「俳優ってそういうもの」 デビュー25周年の長澤まさみが語る境地と芝居へのブレない情熱

 2000年の映画デビューから、25周年を迎えた俳優・長澤まさみ。先日も、名誉ある演劇賞の菊田一男演劇賞を受賞するなど、映像、舞台を問わずに、その実力は折り紙付きだ。主演を務める新作ミステリー映画『ドールハウス』では、5歳で亡くなった娘とよく似た少女人形(=アヤ人形)を手に入れたことから、やがて恐怖に見舞われていく主人公・佳恵を演じている。現場では、「すごく頼りになる共演者だった」というアヤ人形が、子役たちに与えたように思えたという“俳優”としての意外な影響も告白。そしてキャリアを重ねてきた長澤が、改めて俳優たちの姿に「すごいなあ。いいなあ、かっこいいなあ」とワクワクしていると語った。 【写真】長澤まさみ、ピンクのタイトなドレス姿が衝撃の美しさ!(全身ショット) ■矢口史靖監督絶賛の“恐怖顔” 「怖い映画って、こうやって撮っていくんだ」 ——矢口史靖監督(『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』)とは『WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜』(2014)でも組みましたが、今回、この“怖い”ミステリーの脚本が届いてすぐに出演を決められたとか。 長澤:矢口監督とは、またどこかでご一緒できたらうれしいなと思っていたのと、たぶん多くの人が思われるのと同じように“矢口監督が怖い作品を?”という意外性に惹かれて、脚本を読みました。すると先の読めない『ドールハウス』の世界観に、どっぷり引き込まれてしまって。怖いと分かっていても、その扉を開きたくなるような物語の奥深さを感じましたし、怖い作品が苦手な人でも、楽しめるようなエンタメ感のある作品になるんじゃないかと思いました。 ——物語が先の読めない方へどんどん展開していくという点では、矢口監督の初期作品に通じるかもしれません。 長澤:初期からの矢口監督のファンの方には、より堪能できるのかもしれませんね。いわゆる怖い作品は、監督も映画本編では初というお話でしたが、監督自身、そうしたものがお好きだそうなので、そういった怖いもの全てを詰め込んだ作品なんだろうと感じました。 ——矢口監督とおふたりで登壇した、ポルト国際映画祭グランプリ受賞の凱旋報告会で、監督が長澤さんの“恐怖顔”を絶賛していました。怖いもの好きとしても、非常によかったです。 長澤:現場では“恐怖顔”とは特に言われてないんですけどね(笑)。あそこは、やはりつかみのシーンなので、脚本を読んでいる段階からとても大切だと感じていました。どう描くのだろうと思っていたんですけど、撮影の都合上、横からのカットだけ先に撮って、正面からの叫び顔は別日だったんです。“怖い映画って、こうやって撮っていくんだ”と意外でしたけど、すごく集中しやすい環境でしたし、別日に撮っても大丈夫だと私に信頼を置いていただいているのだと捉えて挑みました。 ■人形の“アヤちゃん”が子役たちに与えた影響とは ——本作では人形の“アヤちゃん”も大事な共演者ですね。 長澤:アヤちゃんは、本当に表情が豊かになるように作られているんです。見る角度によって笑っているように見えたり、怒っているように見えたり、ちょっと悲しそうに見えたり。左右対称じゃないし、影が落ちるように作られているので、ほんと“お芝居”してくれるんです。共演者としてすごく頼りになりました。 ——本編ではないがしろにされるシーンもありますが……。 長澤:そうなんですよ! あれもすごくかわいそうでした。あと、実はアヤちゃんを中心に、子どもたちの中で俳優としての結束力が生まれている感じがあったんです。 ——アヤちゃんの影響で子役のみなさんに“結束力”が? 長澤:今回、(池村)碧彩さんや(本田)都々花さんも、じっとしていなきゃいけなかったり、結構大変なこともある現場でした。だけど、俳優ってそういうもの。それでも“大丈夫?”と聞いたら、ふたりとも“できます。もっとやりたいです”と言ってしっかりやってくれるんです。それが、アヤちゃんが頑張っている姿がいい影響を与えているのかなと感じたんですよね。人じゃなくても芝居が作られていく力というのがあるんだなと、面白かったです。それに本当に想像力やその場の感覚をすごく試される現場だったなと思います。 ■俳優デビュー25周年! 「芝居への気持ちが揺れたり、苦しさを感じることはない」 ——“俳優ってそういうもの”という言葉が出ました。長澤さんからは、お芝居に向ける揺るぎなさがすごく伝わってきます。しかし時には気持ちが揺らいだことなどはなかったのでしょうか。 長澤:私は今年でデビュー25周年になります。今回でいうと、碧彩さんや風吹ジュンさんもそうですが、この仕事って、違う世代が集まって一緒にひとつの作品を作るんです。私が『クロスファイア』(2000)という作品でこの世界に入ったときから同じ。世代を超えて、同志としてそこにいる。そういった環境にいたので、芝居への気持ちが揺れるとか、何か苦しさを感じるといったことはないんですよね。 ——年齢を重ねることで生まれるプレッシャーはないですか。 長澤:同じように、年齢を重ねることで、苦しさやプレッシャーを感じることも、正直ないんです。もちろん芝居に対して自分が求めるものはその都度、変わってきます。目標や、今の自分や将来の自分と向き合うためには、必要な悩みもあります。そういった意味で苦しさを感じることはありますが、そこにフォーカスして生きてはいませんし、とにかく私は芝居に取り組むための姿勢に興味、関心がある。そして、そこを深めていきたいとずっと思っているんです。 ——いまお話にあった“25周年”ということも、今年は改めて言われることが多いと思います。第50回菊田一夫演劇賞の授賞式があったばかりですが、その場には、特別賞受賞の大先輩、伊東四朗さん(87)も。 長澤:ご挨拶されていましたが、伊東四朗さんは芸歴66年ですよ。とんでもないことだなと。“すごいな、先輩”という思いがより強くなりました。受賞式には様々な世代の俳優さんもいらっしゃいました。そういう日なので、みなさまのスピーチを聞くことができて。それぞれの思いがあって、それぞれに芝居と向き合っているのを見ると、改めてとてもワクワクしますし、“俳優ってすごいなあ。いいなあ、かっこいいなあ”と純粋にうれしくなりました。 ——ご自身の受賞の喜びはもちろん、そうした受賞式への参加は、折りに触れてみなさんの芝居への思いを感じられる場になりますね。 長澤:そうですね。それに“俳優ってすごいなあ”といううれしい思いは、共演者からも常に感じますし、観客のみなさんと同じように、私も俳優さんを見て感じています。いい舞台や映画、演技を見ると、私もみなさんと同じように感動するし、同じように心が動いて、自分も新しいアクションを踏み出したいなという思いになったりします。私もみなさんと同じように芝居を楽しんでいるんです。そうした感性を、これからもちゃんと自分で磨いていけたらと、いつも思っています。 (取材・文:望月ふみ 写真:上野留加)  映画『ドールハウス』は公開中。

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