不動産コンサルタントで、著書に『中古マンション これからの買い方・売り方』がある後藤一仁氏によれば、マンションを買うときは「自分が住みたいかどうか」だけでなく、「高く売れるか？」「高く貸せるか？」という視点が欠かせないという。後藤氏にくわしく解説してもらった。 「売れる」「貸せる」という視点を持つ 以前の記事〈マンション購入で絶対失敗したくない人が知っておきたい「物件の3つの価値」【不動産コンサルタントが解説】〉でお伝えしたようにマンションなどの不動産には「3つの価値」が存在します。 自分自身が「住む価値」、好条件で人に「売れる価値」、そして同じく好条件で人に「貸せる価値」です。 そして、「資産価値の高い物件」とは、「多くの人が『ほしい』と思う」物件、「買いたい」「借りたい」と思う人が多いために、「高く売れる」「高く貸せる」物件のことです。換金性（売却しやすい・容易にお金に換えられる）と収益性（貸すとなった場合に借り手が決まりやすく貸しやすい）が高い物件のことを指します。 それぞれの価値にどのくらい重きを置くかは、状況や立場によって異なりますし、時間の経過などとともに変わりますので、今の自分にあまり関係がない価値には興味がない人も多いかもしれません。 今は興味がなくても、この「3つの価値」を意識して不動産を購入するようにすると「失敗する可能性」は著しく低くなります。 不動産は「住む」という視点だけではなく、「貸せる」「売れる」という視点を持つことが大切なのです。 売るだけでなく「貸す」ことも考える 最近は、購入の際に自分が「住む」ことだけではなく、将来「売る」かもしれないと考えて物件を検討する方が増えてきたと感じます。しかし、「売る」ことは考えていても「貸す」ことはまったく考えていない人は依然として多く、そのために失敗する方も少なくありません。 人生は予期できるできないにかかわらず、いろいろなことが起こります。 たとえば、住みたい街があって、その街に憧れて、その街の物件を何年もかかって探し、ようやく購入できたとします。数年間過ごしていたところ、突然の転勤や介護などの話が出てくることは割と誰にでも起こり得ます。そのとき「売ってしまうか、賃貸に出すか？」の判断に迫られることも少なくありません。 その際にポイントになるのが、この、「売れる（ただ『売る』ではなく『売れる』こと）」「貸せる（『貸す』ではなく『貸せる』こと）」です。この点をしっかり理解して購入していないと損をすることがあります。 落とし穴になりがちなのが、「売るのは高く売れるが、貸すには賃料が希望より安くなってしまう」エリアのケースです。その場合、「売れるが、貸すと損になってしまう」ことが起こり得ます。 やっと手に入れた物件でも断腸の思いで手放す（売る）ことを選択する人もいますが、どうしてもその物件を手放すのが嫌で、損を承知で賃貸に出す人もいます。 しかし、損が些少な額ならまだしも、住宅ローンの返済額、管理費・修繕積立金、固定資産税などの合計額より賃料が下回ってしまうと損がさらに大きくなります。それを避けるために賃料を高く設定すると、空室期間が長くなってしまって、その間の家賃収入を得られません。 また、貸したはいいものの設備故障などで予想外の費用がかかったりすると、覚悟していたより持ち出しがずっと多くなってしまい、大幅に損することになります。 資産価値が下がりにくいマンションとは 自分が住むことだけではなく、「売る」ときのことも考えておくのはもちろん、この「貸す」ときのことも忘れずに想定しておくことは、人生で何か起こったときに焦らずしっかり対応するためにとても有効な事前の備えです。 バブル崩壊やリーマンショックなど、経済変動から受ける影響は賃料にもおよびますが、その大きさは価格が受けるものほどではなく、やはり「賃料が高いエリアは手堅い」といえるでしょう。 「資産価値が下がらないマンション」といわれると、「都心にある、人気駅の駅前や駅近に建つ大規模タワーマンション」をイメージする人も多いでしょう。もちろん、そのようなマンションには価格が下がりにくい傾向がありますが、そのようなマンションではなくても、資産価値が下がりにくいマンションはあります。 価格が下がりにくいマンションとは、「価格を押し上げる（または維持される）付加価値や希少価値などを持つ、競争優位性のあるマンション」のことを指します。わかりやすくいえば、売るときに多くの人が「購入したい」と思うマンションのことです。 つづく記事〈駅から「徒歩7分」以内、人口が増えているエリア、広すぎない専有面積…「資産価値が下がりにくいマンション」を見抜くポイント【不動産コンサルタントが解説】〉では、マンションの資産価値をどのように見極めればいいか、具体的なポイントを解説していきます。 【つづきを読む】駅から「徒歩7分」以内、人口が増えているエリア、広すぎない専有面積…「資産価値が下がりにくいマンション」を見抜くポイント【不動産コンサルタントが解説】
