イランで生放送中の国営テレビ局にイスラエルによる攻撃がありました。双方の攻撃がエスカレートする中、外務省は、イラン全土の危険情報レベルを最高の「避難勧告」に引き上げました。 【写真を見る】生放送中に爆発音…攻撃を受けたイラン国営テレビ局 イラン国営テレビ局に攻撃 生放送中に響く爆発音 イラン国営テレビ局の関係者 「ここはガラス張りの建物、具体的には国営テレビ局のニュース棟の入口のドアの一つです。4階の右側の構造は完全に崩壊し、左側はご覧の通り、完全に破壊されています。私たちの親愛なる同僚ニマ・ラジャブールも、この場所で重傷を負い殉職しました」 今度、狙われたのはイラン国営のテレビ局でした。生放送中に突然、爆発音が鳴り響きます。 イラン国営テレビ キャスター 「ご覧いただいたのは、イラン・イスラム共和国の領土および国営テレビの区域への攻撃です。シオニスト政権(イスラエル)によるイラン国営テレビへの、あからさまな侵略行為だ」 テレビ局のある地区が狙われていると繰り返し伝えます。すると、次の瞬間、再び爆発音が鳴り響き、画面が揺れるのが確認できます。 キャスター「混乱の空気に満ちたスタジオの…」 スタッフ「早く外に出ろ!」 イラン国営テレビ編集長 「爆撃が起こったとき、私は1階にいた。何人の同僚が殉職し、負傷したのか分からない。彼ら(イスラエル)はイランの国営放送を攻撃すれば、何かが得られると思ったのか」 その後、国営テレビは放送を再開され… イラン国営テレビ キャスター 「つい数分前、国営テレビ局で言論の自由への明かな敵対行為が見られました」 この攻撃でテレビ局にいた3人が死亡し、数人が負傷したということです。当然、イランはこれを非難。 イラン外務省 「悪質な戦争犯罪だ」 対するイスラエルは「イランのプロパガンダのための放送局だ」などと、攻撃を正当化。 13日以降、死者はイランで少なくとも224人、イスラエルでは24人にのぼっています。 日本政府は、イラン全土に危険情報レベルを「退避勧告」にあたるレベル4に引き上げました。 G7を“早退”のトランプ大統領「“停戦よりいいもの”目指す」 こうした中、カナダで行われているG7サミット=主要7か国首脳会議の初日。 アメリカ トランプ大統領 「できるだけ早く戻らないといけない。明日も残れたらよかったけど、皆わかってくれている」 トランプ大統領が2日目の日程への出席を取りやめて、急きょワシントンに戻ると言い出しました。 記者 「大統領、ここで業務をすることはできないのですか?」 トランプ大統領 「これは重大な案件なんだ。他の人に質問は?」 そう言って、帰国の途についたトランプ氏。その帰りの機内で… トランプ大統領 「我々は停戦を求めていない。“停戦よりいいもの”を目指している」 記者 「“停戦よりいいもの”とは具体的に何ですか?」 トランプ大統領 「真の終結だ。停戦ではなく、“終わらせる”ことだ」 “停戦よりもいいもの”=「イランの核放棄」か 小川彩佳キャスター: トランプ大統領の言う“停戦よりいいもの”とは、どういうことなのでしょうか。 ワシントン支局長 樫元照幸: トランプ大統領が意味するのは「イランに核を持たせないこと」だと思われます。 いまアメリカがイランに対する攻撃に参加し、地中深くにあるウラン濃縮施設を、バンカーバスター=地中貫通爆弾で破壊を試みるのではないかとの見方が出ています。 一方で、イランに対してその攻撃をちらつかせることで圧力を最大に高め、核開発の放棄を受け入れさせるとの見方もあり、いずれにしても「イランは核を放棄する」というのが、トランプ大統領の考えです。 しかし、攻撃を行えばイランの報復攻撃はさらに本格化し、中東情勢、さらには国際経済の悪化は避けられません。 一方で攻撃を控えれば、国内の保守派の支持基盤からの批判にさらされることから、トランプ大統領は「今回の政権発足以降、最大の選択の時を迎えている」と報じられています。 