痛み耐性強すぎヒーロー全9名、リミックス解説 ─ ジョン・ウィックにウルヴァリン、無痛の新人『Mr.ノボカイン』参戦

銃弾を受けようが、ボコボコにされようが、爆発に巻き込まれようが、それでも立ち上がるのが、映画のヒーローってやつだ。根性で痛みに打ち勝つタイプもいれば、そもそも不死身なチート系、あるいは痛覚を持たない無感覚マシンまで、さまざまな高耐久キャラが存在する。 そんな中、2025年に現れたのが“痛みを感じない”という特異体質を持つ一般人、6月20日公開の映画『Mr.ノボカイン』の主人公ネイサン・カインだ。何をされても痛くないけど、戦闘スキルはゼロ。誘拐されたガールフレンドを救うために、無痛の身体だけを武器に戦うのだが……? この記事ではネイサンの登場を祝し、古今東西のアクション作品から「痛み耐性が強すぎる映画ヒーロー」たち厳選9名をリミックス解説。ジョン・ウィックやウルヴァリン、T-800などなど、スクリーンの中で痛みと戦ってきた彼らの姿を振り返りつつ、新キャラクターのネイサン・カインの魅力に迫ろう。 ジョン・ウィック (『ジョン・ウィック』シリーズ) 『ジョン・ウィック:チャプター2』 © Summit Entertainment / 写真:ゼータイメージ 痛み耐性:★★★☆☆ 戦闘能力:★★★☆☆ ジョン・ウィックほど「痛みと共に生きている」キャラクターはいないだろう。その名を聞いてすぐに思い浮かぶのは、体のあちこちから血を流し、息を切らし、足を引きずりながら戦う姿だ。 第1作『ジョン・ウィック』(2014)では、ナイトクラブの2階からコンクリートの床へ叩き落とされても再起。ウイスキーを痛み止め代わりにして医者に縫合を依頼すると、「あまり動かないように」と釘を刺されながらも、満身創痍のまま死闘に舞い戻った。『チャプター2』(2017)では階段を転げ落ち、ナイフで刺され、脇腹に銃弾を受けながらも逃げ延びる。『パラベラム』(2019)では鎖骨をナイフで突かれた上、自らの指を切断して忠誠を示し、幾度となくガラスケースに叩きつけられる壮絶な肉弾戦を繰り広げた。さらに『コンセクエンス』(2023)では、高所から突き落とされ、車に何度も轢かれ、222段もの石階段を転げ落ちてもなお、彼は立ち上がり続けた。 シリーズを手がけるチャド・スタエルスキ監督は、「まず“ジョン・ウィックをどう苦しめるか”を考え、それに合わせてアクションをデザインしている」とドSクリエイティビティを語る。奇妙なことに、このシリーズはジョン・ウィックが痛みつけられるほど、映画としての満足度が高まっていくようにさえ感じられる。 ウルヴァリン (『X-MEN』シリーズ) 『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』 © 20th Century-Fox / 写真:ゼータイメージ 痛み耐性:★★★★☆ 戦闘能力:★★★★☆ ウルヴァリン/ローガンは、負傷や痛みを瞬時に癒せる男である。だが、決して「痛みを感じない男」ではない。彼の能力は、アダマンチウム骨格による耐久力と、ヒーリングファクターと呼ばれる圧倒的な治癒力。銃弾を浴びようが、刃物で切り裂かれようが、串刺しにされようが、ウルヴァリンの身体はすぐに元通りになる。しかし、痛覚そのものが無効化されているわけではない。全ての傷は、彼にとって明確に“痛い”のだ。目をひん剥き、血管を浮かせ、歯を食いしばり、野獣の唸りをあげるヒュー・ジャックマンの苦痛の演技が、それを明確に物語っている。 鋭いアダマンチウム製の爪が飛び出すたび、肉を突き破る痛みを伴う。敵の攻撃によって串刺しにされ、爆発に巻き込まれても、苦痛に顔をゆがめながら立ち上がる。不死身であるがゆえに、ウルヴァリンは終わりなき“生”の痛みからも解放されない。