免許返納望む息子vs父親の“家族会議”をモニタリング…「事故しない自信ある」父に息子は「個人の説得ではキリがない」【news23】

18日長野市で91歳の男性が運転する車が外壁に衝突し、助手席に乗っていた妻が死亡する事故がありました。 【写真を見る】「あと3年」免許返納めぐる“家族会議”の様子 先週も99歳の男性が高速道路で逆走するなど、高齢ドライバーの事故は後を絶ちませんが「自分の親も他人事ではない」と感じている家族は多いのではないでしょうか。 私たちは、免許返納を説得する家族会議の様子を取材することができました。「まだ運転できる」と話す高齢ドライバーをあなたならどう説得しますか。 高齢者ドライバー「人を殺すまで運転するのでは」家族の思い 関西地方に住む、園田さん一家。 息子・園田良彦さん(仮名・47) 「きのうもニュースあったやろ、92歳のじいさんが人ひいたって」 父親(81) 「どこにや」 息子・良彦さん 「どこやったか知らんけど、ニュースに出とってん」 話題は、6月5日に福岡県で起きた92歳の男が運転する車が歩行者の女性をはね、死亡させた「高齢ドライバーの事故」についてです。 息子・良彦さん 「人のそういうの見てどう思う?」 父親 「俺と92歳と比べられへんからなあ」 息子・良彦さん 「だから単純にその人のことどう思う?って」 父親 「そら92歳になったら、車乗ったらあかんのちゃう?」 81歳の父親は、今もゴルフや買い物、病院通いなどで月に数回程度、運転を続けています。 一方、息子の良彦さんは、父親に運転をやめてほしいと何度も説得を試みてきたと話します。 息子・良彦さん 「実際に人を殺すまで免許を持ち続けるんじゃないかと思っています、僕としては。それでは困るんですけどね」 「誰かに迷惑をかける前に潔く自分から手を引いてほしい」 数年前から、駐車の際にまっすぐに停められないなどの父親の運転に不安を感じていた良彦さん。そんな中、5月、家の駐車場でこんなことがあったといいます。 息子・良彦さん 「(車が)前から入って、切り返してバックしていく。そのときにここに置いてある苗箱を踏みつぶした」 「歳も歳なんでそろそろやばいんじゃないかって。考えすぎかもしれないですけど、僕は不安に感じました」 「怖いので、その日のうちに『免許返納してくれ』って言ったんですけど、聞く耳は持たない」 免許返納めぐる家族会議 息子の説得に渋る父親(81) 私たちは息子の協力のもと、家族会議の様子を撮影しました。父親本人にも許可を得て放送します。 息子・良彦さん 「いろんな(高齢ドライバーの)ニュース見て怖いんちゃうの?」 父親 「別に乗ってて怖いと思ったことない、まだ」 息子・良彦さん 「事故起こしてる老人の大半はみんなそう思ってる」 母親 「そらそうやわね、事故起こすと思って乗ってないからな」 父親 「でも俺は車と車の事故とか、21歳から乗ってるけど1回もないで」 息子 「そういう人が過信するねんて」 81歳の父親は、事故を起こしたこともなく、自分の運転を危ういと感じたこともないと話します。 父親 「おかん、俺の車の横乗ってて怖いとか思ったことある?」 母親 「私は運転できないからそれがわからへん」 父親 「だって交代でゴルフ場行くときに乗せてもらったりしてる人は今84歳やけど、まだ新車買うって言うてるやん」 息子・良彦さん 「そういうのが身の回りにおるから余計やな。そういう人らが『自主返納したわ』って言い出したらもうちょっと変わるのかね」 息子・良彦さんは、体の衰えなどによって父親がアクセルとブレーキの踏み間違い事故などを起こさないか心配していました。 息子・良彦さん 「アクセルとブレーキ踏み間違えて、自分は絶対ブレーキ踏んだって言い張る(人もいる)」 父親 「アクセルとブレーキ踏み間違えたというのは理解できひん、まったく理解できひん」 息子・良彦さん 「事故した人もみんなそう言うてんねん、踏み間違えてなんかいないって」 父親 「そんなこと言ってたら車なんか乗られへん」 息子・良彦さん 「だからそのへんを年齢とかで区切ったほうがええんじゃないかっていう話。70歳過ぎたらとか75歳過ぎたらとか」 父親 「そんなこと言うたら90歳過ぎた外科医だっておるねんぞ」 息子・良彦さん 「注意力が歳いけばいくほど落ちていくっていう話やんか」 父親 「注意力は落ちるかもしれんけど、若いやつの方が暴走するやんけ」 息子・良彦さん 「それはどうなんやろうなあ」 一方で、取材当日、免許返納に前向きな言葉もありました。 父親 「乗ってて怖い、ヒヤっとしたとかいう体験が出てきたらやめるわ。だって(友人)も免許返したの大きい事故やったからやろ」 息子・良彦さん 「まさにそれやんか、事故起こすまでやめへんわけやん、つまり。