上司と部下、先輩と後輩、取引先、夫婦、親子……、いつも会話がすれ違うのは、じつは対話の様式が大きく違っているから。累計100万部超の「トリセツ」シリーズ産みの親が、満を持して書き下ろしたコミュニケーションの秘訣『対話のトリセツ ハイブリッド・コミュニケーションのすすめ』から、注目の章をご紹介！ 『女性は「ヨコ型」で男性は「タテ型」…累計100万部超シリーズ作家が分析する「思考の役割分担」という進化』より続く。 最高のパートナー たった二人で荒野を行くのなら、たった二人でけっして失敗できない幼い命を守り抜くのなら、その二人は、基本の優先側を分けて持つべきだ。 愛しい者に危険が迫ったとき、片方は、瞬時に敵に気づいて迎撃できる。もう片方は、愛しい者から一瞬も意識を離さずに守り抜く。荒野を行く長い道のりを、片方は目標を見失わずにたくましく前進していく。もう片方は、日常の混乱や停滞を防ぎつつ、不測の事態に思いもよらないアイデアを提供する。 基本の優先側が違う二人は、最高のパートナーだ。 基本の優先側に大きく性差があるのは、生殖のペアが、そのまま鉄壁のペアになるための自然の差配なのに違いない。 とはいえ、基本の優先側の男性タテ型傾向、女性ヨコ型傾向は100％じゃない。男性ばかりのチームにも、基本の優先側がヨコ型の人がいる。女性ばかりのコミュニティにも、基本の優先側がタテ型の人がいる。脳の設計者（自然界の摂理）は、人類のあらゆる場面で生存可能性を下げないように、工夫しているらしい。 ただし、発情して寄り添うとき（生殖のペアとなるとき）、男女は感性真逆の相手を選ぶ傾向が強いので、女性タテ型は男性ヨコ型に惚れる確率が高い。というわけで、男女の傾向は100％じゃないが、たいていの夫婦が鉄壁のペアであることは間違いない。 脳のとっさの使い方に、男女の傾向、すなわち性差があること——この発見は、男女平等の観点から、眉をひそめられることも多い。けれど、本当は、その真逆、このことを知ったほうが、互いに尊重し合えるはず。「相手も、自分と同じ思考回路を使っている」と思い込むと、相手の言動にイライラしたりもやもやしたり、恨んだり、愚かだと思い込むことになってしまう。 機能差はない ちなみに、基本の優先側の設定に男女の傾向差はあっても、男女の脳に機能差はない。男女の脳の神経回路を配線と見立てて精査していくと、男性にしかない回路、女性にしかない回路は存在しないのである。男性にしかできないことも、その逆もない。女性だから、遠くの一点に照準が合わない、男性だから、近くの危険に気づけない、なんてことはないでしょう？ 男女とも同じ機能を搭載して生まれてくる。当然、誰もがタテ型回路もヨコ型回路も持っていて、どちらも使える。ただ、男女は生殖の役割が違うので、とっさの身の守り方が違う。だから、基本の優先側に男女の傾向が見られる。ただ、それだけのことだ。 しかも、私たちは基本の優先側を24時間365日一生使うわけじゃない。時と場合と立場によって、優先側を切り替えている。誰もが、「赤ちゃんの添い寝をしているときはヨコ型だけど、会社で管理職の席に座ればタテ型、会議室でアイデアを出すときにはヨコ型」のように切り替えているのである。 というわけで「男女の脳は違うのか、違わないのか」という命題に対する私の答えは、「男女の脳は、違わないけど違う」である。同じ配線構造で生まれてきて、どちらもなんでもできるけど、とっさに違う守備範囲を守り合い、鉄壁のペアになれる素敵な可能性を孕んだ関係なのである。 『「違う立場の人」と噛み合わないのはなぜか…「上司と部下」「親と子」のすれ違いは“脳の使い方”の差異から起こっていた』へ続く。 【つづきを読む】「違う立場の人」と噛み合わないのはなぜか…「上司と部下」「親と子」のすれ違いは“脳の使い方”の差異から起こっていた