トランプ外交が行き詰まり、正念場を迎えている今、イランに対してトランプ大統領がどういう選択をするのか、重要な局面を迎えています。 同時に関税交渉も…トランプ大統領は“心ここにあらず” 藤森祥平キャスター: そんな中、同時進行で日米関税交渉、首脳会談が行われましたが、関税交渉は合意に至りませんでした。 官邸キャップ 中島哲平: 交渉がなかなか進まない理由の一つには、この中東情勢もあるようです。 ある政権幹部は「トランプ大統領は中東情勢が気になり、関税交渉どころではなかった」「“心ここにあらず”な様子だった」と話していました。 また、最も大きな理由となっているのは自動車関税です。日本としては自動車への25%の追加関税の見直しを求める姿勢を崩していません。 一方、トランプ大統領も貿易赤字の解消を最優先に考えていて、自動車への追加関税の撤廃には応じないという構えです。ここで一致点を見出せないというのが、交渉がまとまらない最も大きな理由となっているようです。 小川彩佳キャスター: 日本としては、どうにか関税交渉を進展させたかったようですが、トランプ大統領は中東情勢を睨み、気が気ではないという状況だったようです。 小説家 真山仁さん: タイミングが悪かったのかもしれませんが、中東の石油の備蓄量を考えると、石油のある場所で、これ以上戦火が広がるのは困りますからね。 自動車関税は重要ですが、日本は石油の90%を中東から輸入しています。そこで起きていることを考えると、自動車関税よりも前に「早くこの戦争を止めて欲しい」と、本当はトランプ大統領に訴えなければならなかったように思います。 イランにいる日本人を避難させるというのは当たり前ですが、日本はアメリカと違い自国に石油がないので、もう少し危機感を鮮明に出さないといけない。(関税と中東情勢)順番がどちらが先かということをやってる段階は終わったように感じます。 藤森祥平キャスター: より複雑になって、緊迫度も上がっている状況ですからね。 小説家 真山仁さん: ガザの攻撃から「イランが出てきたら嫌だな」というのは、みんなが思っていたことだと思います。 イスラエルが攻撃していることを考えると、日本は情報と「先進国側でエネルギー大事にしよう」と、もっとアピールするべき場所だったように思います。 国益ギリギリの交渉「最後はトランプ大統領が判断する」 藤森祥平キャスター: “関税どころではない”という状況の中、実害も見え始めている日本にとって、今後この交渉はどうなりそうですか。 官邸キャップ 中島哲平: 日本政府としては、国益を損なうような合意はできないとして粘り強い交渉を続けていく考えです。 例えばいま、90日間は相互関税について上乗せ分は措置の猶予期間が設けられています。猶予期間の延長を求めていくというのも検討の一つとなっています。 さらに取材を進めていると、日米双方、相手に譲ることができないのかというと、どうもそうではないようで、今まさに、日米双方が国益をかけてギリギリの交渉を続けているという状況です。 ある日本政府関係者は「最後はトランプ大統領が判断する」と、「いつトランプ大統領の心変わりがあるかわからない」と見ていて、慎重に交渉を続けていきたい考えです。 小川彩佳キャスター: 複雑に絡み合う状況が刻々と変化していきますね。 藤森祥平キャスター: 妥協を示すべきなのか、どうなのでしょうか。 小説家 真山仁さん: 日本としてやるべきことはやらなければいけませんが、タイミングとしては最悪です。 逆にここで妙にこだわると、逆にトランプ大統領の機嫌を損ねかねません。「今それどころじゃない」と言われる可能性があります。 だからこそ、状況が分かり、両方の交渉ができる方法を取るというのが外交です。まっすぐだけではなく、変化球も投げないといけないときだと思いますが、その策があるのか。現状を見ていると、日本だけ次元の違うところにいる気がします。 ========== <プロフィール> 真山 仁さん 小説家「ハゲタカ」「ロッキード」など 最新著書に「ロスト7」