起きてからでは遅いからな」 父親「事故しない自信もある」 息子「個人の説得ではキリがない」 返納する気はどのくらいあるのか。話し合いの翌日、父親に話を聞きました。 ——高齢者の事故のニュースをどう見てます? 父親(81) 「自分もそのくらいの年代になってるのかなとは感じますけど、かといって自分には当てはまらないと思ってますけどね」 「今(免許)更新したところですのでね。次の更新は84歳になるんかな。その頃にはそろそろ引き時かなと考えていますけど」 5月、81歳の誕生日を迎えた父親は、3年ごとの免許更新をしたばかりだといい、次の更新のタイミングで返納を検討していると話しました。 なぜ「あと3年」と考えているのでしょうか? 父親 「やはりちょっと衰えているなというのは多少は感じます、やっぱり。でも運転してて『うわ、怖い』とかそういうことは感じたことはない」 「事故しない自信もある」 ——運転するのは楽しいという感じですか? 父親 「いや、まだそら『あの車ほしいな』とか意欲はありますよ。でも家族が許してくれないです」 ただ、息子の良彦さんは、庭で苗箱を踏みつぶしたことが“事故の前兆”ではないかと不安を募らせています。 息子・良彦さん 「潰れたのが苗箱だったから良かったですけど、小さい子どもの可能性だってあるわけじゃないですか」 父親 「これが子どもやったらどうすんねんって言うけど、こんな子どもいませんよ」 「そこに人がおるとか、そういう意識で車庫入れてないもん。家の(敷地の)中やから」 息子・良彦さん 「そんな感じでバックするときに自分の家の庭で孫を殺してしまったニュースとかもあったやん」 父親 「…」 「父に加害者になってほしくない」という思いから、時には強い口調になることも。 息子・良彦さん 「本当は1年でも2年でも早く決断してほしいかな」 父親 「そら自分で『ちょっとやばいな』って思うときが出てきたら、やっぱりやめた方がいいと思う」 ——それは気づきますか 父親 「気づくと思います」 父親は、高齢者講習などを受け、免許の更新ができたため、次の更新までは運転する権利があるとしつつ、「不安を感じたときに返納する」と息子に約束しました。 「自分はまだ大丈夫」と信じる高齢ドライバーに免許を自主返納してもらう難しさ…良彦さんは家族だけの説得では限界があると話します。 息子・良彦さん 「やっぱり行政がもうちょっと厳しくしてくれないかなと思っていますね。どうせこの人たちは言っても聞かないんだろうと思っちゃうので」 「厳しめの規則なり法律なり改正してやってもらえないかなっていう、そのほうがいいよな“一律で”って思います。個人個人の説得でやってたらキリがないですもん」 高齢ドライバーの事故相次ぐ 免許返納は“家族だけの説得では限界” 小川彩佳キャスター: 家族会議のあの会話の内容とか目線を合わさずに話しをする感じとかも、一つ一つが他人事ではないという。 藤森祥平キャスター: 家族会議を開くところに至るまでもいろんなご苦労もあったでしょうし、これだけでも真剣に皆さん向き合っているなと思うし、お父様にも免許を更新して運転できる権利はある。でも息子さんの思いは、言葉とかタイミングを選びながら進めているし…ってなりますね。 小川キャスター: 本当に家族の皆さんの協力を得て今回取材ができたわけですけれども、非常に難しい問題だと改めて思いますね。 トラウデン直美さん: 家族だからこそ難しいっていう部分もきっとあると思います。 そもそも、なかなか免許を「返納して欲しい」と言い出せないご家庭もあるかもしれないですよね。 ただ、家族だと年齢差がどうしてもあるじゃないですか。そういうところにも「まだまだ若いんだ」という気持ちも持ってしまったり、反発したるすることもあるかなと思います。 小川キャスター: 子どもに説得をされるということ自体に反発を覚える方もいらっしゃるかもしれないですよね。 トラウデンさん: もしかしたら年齢の近い方同士で集まれるような場があったら、ちょっとヒヤッとしてきたなという場面を話す方がいらっしゃったりするかもしれないですよね。 自分たちでも返納しようかという年齢の近い相談ができる相手がいれば、もし返納した後に、生活で不便が出てきた時も、自分たちで要望の声を届けるコミュニティにもなると思うので、年齢の近い人たちのコミュニティは何かあってもいいのではないかなと思います。 小川キャスター: そして、いざ歳を重ねてから、心の整理ってつきにくいところがあると思うので、40代50代のうちから他人事だと考えず、先々のことを考えていかなければならないですね。 藤森キャスター: それぞれの立場で、向き合っていかなくてはいけません。

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