「お茶で血圧が下がるなら薬を飲む前に試してみようか」「健康食品でダイエットできるならそれがいちばん楽でしょう」「食生活が不規則だからビタミンやミネラルで補うしかない」などと、健康食品はすっかりわれわれの生活に浸透している。 しかし巷では機能性や安全性について何の保証もない健康食品が多く販売され、健康被害の大半はこれらの製品によって発生している。そんな状況において、どんな製品を購入するかを見極める力は不可欠である。 粗悪な健康食品の被害に遭わないための基礎知識をさまざまな事例を通してわかりやすく解説した著書『健康食品で死んではいけない』から抜粋・再編集して紹介する。 薬物性肝障害はどんな健康食品で起こるのか 国民生活センターは、健康食品による薬物性肝障害の発症に対して次のように注意を呼びかけている。 「薬の副作用の一つに、薬の服用により肝臓の機能が障害される薬物性肝障害があり、健康食品等でも発症することがあります。発症頻度はまれですが、重症化する場合もあります。そこで、ドクターメール箱に寄せられた健康食品による薬物性肝障害の情報を取りまとめ、消費者に注意喚起することとしました」 薬物性の肝障害に関してはどんな医薬品によって発症しやすいか、という研究報告もいくつかある。たとえば比較的身近な風邪薬、頭痛薬、水虫薬などでも発症することが明らかとなっている。一方、どんな健康食品で起こりやすいかは医薬品の場合ほど明らかになっていない。ただ国民生活センターが公表した、医師から送られてきた症例は、次のように具体的に書かれている。 【症例1】通販で購入した特定保健用食品の粉末青汁を1回飲用し重症 通販で購入した特定保健用食品の粉末青汁を脂質異常症の改善を目的に1回飲用したところ、腹部に不快感あり。13日後に寒気、15日後に頭痛。同日、検診にて肝細胞の異変を示すAST:858U/L、ALT:1090U/Lと値が高く肝障害を認めた。そのため、当院を受診し、そのまま34日間入院となった。なお、今までに肝障害の指摘を受けたことはなかった。 (受診年月:2017年1月、50歳代・女性) 大量摂取やアレルギー体質の人は特に注意 【症例2】知人に勧められたサプリメントを飲んで2〜3ヵ月で重症 倦怠感、褐色尿、皮膚の黄染を訴えて当院を受診した。血液検査で、黄疸を示すビリルビンや、肝臓や胆道の病気の変化を示す肝胆道系酵素の値の上昇が認められたため、急性肝障害と診断した。なお、他の検査結果から、ウイルス感染症や自己免疫疾患などによる肝障害の可能性は低いと考えられた。 患者は、2〜3ヵ月前頃から、知人に勧められた3種のサプリメントを使用しており、摂取を中止したところ、ビリルビンや肝胆道系酵素の値は減少した。サプリメント3種に対して血液検査(リンパ球刺激試験)を施行したところ、3種全てで陽性となり、薬物性肝障害と診断し、1ヵ月強の入院となった。 (受診年月:2015年5月、70歳代・女性) 【症例3】健康食品により血液検査で発覚したときには重症 飲酒後二日酔いがあり、翌日に尿が濃いことを自覚して近くのクリニックを受診した。同クリニックの血液検査でAST:3836U/L、ALT:2869U/Lと上昇が認められた。それまでに検診で肝機能異常を指摘されたことはなかった。 当科の検査により、アルコールの影響でよくみられる肝炎ではなく、摂取していた健康食品(摂取期間不明)が原因の薬物性肝障害と考えられた。健康食品の摂取を中止し、安静臥床で経過をみたところ、再発悪化は認められなかった。その後、外来に移行し、1ヵ月以上経過観察を行った。 (受診年月:2014年10月、40歳代・女性) これらの報告を見ると、健康障害が起きている人に共通点は特にない。ただ医薬品の場合に一般的に明らかになっていることとして、大量に服用した人やアレルギー体質の人に起こりやすい、と言われているので、健康食品を摂取する際にはこの点にも注意していただきたい。 ホルモンバランスを狂わす「ダイエット食品」の落とし穴…健康食品に潜む“甲状腺ホルモン”混入による危険性