近年、外国人ドライバーによる交通事故が増えている。警察庁によれば、2022年に11万5241件だった事故が2024年は12万5646件と約1万件増加、人身事故だと2022年の6019件から2024年には7286件と、約1200件増えている。 そうした事故で浮上しているのが、「外国免許切替(外免切替)」の問題である。 「外免切替」の免許で重大事故が連続 2025年5月14日、埼玉県三郷市で中国籍の男性が乗用車で男子児童4人に重軽傷を負わせたあと、現場から逃走。男性は18日に県警吉川署に出頭し、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷)および道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕された。 その18日、三重県亀山市の新名神高速道路では、ペルー国籍の男が運転する乗用車が逆走し、避けようと停車した車などを巻き込む事故を起こした。事故を申告せずに逃走し、翌日逮捕された。 両者とも、海外の運転免許証を日本の免許証に切り替える「外免切替」で免許を取得していたことがわかっている。 外国人が日本で運転するには、当然ながら日本で有効な免許証が必要となる。 それを取得するには、(1)国際運転免許証、(2)日本と同等の免許制度を持つ地域の免許証、(3)外免切替制度を利用して外国の免許証を日本の免許に切り替える、という三つの方法がある。 国際運転免許証はジュネーブ条約を締結している国であれば比較的手続きが簡単だ。だが、発行日から1年間のみ有効で、延長・更新ができないため、主に短期間の滞在や観光の際に取得されることがほとんどである。 (2)は国際運転免許証を発給していない国・地域で、対象はドイツや台湾、スイス、フランス、ベルギー、モナコに限られる。大使館や領事館の翻訳文を添付することで、国際免許証と同等の運転資格を得られる。 知識確認は○×式、10問中7問正解で合格 そんななか、なぜ外免切替だけが問題となっているのか。それは、日本の切替制度自体にあいまいな部分が多いからである。 外免切替は、海外の運転免許証を持ち、その国に3か月以上滞在した実績があれば、適性試験、交通規則の知識確認、運転技能の確認などを行うことで切り替えが可能な制度である。 だが、適性検査が20数か国の言語で受験できたり、知識確認が○×式で10問中7問正解で合格できるといった「ゆるい」関門となっている。 こうしたこともあり、近年では日本へ外免切替のために滞在する外国人が増加し、ツアー化しているという指摘もある。 2023年に外国人が日本で外免切替を行った件数を見ると、1位はベトナムで1万5807件、2位が中国で1万1247件(警察庁調べ)となっている。いずれもジュネーブ条約に加入していない国で、3位の米国が4250件であることを考えれば、日本の制度がこれらの国々に人気であることがわかる。 ジュネーブ条約を締結していない国であっても、日本で免許を取得し、帰国後に国際免許を取得する、いわば免許証の逆輸入が比較的簡単に行えるからである。 旅館の領収書が「居住履歴」になる 本来、日本の外免切替制度は日本国内で運転をしなければならない外国人のためのもの。ところが、本来の目的とは別のかたちで制度が「利用されている」ことになる。 たとえば、現行のルールだと、宿泊先の一時滞在証明書や旅館の領収書を「居住履歴」として、外免切替の手続きが行えるのだ。今年に入り国会でも議論が重ねられている。 こうした状況を受けて、警察庁の楠芳伸長官は5月22日に「住所を確認するための書類は、申請者の国籍にかかわらず住民票の写しを原則とし、観光で滞在する人の外免切替は認めない」とコメント。外免切替制度の厳格化を検討する方針を示した。 車の運転は人の命に関わる行為である。重大な事故を防ぐためにも、厳格なルール作りを求めたい。