“デマ情報”に“2馬力選挙”…あまりに無秩序な「選挙戦」を新聞・テレビはどう報じていくのか 注目の都議選を前に「NHKと全国紙4紙」の回答を一挙掲載

 第1回【「都議選」「参院選」を目前に控え「NHKと全国紙4紙」に尋ねた“選挙報道を変えるつもりはあるか” SNS全盛の時代に求められる大手メディアの役割とは】の続き──。デイリー新潮では東京都議選の告示に際し、NHK、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞の5社に取材を申し込み、選挙報道に関する質問の回答を依頼した。(全2回の第2回)  *** 【実際の写真】怯えるように顔が強張り…「立花孝志氏」が見せた“素の表情”  従来の選挙とは全く異なり、昨今の選挙戦はSNSや動画サイトを中心に虚偽情報が飛び交い、有権者の投票行動にも影響を与えるという憂慮すべき状況になっている。  何が正しいのか分からないという状況から「大手メディアは積極的に候補者や政党の主張にファクトチェックを行い、その結果を選挙期間中であっても報じてほしい」という有権者は増えている。 “2馬力選挙”が問題視された「NHK党」の立花孝志党首  そのためデイリー新潮は上記5社に今後の選挙報道で“改革”の必要性を感じているか取材を依頼した。各社に送付した質問は以下の通りだ。 【1】 昨年の衆院選、東京都知事選、兵庫県知事選に関する御社の報道姿勢について、どのような総括を行っておられますか。 【2】 6月13日に告示が予定されている東京都議選、今夏に控える参院選で、これまでの報道姿勢や報じ方を変更するお考えはございますか。具体的な方針があればぜひ教えて下さい。 【3】 公職選挙法に改正、改善の必要性を感じられたことはございますか。もし「ある」場合、どこを改めるべきか具体的なご指摘をお願いします。  全社から回答があり、第1回の記事では産経新聞とNHKの回答を全文掲載した。この第2回の記事では朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の回答をお伝えする。  3社から届いた回答はそのまま掲載し、カットなどの編集は行っていない。ただし、長文の回答はブロックに分けたほか、全角の英数字を半角に修正するなどデイリー新潮の表記法に改めた。 朝日新聞の回答  最初に朝日新聞広報部の回答をご紹介する。 【1】衆院選、東京都知事選、兵庫県知事選の総括は以下の回答だった。 《読者の皆さまから「公平性を重視するあまり、報道が慎重になりすぎ、必要な情報が伝わっていない」といった指摘を頂いており、社内でも選挙報道が読者の関心に応えられていなかったのではないか、という反省も出ているところです》 【2】東京都議選や夏に控える参院選で、これまでの報道姿勢や報じ方を変更するか、との質問には次の回答があった。 《社内で「選挙取材・報道に関するガイドライン」を作成し、選挙報道が基本的に自由であることを改めて確認したうえで、政党間、候補者間の公平性には配慮しつつも、これまでより積極的に報道していく方針を確認しています。また、ファクトチェックなどを通じて、誤っていたり、真偽不明だったりする発言・発信について力を入れて報じていく考えです》 【3】公職選挙法に関する回答は以下の通りだった。 《公職選挙法にさまざまな問題があることは、配信や紙面で指摘している通りです》 毎日新聞の指針4項目  毎日新聞の回答は、同紙が5月30日の朝刊に掲載し、電子版でも配信した「選挙報道、事実に基づき積極的に 毎日新聞、指針4項目作成」との社告が前提となっている。まず記事から重要な部分を引用する。 《公職選挙法は選挙運動に関する規制を定めている一方、報道に関しては148条で「報道及び評論を掲載する自由を妨げるものではない」としています。もちろん、選挙の公正さを害するような表現の自由の乱用は認めていませんが、日本新聞協会は統一見解(1966年)で「通常の報道、評論をやっている限り、選挙法上は無制限に近い自由が認められている」と表明しています》 《ただ、最近の選挙報道について、公正さを重視するあまり、読者が求める踏み込んだ情報を提供できていないとの声が本社にも寄せられていました。