家族に安らぎの場を 医療的ケア児を支える 診察も介護も…北海道初の施設誕生 地域差などの課題も

たんの吸引など医療的ケアが日常的に必要な子どもたちがいます。 支える家族の負担が課題となる中、同じ子どもを持つ親が北海道内初の施設を開設しました。 求められる支援とは何なのか、施設を立ち上げた思いに迫ります。 家族の手助けが必要不可欠「医療的ケア児」 突然、鳴り響く警告音。 それは命の危険を知らせます。 (岡本亜美さん)「たんが気管のチューブよりも上に上がってしまった。呼吸器があってうまくいかないとか結局サクション(吸引)で取り切れなくなって(呼吸が)辛くなる」 のどにたんがからみ、息苦しくなったようです。 これが24時間いつ起きるか分かりません。 札幌市に住む岡本楓音さんと姉の凜音さん、母の亜美さんです。 お父さんは単身赴任中で3人で暮らしています。 楓音さんは1歳5か月の時、筋肉などの細胞の活動が衰える難病「ミトコンドリア病」と診断されました。 1人では歩くことも食べることもできず、家族の手助けが必要不可欠です。 楓音さんのように日常的に介護が必要な子どもは「医療的ケア児」と呼ばれ、全国に2万人ほどいるとされています。 (岡本亜美さん)「いまや日常の生活音の1つになっているんですけど、初めはやっぱ呼吸器を持ち帰ったときは、いまの倍以上アラーム音には敏感だった。夜は(楓音の)行動がなくなるので、呼吸器が鳴ることもないしパルスオキシメーターが鳴ることがなくなる中で、(警告音が)鳴ると自然に目が覚める」 自宅での介護は家族に負担がのしかかります。 厚生労働省の調査では、医療的ケア児を介護する家族のおよそ4割が、5分以上目を離すことができないと答えています。 診察も介護も…医療的ケア児と家族を支える新施設 そんな家族のための施設が5月に誕生しました。 石狩市に開設された、こども未来支援拠点「あいのカタチ」。 医療的ケア児とその家族を支える施設です。 運営するのはNPO法人の運上佳江さんと昌洋さんです。 (運上昌洋さん)「きょうのこの日はすごく喜びというか2人で泣いていましたね。ここまでやっぱり大変でした」 (運上佳江さん)「アットホームで家のような広い空間で、怖さがなくて(子どもが)通えるような場所だと言っていただいた」 「あいのカタチ」は子どもと家族を支える新しい拠点として作られました。 1階にはNPO法人の運営としては道内初となる小児科を開設。 2階は医療的ケア児のデイサービスや短期入所ができる施設があり、ここだけで診察も介護も受けることできます。 (見学に来た人)「うれしいですよね。病院もあるしリハビリもあるし、お泊りもあるし、全部が1つになっているからあちこち行かなくてもいいですし、すごく安心できる場所かなと思います」 自らも医療的ケア児を育てる母親 施設を立ち上げた思い 施設を立ち上げた運上佳江さん。 自らが薬剤師として小児科で働いています。 佳江さんは2017年にNPO法人「ソルウェイズ」を設立し、札幌などでデイサービスや訪問介護を運営するなど、医療的ケア児を支援してきました。 その原動力となっているのは、家族の存在です。 (運上佳江さん)「ただいまー!ママ遅くなっちゃった」 娘の愛夕さんと実來さん。 佳江さんは2人の医療的ケア児を育てる母親です。 (運上佳江さん)「遺伝子の病気でVici症候群と言い、日本に十数例しか報告がなくて、現在生存していて連絡がつくようなご家族は5人だと言われています」 出産後、難病が見つかった姉妹。 どう育てていけばいいのか途方に暮れたといいます。 (運上佳江さん)「相談しても区役所では何も教えてくれないし、自分で探してくださいって一覧表を渡されただけ。預かってくれる場所を探しても、結局ないんだ、やっぱりっていうのをすごく感じて、それにもすごく絶望したというか、結局親が頑張らなきゃいけないっていうところにやっぱり疑問も感じた」 医療的ケア児を支える家族の生きづらさ。 運上さんは行き場のなかった娘のため、同じ悩みを抱える人のためにNPO法人を立ち上げ、子どもたちの支援を始めました。 今はさらに2人の女の子が誕生し、忙しくも笑顔が絶えない毎日を過ごしています。 支援に地域差 家族が安心できる環境を 国は家族の負担軽減を目指し、2021年に「医療的ケア児支援法」を制定しました。 自治体による支援は「責務」と明記され、道内でも医療的ケア児の支援施設が増えました。 しかし、地域差があるなど問題は山積みです。 (北海道医療的ケア児等支援センター 土畠智幸さん)「大都市では医療的ケア児が通うデイサービスなどが増えている。地方の場合は社会資源が少ないというのがあるし、地方の中にそういうことを一生懸命やろうとする支援者の方がどれぐらいいるかということによって変わる」  (岡本亜美さん)「こんにちはー!みんないる!ただいま!」 札幌市の岡本さん親子が、開設された「あいのカタチ」を訪れました。 小児科の田村院長は、楓音さんを小さい頃から診ている主治医。 なんでも相談することができます。 (田村卓也院長)「胃ろうも問題ないですか?ちょっとごめんね、見るよー」 (岡本亜美さん)「全然平気」 同じ医療的ケア児を育てる運上さんの施設は、岡本さん親子にとって新たな安らぎの場となっています。 (岡本亜美さん)「楓音ちゃんはこうだからって共有してくれる。どんな発作、てんかん発作なのか見てきてくださった方もいる。そういうところで安心して、私も預けられる」 (運上佳江さん)「次のステップとしては(学校の)卒業後の問題というか、家でずっと過ごすのか親元から離れて違う場所で過ごすのかっていうのが、次は私たちの課題なのかなって。どれが子どもたちにとって親御さんたちにとっていいものなのか、社会の資源として成り立つのかっていうのを考えなきゃいけないことなのかなと思います」 医療的ケア児を社会全体で支えるためにー 家族が安心できる環境づくりが求められています。

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