によってマフラーの位置や車高の高さが違うので、絶対に自分も行けるとは思わないでほしい」 「(Q:冠水した道路には入らない方がいい?)その通りで上から見るだけではどれだけ深いのかは、分からない。一番は迂回をおすすめ」 地域を歩き回り詳細に作成した「ハザードマップ」 可児市のアンダーパスは、15年前も危険が認識されていなかったわけではありません。 当時のハザードマップでも危険箇所に指定されていましたが、その後の可児市などの住民を対象にした調査では約5割の人が「ハザードマップを見たことがない」と答えました。 可児市は地域の防災力を高めようと、豪雨のあと、防災士の養成を始めました。 氾濫した場所の近くに住む、酒向さんもその一人です。 (土田自治連合会 酒向浩幸さん)「ハザードマップこちらの方に掲示してあります」 (桜沢気象予報士)「あ、もうこれ貼ってあるんですか!?」 浸水想定域などが記された市が作ったハザードマップのほかに、また別のハザードマップが…。 地域を歩き回り、オリジナルのハザードマップを作りました。 (桜沢気象予報士)「かなり細かいですね、自宅の家の建物、1軒1軒がわかるように…。【倒木の恐れ(老木)】とかもありますね…。【雨水が集中し道路が冠水】する場所…とか」 (酒向浩幸さん)「『自分たちの周りにこんな危険な箇所がいっぱいあったのか』という、再認識する機会を作ってあげることができた」 災害から命を守るために…「どうやって認知してもらうか」 可児市はこうした自治会ごとのハザードマップ作成も支援していて、すでに8割でハザードマップを完成させました。 災害から命を守る、活動の輪が広がっています。 (鷲見哲也教授)「(Q:きょう一日、可児川豪雨を取材、まわってみてどうでしたか?)(身近に)危険が相変わらずあると思いながら、どんなふうに地域で、自分たちが認識し自分たちでリスクを考えて、仲間にどうやって認知してもらうかという取り組みを見た」 大雨シーズンを前に、改めて身の回りの危険の確認を…。15年前の災害は語りかけています。 ハザードマップは、作って終わりではなく、実際に使ってみて意味を持ちます。 「アンダーパス」は、冠水したら自動で通行止めにできる装置も導入されていますが、全国に3700もあって全て同じ対策をするのが、難しいのが現実です。 見回りに住んでいる人だからこそ、気づける危険もあるはずです。大雨シーズンを前に確認しておきましょう!