今年の東京都議会議員選挙と参議院選挙に向けて、選挙やSNSの情報をめぐる様々な課題や疑問について、各分野のスペシャリストに話を聞くシリーズ。 第7回のテーマは「ソーシャルメディアが選挙のカギを握るって本当？」。ソーシャルメディアに詳しい東京大学・鳥海不二夫教授に聞きました。 ■ソーシャルメディアと選挙の関係性 —SNSなど「ソーシャルメディア」は選挙にどう影響？ 東京大学・鳥海不二夫教授 ソーシャルメディア上で、やはり露出というのも重要なキーになってくると思いますので、やはりそういった戦略をしてくる候補者もたくさん今後出てくると思いますし、有権者の方もおそらくそういった方たちの情報というのは必然的に見ることになると思いますので、そういう意味では大きく関係してくるのではないのかなと思います。 去年の兵庫県知事選においては、テレビや新聞といったメディアを参考にしたという方よりも、ソーシャルメディア等、ネット上の情報を参考にしたという方が多かったという調査結果が出ていますので、かなりの方がネット上の情報を参考にして投票先を決めていたということが分かっています。 ■選挙でSNS使うメリット・デメリット —選挙でSNSを使うメリット・デメリットは？ テレビとか新聞ですと、どうしても情報量に限りがあるということになってしまいますので、いろんな情報が得られないということがありますけれども、一方でSNS、ソーシャルメディアでは多くの方がいろんな情報を流していますので、そういう意味では従来よりも多くの情報を得ることができる。 例えば、テレビとかで扱われないような候補者についての情報を知ることができるという「メリット」はあると思います。 一方で、デメリットとしては、その情報がどのぐらい正しいのかであったり、その情報の背景とかそういったものについて、自分自身できちんと調べないといけないというところは「大きなデメリット」かなと思います。 ■「切り抜き動画」のメリット・デメリットは？ —今ネットでは、選挙や政治に関する「切り抜き動画」というものが拡散されていますけれども、これについてはいかがですか。 重要な部分だけピックアップした切り抜き動画というのは、情報を得る上では有用かなと思いますけれども、一方で、その切り抜き動画を「誰が切り抜いて、どう切り抜いたのか」ということによって、元々の情報からかい離してしまう可能性というのはあると思う。 そういった編集がされた動画等が、例えば、ネットで話題になってしまったりすると、本来候補者が言いたかったこととは全く違うことが広まってしまうというようなこともあり得ますので、そうなると選挙に際して、本来の候補者が言っていることが伝わらないということになって、我々の投票の行き先が本来投票すべきだった人と違うところに行ってしまう可能性というのもありますので、そこは注意しなければいけない点だと思います。 ■投票前の情報との向き合い方 —私たちはどんなことに気をつけて情報と接していくべき？ 現代の情報空間というものが、どういうものなのかということについて、知らない場合というのは非常に多いと思います。 例えば、動画共有サイトを見ていると、1つ動画を見ると必ず次の動画が推薦されてくると思います。推薦されてきたら、その動画を見るというような連鎖をしていると思いますけれども、これはその推薦してくる動画が何なのかというのは全てAIがアルゴリズムで決めているわけですね。 そうなると、そこで推薦されない動画を見るのが非常に難しくなってしまうわけです。そういう意味では、もうAIに我々は実は支配されて、見る動画が決められているということになっている。 まず、我々自身が今の情報空間がどういうものなのかというのを正しく理解して、その上で情報をどう扱っていくのかを考えるというのは、これから選挙に向かうにあたって非常に重要なことではないかなと思います。 ◇　◇　◇ 選挙にまつわる候補者の発言や動画などで、偽の情報や誤った情報と思われるものがあれば、「日テレ情報提供サイト」に情報をお寄せください。いただいた情報のうち、特に選挙に影響を与えそうなものについて、日本テレビ報道局が検証します。