《あまりに悪質》障害者向けマッチングアプリを悪用した組織的ぼったくりの手口、女性がターゲットをお店に誘い出し…高齢者を狙い撃ちする風俗業者も

 盗人にも仁義あり、という言葉があるように、犯罪者でもある程度の規範や倫理観が存在すると言われてきたし、思われてきた。ところが、最近の犯罪や悪質ビジネスの界隈では、人として当たり前に感じるだろう躊躇がいっさい、見られないものが増殖している。ライターの宮添優氏が、障害者向けマッチングアプリやSNSなどを介した高齢者の被害についてレポートする。 【写真】ラブホテルまで義父を引き取りに来てほしいと警察から連絡が  * * * 「被害届を受理した警視庁管内の複数の警察署が、かなり力を入れて捜査をしていました。あまりにも悪質で前代未聞だと」  警視庁は15日、障害者向けのマッチングアプリで知り合った被害者を誘い、飲食店で高額請求した男女3人を東京都ぼったくり防止条例違反容疑で逮捕したと発表した。さらに28日、新たに3人の男女を同容疑などで警視庁は逮捕した。これらは同じグループによる組織的な犯行だとみられているが、長年にわたり事件取材を続けてきた大手紙警視庁担当デスクですら「あまりに悪質」と指摘するひどい事件だ。  このマッチングアプリ自体は、出会いの機会が限られる障害を持つ人々向けのまっとうなサービスであったが、逮捕された男女らは、この仕組みを悪用。一人でスムーズに移動することが難しい人などを狙い、誘い出しては繁華街のバーへ連れ混み、ぼったくり請求を繰り返していたという。彼らの手口は狡猾だ。マッチング担当の女性がターゲットを誘い店へ行くと、そこは犯行グループの店。勝手に大量の酒を注文し、高額で違法な請求を突きつけ、手持ちの現金が足りない場合は、店の従業員が付き添ってコンビニなどのATMで金を下ろさせてまで支払わせていた。  同様の被害が都内で相次いでいたことで、警察も大規模逮捕劇に踏み切ったというわけだが、犯人たちは障害を持つ人々を狙った理由について、警視庁担当デスクが続ける。 「もし認知や判断に影響がでる障害を持っていて自身で動く事が難しい人であれば、被害に遭っても訴えないだろう、もしくは、被害に遭ったことすら気がつかないんじゃないか、そんな思惑があったというような供述が出ているそうです」(警視庁担当デスク) 警察は民事に介入できないと取り合ってくれない  あまりに悪質ではあるが、SNS上では、すでにずいぶん前から、障害者を狙った悪意のある投稿、やりとりが相次いでいる。 「少し認知症の気配のある義父が、いつも家を一人で黙って飛び出しては行方不明になるんです。あまりに恥ずかしい話なんですが、毎回、風俗店とかラブホテルとか、そういった場所で発見され、警察から連絡をいただくんですよ。かといって、施設に入れるほど認知がすすんでいるわけでもないし、まさか部屋に鍵をかけて閉じ込めておくわけにもいかない」  深刻な口調で筆者にこう訴えるのは、福岡県在住の会社員女性(50代)。2人の子供と夫、夫の父親の5人暮らしで、この1〜2年ほどの間に、義父に徘徊癖や、何度も同じ事を言うなどの認知症の傾向が現れ始めたという。当初、それは「しょうがないこと」と温かい目で見守っていたが、ある日、義父宛にクレジットカード会社から覚えがない請求書が届いたことで、事態の深刻さを受け止めざるを得なかった。店側に “拒否してほしい”とお願いしているのですが、向こう側も”商売だ”の一点張り。警察も民事に介入できないと真面目に取り合ってくれません。恥ずかしいし、バカみたいな話だと笑われるかもしれませんが、すでに数百万円の”被害”があり、家族にとっては本当に深刻な状況なんです」(会社員の女性)  義父は、医療機関で「認知症」と診断されてはいない。また、日常的な会話も問題なく出来るため、家族が義父の行動を制限することが事実上難しい状態なのだという。こうした「境界」状態にある人々こそが、今SNSで狙われやすいターゲットにされている。 経営者美女から”投資”に誘われた高齢の父 「とあるSNSをやっていると、知人のお父さんらしき人が自分のアカウントで”100万円をもらった”と話す、自撮りの動画をアップしていたんです。お父さんはもう70代だし、なんか様子がおかしいと思って友達に連絡したんです」  都内在住の公務員男性(30代)がSNSを眺めていて偶然見つけたのは、友人の父親が「100万円当たった」とカメラに向かって話す不自然すぎる映像だった。SNSでよく見かける、こんなにお金が儲かりましたと現金を見せびらかす動画によく似たものだが、そういった動画の主はたいてい、自称インフルエンサーや自称マネー講師などに指示されて投稿しており、実際には損をしていることが多い。ほとんど詐欺まがいの勧誘に騙された人たちが手を出しているパターンがほとんどだ。スマホ操作も覚束なかった高齢者が、なぜ、そんな映像をアップしたのか。その理由はすぐに明らかになった。友人の父親はすでに何人もの、SNS上の架空女性に騙され、そのときすでに、数百万円を失っていたというのだ。 「友人のお父さんは、スマホを買ってSNSを始めた直後から、女性らしきユーザーから受け取ったDM全てに返信を返していたそうです。やりとりの中で、海外在住の会社経営者だと称する美女から”投資”に誘われ、その支払いとしてクレカ決済やプリペイドカード購入をすすめられ、すでに300万円以上を入金してしまっていました。僕の指摘で初めてわかったと友達からは感謝されましたが、すっきりしないものを見つけてしまったという気持ちは今も続いています」(公務員男性)  被害はこれだけで終わらなかった。様々な落ち度を指摘された知人の父親は、やりとりしていた女性経営者が実在しないこと、そもそも何もかもが「詐欺」であったと知らされて以降、体調を崩し、人前に出てくることが少なくなったという。入れ込んでいた女性の存在が架空だっただけでは、ここまで落ち込みは継続しなかっただろう。相手にあわせて居住地や学齢、勤務先などの詳細な偽のプロフィールを公開していたことが、彼の不安をかき立て続けたのだ。自身の詳細な経歴、自宅の特定がされかねない、自宅前で撮影された写真や動画までSNSに記載していたため、別の特殊詐欺事件のターゲットになるのではないかと、彼の家族も不安に苛まれている。  SNSであまりに都合よく接触してくるユーザーは詐欺師だらけ、というのは、一般的なネットユーザーなら当たり前の感覚だ。だが、ネットに不慣れな高齢者や世間知らずな子供、認知機能が限定的だったりする人々にとっては、こうした当たり前の感覚に従ってトラブル回避するのは困難である。社会的に弱い立場の人々を堂々と狙い撃ちにするようなことは、犯罪や悪質行為を繰り返す人たちでも躊躇するものだと言われてきたし、本当はターゲットにしていても露呈しないよう取り繕ったものだ。ところが、冒頭で挙げた障害者向けマッチングアプリを悪用した犯罪など、身も蓋もない悪事が横行している。もはや、この国の社会は、底が抜けてしまったのだろうか。

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