安土桃山時代に長崎で殉教したキリシタン２６人が描かれ、バチカン美術館で保管されていた肖像画「日本二十六聖人画」のうち２枚の展示が１５日、大阪市中央区のカトリック玉造教会で始まった。 　日本人画家が１９３１年に当時のローマ教皇に献上して以来、９４年ぶりの“里帰り”となった。 　展示されているのは、広島市出身でカトリック信徒の日本画家・岡山聖虚（せいきょ）（１８９５〜１９７７年）の代表作。宣教師追放令を発布した豊臣秀吉の弾圧により、１５９７年に長崎の西坂で処刑されたキリシタン２６人の姿が、１枚の絹地（縦約１９０センチ、横約７５センチ）に１人ずつ岩絵の具で描かれている。 　全２６枚のうち、経年劣化に伴う修復作業を終えた「聖フランシスコ吉」と「聖ディエゴ喜斎」の２枚がバチカン美術館から貸し出された。 　大阪での展示は、バチカン（ローマ教皇庁）が大阪・関西万博に出展するのに合わせ、国内外から訪れた人に見てもらおうと、カトリック大阪高松大司教区（大阪市）の前田万葉枢機卿らが計画した。２０２３年から本格的にバチカン美術館側と交渉を重ね、当時のフランシスコ教皇に手紙を送ったり、直談判したりしたという。 　教会には他に実物大のレプリカ２６枚も展示され、カトリックの関係者ら大勢の人々が足を運んだ。レプリカの制作や肖像画の帰郷に関わった浦上キリシタン資料館（長崎市）の岩波智代子館長（７７）は「ひげの１本１本までこだわった精緻（せいち）なタッチは、実物でしか味わえない」と語った。 　前田枢機卿は「殉教の歴史を知り、信教の自由や人間の尊厳を考えるきっかけになれば」と話している。 　展示は９月１５日まで。原則、火、木、土、日曜日の午前１０時〜正午、午後３時〜午後６時。無料。問い合わせは教区本部事務局（０６・６９４１・９７００）。