静岡は家具の一大生産地だったのをご存じですか？しかし、安い輸入製品におされ、最近ではその勢いを失いつつありますが…。そんな現状を打開しようと立ち上がったある家具職人を追いました。 2025年し、静岡の産業界にある衝撃的なニュースが飛び込んできました。それは「シズオカKAGUメッセ」中止の発表。 「KAGUメッセ」は、1951年に当時生産が盛んだった“静岡鏡台”を全国にアピールするために始まりその後、家具全般やインテリアにも対象を広げ今回で71回目となるはずだった歴史あるイベントなのです。 静岡は全国でも有数の家具の生産地で北海道・岐阜・広島・福岡と並び“家具の5大産地”ともいわれています。その歴史は古く、江戸時代に静岡浅間神社を建設した際に全国から集められた大工や木工などの職人が静岡に定住したことが家具の生産が盛んになるきっかけとなりました。 しかし、街で聞いてみると…。 （静岡県民） Q.静岡県、家具の産地といわれてるのを知っている？ 「え～～～知らない」 Q.静岡県家具のイメージは？ 「ないです」 （静岡県民） 「なんとなく聞いたことはあります。やはり後継者がいないのかなというイメージはありますね」 今では「静岡と家具」が結びつかない人も多いようですが…。それもそのはず、家具の購入先を聞いてみると…。 （静岡県民） 「（買うのは）インターネットが多いです」 （静岡県民） 「買うとしたらニトリとか」 最近では家具をネットで購入できたり大型チェーン店でオシャレで機能的なものが安く売られているなど、その購入スタイルの変化により全国的に家具の生産量は減少していて、県内でも1990年ごろをピークに出荷額を大きく減らしています。 そんな中での「KAGUメッセ」中止。主催する静岡県家具工業組合は中止の理由を「計画していた出店規模を確保できなかったため」としています。 しかし、数年前に新たな販路開拓のためにKAGUメッセに出展した県内のある家具メーカーは、「一番期待していた集客がままならず、残念だった」と、時代の変化に対応しきれていない開催方法やその内容に既に危機感を覚えていたという声も聞かれました。 しかし！このままでは静岡の家具産業が消えてしまうと動き出した人がいます。 静岡市の丸子で「手造り家具の金鱗」を営む石川智規さん･52歳。 1948年に創業したオーダーメイド家具店で、無垢の木を使いひとつひとつ手造りしています。これまで先代も含め何度も「KAGUメッセ」に出展してきましたが、その場はどのような存在だったのでしょうか？ （手造り家具の金鱗　石川 智規 代表･52歳） 「僕らみたいな小さな会社にしてみると、自分たちの腕を磨いたものを発表する場なので、成績発表じゃないけど、その場所が大事だった」 その発表の場が失われ、かつて全国に誇った静岡の家具の存在感がさらに低下することを危惧しているといいます。 （手造り家具の金鱗　石川 智規 代表･52歳） 「（静岡が家具の）産地として知られなくなってしまったというのは、寂しい限りですし、どちらかというと、県外のお客さんよりも地元の人たちに、忘れられてるっていうのが寂しいところで」 そこで、石川さんは静岡県内の家具関連産業の活気を取り戻すために「KAGUメッセ」に代わる展示会を企画しました。 それが…。 「ファニチャー アンドスキルズ シズオカ」。 静岡で作られた家具の魅力とその製造を支える木工技術などが見られる、新たな展示会です。 （手造り家具の金鱗　石川 智規 代表･52歳） 「俺らみんなで頑張ってんだぜって、そういうのを見せたいなと、そんな感じですね」 新たな展示会は6月5日から3日間開催され、石川さんの思いに共感した家具メーカーのほか、木材や林業の会社など県内各地から家具に関わる30社が出展しました。 （手造り家具の金鱗　石川 智規 代表･52歳） 「ドキドキしてましたね、ほんとドキドキして、きょうも朝からドキドキしてたら、これだけのお客さんが入ってくれて本当にうれしい。ふっと見て、お客さんと話している出展者を見ると安心感はあるし、この横の中だけでも繋がりがだいぶ増えていそうなので、すごくうれしかった」 この日は企業向けの商談日でしたが、会場には多くの来場者が訪れ、出展者と活発に交流する姿が見られました。 （来場者） 「家具関係の仕事をしていて、静岡でこういうのをやると、知り合いから紹介されてきました。大きいものから小さいものまで有効に使っていて、おもしろかった。最終的には/粉も緩衝材として使っているといっていたので、そういうところはマネできるかな」 中には将来、家具作りを目指す学生の姿も…。 （来場者）「いろいろな形の木材があっておもしろかった。静岡県産の木材を使ったモノが見ていて楽しくて、自分も材料にもこだわれたらいいなと」 今回は製材業者も出店していて、これまでにはない新たなつながりを作るきっかけとなったようです （出展者） 「弊社の場合は工場ですので、直接消費者の方に商品を届けるわけではないので、なかなか知ってもらう機会はない。そういう意味では、表に出てきてやっている内容を理解してもらうには、非常によい機会だった。こういう機会を設けたことで、衰退しつつあるところにストップをかけられれば、今後、続いてく可能性を残せるのかと思う」 今回は完成した家具の展示だけでなく、その製造に関わる会社も出展したことで、様々な方面から静岡の家具業界の魅力を発信できているようでした。石川さんは今回の成功をうけ、静岡家具の再興に向けさらに意気込みます。 （手造り家具の金鱗　石川 智規 代表･52歳） 「産地だって思い出してもらうには、自分たちで（その機会を）つくらないといけない。できるだけ僕らは、素材も含めて静岡県内でとれたものを、静岡県内の人たちに使ってもらえるように、静岡の人たちでつくっていけたらいいなと思う。それが一番だと思うので、その再構築ができるように努力していきたい」