4月に熊本で開催された史上最大級のファッションフェスタ「東京ガールズコレクション」。有名モデルによる圧巻のランウェイが多くの若者からの支持を集めました。 【写真を見る】TGCへの挑戦に秘められた老舗アパレルの戦略 キーワード「非効率」に隠された真の価値とは!? この舞台に、2024年に続き2回目の参加を果たした熊本発のアパレルブランドがあります。 ブランド名は「ubusuna(産土=うぶすな)」。「自分たちが生まれた土地」という意味が込められています。 手掛けるのは古荘貴敏(ふるしょう・たかとし)さん。「地方からの服作り」を模索する中、作った服がubusunaです。 古荘本店 古荘貴敏さん「地方のいいものを、地方から発信するってのはすごく重要だと思っていますし、このチャンスを生かしたいと思っています」 熊本県で創業148年になる老舗アパレル「古荘本店」。繊維業界を生き残るために取ってきた戦略があります。 古荘さん「“非効率さ”が地元の中小企業が生き残る一つのキーワードかなと」 非効率な取り組みの一つが、小学校の制服です。 半袖シャツだけで10種類を超える豊富な品揃えで、価格・素材・機能性など多様なニーズにこたえます。 また、病院や施設への出張販売も「非効率なビジネス」だといいます。トラックに服やハンガーラックを詰め込み、九州一円に出向いて1日だけの仮店舗を営業しています。 施設利用者「これかわいいね。これにするわ」 普段外に出られない人に、服を選ぶ喜びを届けます。 施設スタッフ「いいですね、楽しそうで。こういうこと滅多にありませんので」「実際に自分の目で見て選べるのはたいへん嬉しそうで、良かったと思います」 この事業で年間3000万円を売り上げます。 古荘さん「効率化が叫ばれる時代の中で、非効率でアナログに価値がある。少量生産のubusunaも大手はやりたがらない。それだけ手間も時間もかけている。ニッチな市場でがんばりたい」 熊本発ブランド「ランウェイへの道のり」 東京ガールズコレクション前日。本番で披露する衣装が搬入されました。本番では11人のモデルがubusunaを着用します。 ファッションショーは “バックステージが要” と言われています。綿密な準備が、きらびやかなランウェイへとつながるのです。 古荘さんが東京ガールズコレクションに挑戦する理由の一つに、多くの企業が抱える課題がありました。 古荘さん「企業にとっては人材採用が大変な時代。古荘本店に入社して、このブランドに携わりたいという若い人たちに来ていただくのが一つの大きな狙い」 東京ガールズコレクション当日。会場には9700人が来場し、配信では約96万人が視聴しました。 ubusunaの本番15分前、舞台袖でスタンバイするのは、ランウェイの先頭を務める、俳優でモデルの岡崎紗絵(おかざき・さえ)さんです。 岡崎さんが着用するのは、熊本の古墳に描かれた幾何学模様をアレンジした柄が特徴のシャツ。 岡崎紗絵さん「シャツを見た時に本当に柄がすてきだなと思って、他にない柄で」 このシャツはubusunaの最新作「モノグロム 長袖シャツ」。1着6万6000円(税込)と高価ですが、長く愛し、着続けてほしいというコンセプトで作られています。 岡崎さん「素敵ですよね。ものをずっと長く使ったり洋服を長く着たりして。それもすてきな日本の文化なので、継いでいけるのは良いことだなと思います」 ubusunaのランウェイが始まりました。 古荘さんは客席で見守ります。 古荘さん「最初に熊本を思わせる阿蘇とか、手仕事の職人さんたちの動画の後に、颯爽と岡崎さんが出てこられたときは、すごくゾクゾクとしました」 岡崎さん「とにかく軽い。着心地がものすごくよくて、デザイン性がある」 ――若者たちの目にubusunaはどう映ったのでしょうか? 「熊本のブランドがあるとは知らなかった」 「ショップでじっくり見てみたい」 「スタイルがよくてかっこいい」 「素材にこだわった感じがある」 「私も真似したい」 岡崎さん「縫製ひとつ、ボタンの付け方、柄も。日本ってすごいなとやっぱり思います」 古荘さん「(コレクションで)感性を刺激されて、ファッションを好きになって、このファッション業界を盛り上げたいっていう人が出てくるのを、すごく期待しています」