警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、匿名・流動型犯罪グループ、通称トクリュウとヤクザの関係性について。 【写真】闇バイトを集めるトクリュウ * * * 6月3日、大阪ミナミで客引きをしていた男性を、トクリュウを集めて強迫した疑いで、特定抗争指定暴力団山口組傘下の一心会会長、飯塚恵容疑者らが、大阪府警に逮捕されたというニュースが、あるヤクザからSNS経由で送られてきた。ヤクザが絡んだ事件情報は、業界内に即座に広がる。ヤクザを取材するメディアやジャーナリストには、知り合ったヤクザ個人からそれらの情報が流れてくる場合がほとんどだ。 飯塚容疑者は昨年6月に東心斎橋で、客引きをしていた20代男性に因縁をつけ、「わしは一心会の飯塚じゃ、俺のこと知らんのか」と名乗って、ここでキャッチをするなと因縁をつけた上、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)のメンバーらを集めて、「殺したれ」「絶対に逃がしたがあかんぞ」と命じたという。情報を送ってきたヤクザは、「客引きに声かけられて、腹が立って呼びつけたってところだろうな」というが、「最初は客引きがトクリュウでそいつらをまとめて脅したってことかと思った」と話す。 実際は一心会がトクリュウの用心棒の役割を担っており、そのトクリュウのメンバーを集めて、キャッチをしていた男性を脅迫していた。元刑事は「トクリュウという名称を使うと、ヤクザとヤツラらの関係性がわかりにくくなる。昭和の時代でいうなら、拠点にする地元でシマ内のチンピラグループや暴走族の用心棒をしていたという話だろう。平成の時代を例にするなら、中国残留孤児2世を中心とした怒羅権や関東連合といった半グレグループのケツモチをヤクザがやっていたということだ。令和になって、それがトクリュウになった」という。 ヤクザがケツモチをしていたといっても、地元の不良などを中心とする暴走族の時代は、結束が固く、ヤクザも警察もある程度メンバーの把握ができたと聞く。元刑事は「怒羅権も残留孤児というつながりが土台にあったため結束が固かった。結束が固いというのは、警察にとってもヤクザにとっても組織として把握がしやすい。令和になってトクリュウと呼ばれるグループが出てきた。トクリュウは実態の把握が難しい。今回、組長がトクリュウを参集したということは、メンバー同士で連絡が取れる犯罪グループだったということだろう」 ケツモチをさせてもらっている 「ヤクザのケツモチも時代とともに役割が変わってきた」と元刑事はいう。「昔は不良や暴走族をやっていた者の中からヤクザの道に入るものは少なくなかった。ヤクザにとっても、不良や暴走族に自分の力を誇示できる機会は、組員をスカウトする絶好の場だった。平成ではヤクザと敵対した半グレも多い。怒羅権などの中国系を嫌っていたヤクザも多い。いつ何をやるかわからない、ヤクザのルールや義理人情が通じない彼らとは、損得勘定だけのつながりだ。日本人の半グレには、上限関係が厳しく、規制も厳しくなったヤクザを嫌い半グレになった者もいた。そういうヤツらはヤクザに憧れを持たないし、ヤクザより大金を稼いでいった。ヤクザと半グレの立場は”ケツモチをしてやっている”から”ケツモチをさせてもらっている”に逆転した」。古いヤクザにとっては、面白くなかっただろう。 そして出てきたのがトクリュウだ。闇バイトなどで人を集めて犯罪を企てるが、自分たちは安全な場に隠れている。組織の中心メンバーには元暴力団組員という者もいるようだが、その存在やつながりは、暴走族や怒羅権、関東連合の中心メンバーらがヤクザ業界などで広く知られていたようには知られていない。「有名な暴走族グループや関東連合などの半グレは、創設メンバーや幹部が誰か、警察もヤクザも把握できた。事件を起こせば噂になり、その噂が彼らのステータスを上げ、彼らなりの伝説を作った。誰がどこの出身で、どういうヤツかわかった。だがトクリュウには、そういうメンバーがほとんどいない」と元刑事は話す。 情報を送ってきたヤクザにトクリュウについて聞くと、「よくわかんないっすよ。個別に名前を言われれば聞いたことがあるとか、知っていると言えるけど、誰と誰がどこでどんな風につながっているかは知らないね」という。ヤクザでも組織によって、トクリュウと関わりがある所とない所があるらしい。だが一心会の組長の逮捕で、ヤクザがトクリュウの用心棒をする時代になったことは明白だ。どちらが上でどちらが下か、暴力団組織の下にトクリュウフループがあるのか、それとも大金を稼ぎ出すトクリュウグループの下でヤクザが動くのか。元刑事は「どちらにしろ暴力団組織にとっては、周りから実態が把握しにくいシノギが1つ増えたってことだよ」とため息をついた。