東京都議選、参院選を前に事実に基づく選挙報道を積極的に行う立場を改めて確認するとともに、読者の判断に資する情報を的確に届ける決意を新たにしました》  以上の問題意識から毎日新聞が発表した4項目は以下の通りだ。 《事実に基づく自由な報道は民主社会の基盤です。選挙期間中も候補者の言動を含め、有権者の判断に資する情報は積極的に報道します》 《インターネット上で虚偽や真偽不明の情報が拡散されている状況では、取材・確認を尽くした上で、虚偽であることや根拠が不明であることを報じます》 《個人のプライバシーに関しては、通常の記事と同様に公益性などの観点から扱いを慎重に判断します》 《取材の過程や報道内容に関し、記者が誹謗(ひぼう)中傷を受けた場合、本社として法的措置も含めて毅然(きぜん)とした対応を行い、記者を守ります》  以上を踏まえていただき、毎日新聞社社長室広報ユニットの回答をご覧いただきたい。 【1】衆院選、東京都知事選、兵庫県知事選に関する総括については以下の回答だった。 《ご指摘の選挙に関する報道について、読者の皆様からさまざまな声が寄せられていました。それを受け止めて編集局内で新たな指針について議論した結果を、5月30日付の朝刊紙面で社告という形でお示ししました》 【2】都議選や衆院選の報道姿勢を変えるかとの質問には以下の回答だった。 《都議選、参院選については、指針で示したように有権者の判断に資する情報を積極的に報道してまいります》 【3】公職選挙法の問題点などに関する回答は以下の通りだった。 《特にお答えすることはありません》 読売新聞の回答1  5社のうち最も長文の回答は読売新聞だった。読売新聞グループ本社広報部からの回答を全文、ご紹介する。 《先の衆院選や兵庫県知事選では、SNSを通じて、真偽不明の情報や虚偽の情報が拡散し、選挙結果を左右したとされています。さらに、公職選挙法の趣旨をないがしろにするような「2馬力選挙」、東京都知事選では、選挙ポスター掲示板を事実上「売買」する行為なども問題化しました》 《当社は、こうした状況を民主主義の危機ととらえ、兵庫県知事選直後の2024年11月24日付朝刊から連載「SNSと選挙」をスタートさせました》 《この連載では、正確性が軽視され、広告収入につながる閲覧数が偏重される「SNS選挙」の実態や、それを支える担い手たちの存在、社会の分断が深刻化する諸外国の事情、公職選挙法など法体系の不備のほか、そうした混乱に有効策を打ち出せない政治の状況について、現在まで計5回のシリーズで浮き彫りにしてきました》 《さらに当社では、日本ファクトチェックセンターや、日本新聞協会に加盟する一部の有志社と協力して、選挙に影響を与えかねない真偽不明の情報に対するファクトチェックを今月22日に投開票される東京都議選から実施し、その結果について根拠を示して公表していくことにしています》 読売新聞の回答2 《報道の使命は、事実に基づく報道により、民主主義の発展に寄与することにあります。今後も当社は、有権者の適正な判断や投票行動に資する、公正な選挙に必要と考える情報について積極的に報じていく方針です》 【3】公職選挙法の改正が必要だと感じたことはあるかとの質問には「ある」と回答し、具体的には以下の説明があった。 《インターネットを利用した選挙運動が定着する一方、ネット選挙が解禁された2013年当時には想定されていなかった様々な事態が生じていることを踏まえれば、SNSや「2馬力選挙」について、実効性のある規制を検討する必要があると考えます》 《例えば、インターネットの適正な利用を定めた公職選挙法142条の7にある「表現の自由の濫用」の例示に「虚偽情報の発信」を加えることは検討に値すると考えます》  まずは5社が都議選でどのような報道を行うのか、こちらも注目を集めることになりそうだ。  第1回【「都議選」「参院選」を目前に控え「NHKと全国紙4紙」に尋ねた“選挙報道を変えるつもりはあるか” SNS全盛の時代に求められる大手メディアの役割とは】では、産経新聞とNHKの回答をお伝えしている。 デイリー新潮編集部

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