治るのが早い分、長年の戦いの数だけ“痛い思い”をくり返す……。これほど理不尽な形で痛みに立ち向かうヒーローは他にいないだろう。 デッドプール (『デッドプール』シリーズ) 『デッドプール』 © Twentieth Century Fox Film Corporation / 写真:ゼータイメージ 痛み耐性:★★★★☆ 戦闘能力:★★★★☆ ウルヴァリンが終わらない痛みに対峙し続ける一方、痛みすらギャグに変えてしまうのが“俺ちゃん”デッドプール。この破天荒ヒーローは、銃で撃たれようが、串刺しになろうが、手足がもげようが、身体が真っ二つになろうが、お構いなしだ。時には手首を自分で切り落として拘束を逃れたり、肩を外して腕を縄代わりに使ったりと、チート能力をフル活用したフリーダムすぎる戦法もお手のもの。一応、痛みはちゃんと感じている……らしいが、テンションの高さでほぼ帳消しだ。 とはいえ、彼がノーダメージで済ませられないのは、物理的な傷よりも、心のほう。愛するヴァネッサを失った後も戦い続けるのは、その罪悪感や孤独と向き合うため……たぶん。全身バラバラになってもすぐに復活できるけれど、ヴァネッサのいない世界だけは元通りにならない。
 痛みも哀しみもジョークに変えながら、不死身仲間の“爪野郎”にベビーナイフを刺しまくりつつ、意外な人情がちゃっかり人の心にも刺さってくる……。そんな“デップー節”が、彼の真骨頂だ。 マックス・ロカタンスキー(『マッドマックス』シリーズ) 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 © Warner Bros. / 写真:ゼータイメージ 痛み耐性:★★☆☆☆ 戦闘能力:★★☆☆☆ 痛みを感じながらも、それを語らない。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)のマックスはそんなタイプの男だ。彼が言葉にすることは少ない。代わりに、血と砂と傷にすべてを語らせる。すべてを失い、文明の崩壊した荒野を一人で彷徨う男。マックスにとって、痛みとは見せるものでも語るものでもなく、背負うものなのだ。 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』では、冒頭からマックスは捕らえられ、鎖でつながれ、輸血袋として生かされる。口枷をされ、戦車に括りつけられたまま戦闘に巻き込まれ、爆風と銃弾と砂嵐の中で無理やり生き延びる。傷口に砂が入り、骨が軋み、掌を貫かれても、彼はただ走り、殴り、撃ち、守り、痛みをそのまま引き受ける。 マックスはヒーローではない。彼を動かすのは、“かつて誰かを救えなかった”という喪失の記憶と、それを抱えたまま生きるしかないという痛みだ。痛みに慣れすぎてしまったがゆえに、それと共に生きる方法を覚えたのかもしれない。 ジョン・マクレーン(『ダイ・ハード』シリーズ) 『ダイ・ハード』 ©Twentieth Century Fox Film Corporation / 写真:ゼータイメージ 痛み耐性:★★☆☆☆ 戦闘能力:★☆☆☆☆ “不死身の男”ジョン・マクレーンにとって、“痛み”は悪友的な存在だろう。常についてまわり、縁を切ることができない。『ダイ・ハード』(1988)では、一人・丸腰・裸足という最悪のタイミングでテロリストに遭遇。銃撃に晒されながら戦い抜くと、今度は床一面にガラスの破片。裸足のまま突っ込んでいく羽目になり、あっという間に両足は血まみれに。 「イテェ……さすがのオレもそろそろヘバってきた……」血と汗にまみれ、ぼやきながらもマクレーンは死なず、痛みを引きずる。彼の場合、痛みに強いというか、しぶといのだ。打撲、爆発、転落、殴打。ジョン・マクレーンは痛みをたっぷり味わいながら、「なんでこんな目に!」と自らの不運を呪いつつ戦う。 