「都議選」「参院選」を目前に控え「NHKと全国紙4紙」に尋ねた“選挙報道を変えるつもりはあるか” SNS全盛の時代に求められる大手メディアの役割とは

 これほど“選挙報道”そのものに関心が集まっているのは、日本の戦後政治史を振り返っても、かなり珍しいことかもしれない。東京都議選は6月13日に告示され、参議院選挙は一部メディアが7月3日公示の可能性があると報道している。そうした中、有権者は選挙で舌戦を繰り広げる立候補者だけでなく、それを報じる大手メディアにも注目しているのだ。(全2回の第1回)  *** 【写真を見る】“お土産”を「俺がもらっていく」と堂々お持ち帰り 高級ガニを手に満面の笑みを見せる“パワハラ疑惑”の斎藤知事  首長選や地方議会選などは告示日に立候補の届出が行われ、立候補者は選挙運動をスタートさせる。衆院選と参院選の国政選挙も流れは同じだが、こちらは告示ではなく天皇の国事行為である「公示」が使われる。 SNSや動画サイトを原動力に“奇跡の再選”を果たした斎藤元彦・兵庫県知事  従来の大手メディアは公示、あるいは告示から投開票までの選挙期間中、報道の政治的公正性や、立候補者の持つ言論の自由を最大限に尊重することを重視し、抑制的な報道を行うことが一般的だった。  たとえ候補者に看過できないようなスキャンダルが発覚しても、選挙結果に影響を与えないよう投票終了を待ってから報じていた感がある。奇矯な選挙パフォーマンスや非常識な主張を行う候補については“泡沫候補”と捉えてスルーしてきた面も否めない──。  ところが、こうした従来型の選挙報道では有権者の求める情報が伝わらないケースが増えてきた。最大の理由はSNSの発達だ。  2024年に投開票が行われた衆院選、東京都知事選、兵庫県知事選などでは、選挙期間中にSNSや動画サイトで様々な主張や指摘が飛び交い、有権者の投票行動に大きな影響を与えてしまった。  正確な情報が流布したのならまだしも、ネット上で拡散した情報の中には、選挙を取材する記者にとって明らかに虚偽だと分かるものや、きちんとした検証が必要な内容も含まれていた。 書類送検された立花孝志党首  このため有権者から「大手メディアこそ選挙期間中も、候補者や支援者の主張に対してファクトチェックを行い、事実に反する点があれば報道で間違いを指摘してほしい」と望む声が強くなっているのも事実だ。  ここで実名を出そう。政治団体「NHK党」の立花孝志党首だ。立花氏は兵庫県知事選で自身の当選ではなく、斎藤元彦知事の再選を目標とする「2馬力」の選挙運動を繰り広げたことで大きな注目を集めた。  立花氏は選挙期間中、あたかも選挙における“主張”であるかのように、特定の県議会議員などに誹謗中傷の可能性が高い言動で攻撃。その様子は動画サイトやSNSで拡散し、有権者の投票行動に大きな影響を与えたと指摘されている。  6月4日に兵庫県警は、兵庫県知事選における選挙期間中の言動を巡り、県議への名誉棄損と脅迫、業務妨害の疑いで立花氏を神戸地検に書類送検した。  選挙当時から立花氏の主張には虚偽が含まれ、名誉毀損の可能性が高いことを認識する記者は少なくなかったはずだ。選挙戦における言論の自由を重視したと理解できるとはいえ、現在の世論はより踏み込んだ選挙報道をメディアに求めているのではないだろうか。 大手メディア5社に取材を依頼  デイリー新潮では、東京都議選の告示に際して、NHK、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞の5社に取材を申し込み、以下の項目について回答を依頼した。 【1】 昨年の衆院選、東京都知事選、兵庫県知事選に関する御社の報道姿勢について、どのような総括を行っておられますか。 【2】 6月13日に告示が予定されている東京都議選、今夏に控える参院選で、これまでの報道姿勢や報じ方を変更するお考えはございますか。具体的な方針があればぜひ教えて下さい。 【3】 公職選挙法に改正、改善の必要性を感じられたことはございますか。もし「ある」場合、どこを改めるべきか具体的なご指摘をお願いします。  以下に各社の回答を掲載する。各社から届いた回答をそのまま転載しており、カットなど編集は加えていない。また長文の回答はブロックに分けて引用したほか、全角の英数字を半角に修正するなどデイリー新潮の表記法に改めた。  まずは産経新聞広報部の回答を全文掲載する。 《昨今の選挙における各候補者の選挙運動の実情や有権者の関心が、従来とは大きく様変わりしている中で、当社の選挙報道がその変化に十分対応できなくなってきている問題意識があります。このため、今後の選挙報道の在り方について当社内で見直しを進めているところです。その内容について、近く紙面で公表する予定ですので、今回のご質問への回答は控えさせていただきます》 NHKの回答  次にNHK広報局の回答を全文掲載する。 《選挙期間中は、放送法や公職選挙法の規定に基づき、正確かつ公平・公正な情報を提供する必要があるのは当然ですが、一定の制約がある中でも、視聴者・国民が「本当に知りたい」と思うことに、正面から応えていく必要があると考えています》 《有権者の判断の拠り所となる情報を提供するため、NHKでは、すでに一部の地方選挙で、各候補者の演説の動画配信や内容の分析、争点をめぐる各候補者の主張を比較するなど、新たな取り組みを進めています》 《メディアを取り巻く環境が大きく変化する中、選挙報道においても国民の知る権利に応え、放送でもインターネットでも「情報空間の参照点」となる情報を提供することは、これまで以上に重要になっています》 《不偏不党、公平・公正さを守りながら何ができるのか、公共放送として果たすべき選挙報道のあり方について、引き続き検討を進めていきます》 《なお公職選挙法のあり方については、まずは国会において議論されるべきものと考えています》  第2回【“デマ情報”に“2馬力選挙”…あまりに無秩序な「選挙戦」を新聞・テレビはどう報じていくのか 注目の都議選を前に「NHKと全国紙4紙」の回答を一挙掲載】では、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の回答をお伝えする。 デイリー新潮編集部

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