米ヘルスケア企業※の考察によれば、ジョン・マクレーンが『ダイ・ハード』1作目の戦いで負った怪我の数々は、現実であれば「おそらく死んでいるだろう」レベルとのこと(そりゃそうだ)。「映画はマクレーンが夕陽に向かって走り去るところで終わるが、ほとんどの医療専門家は、傷の手当てのためにまず病院に急ぐことを勧めるだろう」。もちろんマクレーンは、医者の声よりも、悪友である痛みとの付き合いを優先する……いや、せざるを得ないのだ。イピカイエー! T-800(『ターミネーター』シリーズ) 『ターミネーター2』 © TriStar Pictures / 写真:ゼータイメージ 痛み耐性:★★★★★ 戦闘能力:★★★★☆ 『ターミネーター』シリーズのT-800にとって、“痛み”とは情報の一つに過ぎない。『ターミネーター』(1984)で未来から送り込まれたT-800は、銃で撃たれても、車に轢かれても、爆発に巻き込まれても、まったく動じない。眉一つ動かさず淡々と任務を遂行する姿は、まさに「痛みの概念を持たない存在」としての恐怖を体現した。 しかし、T-800が恐怖の対象からヒーローへと転じた『ターミネーター2』(1991)では、痛みに対する“無反応”が、逆に人間との対比として描かれるようになる。片腕をもがれても、顔を潰されても、背中を貫かれても、T-800はまったく声を上げない。その無表情のまま少年ジョンを守り続ける姿は、「痛みを感じない機械なのに、なぜか人間以上に“痛みに耐えている”ように見える」という逆説的な感情を生み出していく。 T-800は、「痛みがないから強い」のではない。痛みの有無を超えて、“守るべき存在のために破壊され続ける”その姿が、痛みの意味そのものを問い直させるのだ。さて、彼が最後に親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいくとき、最も痛んだのは観客の心だったことだろう。 ジャック・スレイター(『ラスト・アクション・ヒーロー』) 『ラスト・アクション・ヒーロー』 © Columbia Pictures / 写真:ゼータイメージ 痛み耐性:★★☆☆☆ 戦闘能力:★★☆☆☆ アーノルド・シュワルツェネッガー作品からもう一本、『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993)のジャック・スレイターも、痛みの感じ方がユニークなキャラクター。映画の中の最強無敵のアクションヒーローが現実世界に飛び出すという設定の本作で、ジャックは本物の痛みを初めて知る。 主人公の少年ダニーは、魔法のチケットの力によって憧れのアクション映画『ジャック・スレイター』の中に入り込んでしまう。映画のヒーローであるジャックは痛みを感じず、高所から飛び降りたり、爆発に巻き込まれたりしてもお構いなし。致命傷を負っても、映画の世界ではあっという間に全快する。 ところが、現実ではそうはいかない。映画を飛び出して本物のニューヨークにやって来たジャックは窓ガラスを拳で叩き割ると「痛いぞ……」と驚き、車で正面衝突すると「チクショー、痛かった!」と叫ぶ。これまで“無痛”で通ってきた彼は、実銃で撃たれると初めて経験する”激痛”に悶え苦しむ。 アクション映画の荒唐無稽なダメージ描写をセルフパロディした本作では、フィクションの中のヒーローが”痛み”を通じて現実を知っていく過程が、ユーモラスに描かれていく。ヒーローは強くても、現実には痛みがある。そんな当たり前のことを、懐かしい映画愛とともに思い出させてくれるキャラクターだ。 ハッチ・マンセル(『Mr.ノーバディ』) 『Mr.ノーバディ』 © Universal Pictures / 写真:ゼータイメージ 痛み耐性:★★☆☆☆ 戦闘能力:★★☆☆☆ ナメられおじさん系ファイター最強エントリーの一人である『Mr.ノーバディ』(2021)ハッチ・マンセルは、気合と根性で“痛み”を飼い慣らす型破りなキャラクター。現在では一線を退き、ごく一般の中年男性としてフツーの生活を送るハッチは、かつて政府機関で極秘の殺人仕事に従事した、痛みを知り尽くしたプロフェッショナルだ。 長年忘れていたはずだが、ハッチにとって痛みとは人生の一部だ。不条理な出来事に直面したハッチは、やりきれない思いを込めた素手の拳でレンガ壁を殴りまくり、行き場を失った怒りを痛みに変えてやり過ごす。 そのダメージは、ハッチの奥底に眠る殺人戦闘術を思い出させるトリガーとなった。直後にバス車内でチンピラ軍団に遭遇すると、苛立ったハッチは果敢に戦いを挑む。殴られ、頭をぶつけ、ナイフで切りつけられるたびに戦闘力を覚醒。全身に激痛走る満身創痍の身体を振り乱し、チンピラどもを血祭りにあげた。痛めば痛むほど、ハッチ・マンセルは恐るべきガッツを覚醒させるのだ。 【NEW!】ネイサン・カイン(『Mr.ノボカイン』) ©2025 PARAMOUNT PICTURES. 痛み耐性:★★★★★ 戦闘能力:☆☆☆☆☆ タフガイやチートキャラまで、痛み耐性をもつキャラクターにはさまざまなタイプがあるが、新映画『Mr.ノボカイン』の主人公ネイサン・カインは全く新しい属性を持つ男だ。生まれつき体の痛みを全く感じないという特性を持ちながら、フツーの銀行員として真面目に働く男。これまで紹介してきたヒーローたちと違って、戦闘スキルはマジでゼロの一般人。本物の拳銃を初めて手にしてはビビりまくり、うっかり悪党を殺してしまうと怖くなって吐き気を催す。 そんなネイサン、職場恋愛のお相手シェリーが銀行強盗に誘拐されてしまったことで、“痛みゼロ”の身体を駆使して救出に挑むことに。ただし、彼は戦い方なんて知らないので、厨房にあったアツアツのフライパンを素手で掴んで振り回したり、床に散らばったガラス片を拳に突き刺してウルヴァリン戦法を試したりと、とにかくその場にある「一番痛そう」なアイテムを手当たり次第に選んで咄嗟に応戦する。 ©2025 PARAMOUNT PICTURES. 対する悪党どもは、そんなネイサンの“無痛”体質を知らない。彼をとっ捕まえては「どうだ、痛いだろう?」と強烈な拷問を仕掛けるのだが、ネイサンは何も感じないので、「あー!すっごく痛い!」と、適当に痛いフリをしてやり過ごす。 ネイサンは“無痛”の男だが、決して“無敵”というわけではない。恐ろしい敵を前に怖気付くこともあれば、流血すれば身体は弱るし、吹き飛ばされれば気絶してしまう。前代未聞のエクストリーム・ノーペイン・アクションは映画が進むごとにどんどん過激化し、ネイサンは散々な目に遭いながらも“無痛”の身体ひとつで必死に戦っていく。 ©2025 PARAMOUNT PICTURES. おそらく彼が本作で受けたダメージの総量は、ジョン・ウィックやマックスでも耐えられないレベルだろう。痛々しすぎて思わず目を覆いたくなる……でもオモシロすぎて見ずにはいられない、“痛快”アクションヒーロー(?)の新登場だ。 痛みをこらえて戦う者。痛みをギャグにする者。痛みを抱えて生きる者。そして、痛みを一切感じない者。ヒーローの“痛み耐性”にもいろいろあるけれど、ここにきてまさかの「完全ノーダメージ系」がエントリー。全アクション映画ファンの常識をひっくり返す無痛バトル、果たしてあなたは最後まで耐えられる? ©2025 PARAMOUNT PICTURES. 痛みを感じない男のアクション・コメディ映画『Mr.ノボカイン』は2025年6月20日(ムツウ=無痛の日)、公開。ちょっぴり過激なのでR15+指定! Supported by 東和ピクチャーズ ※Source:

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