今月22日に投開票を迎える東京都議選。「小池都政を評価しない」とする政党の多くは、「予算のムダ遣いがある」と指摘する。中でも批判の的となるのが、来年3月末に完成するとされる世界最大級の噴水だ。東京都は「税金は一切使わない」としているが…。 ■都政を評価しない理由は「予算のムダ遣いがある」 社会部・雨宮千華記者(都議選担当) :日本テレビが独自に各党にアンケートをとったところ、「小池都政を評価しない」と答えたところの多くは、「予算のムダ遣いがある」と指摘していました。その中でも指摘で多かったのが、都庁舎のプロジェクションマッピングと、これから建設するお台場の噴水についてです。 社会部・内藤ミカ記者(都庁担当):都庁舎には、外国の観光客や、芝生の上で寝転びながらプロジェクションマッピングを見上げたりする人など、結構多くの人がきています。今年5月は、7万4000人が見に来たらしいです。 2023年度はこの事業に6.4億円を拠出しているんですが、それに対する経済波及効果は約18億円と、都は言っています。ただ、この数字には、プロジェクションマッピングの映像制作の依頼のお金や、そこで生まれた雇用なども含まれているんです。 社会部・田頭祥デスク :経済波及効果、と聞くと、普通はそこに来たお客さんが都庁の周りで飲食したり、宿泊したりということを思い浮かべるけど…。 ■「都民の税金は一切使わない」それって本当? 内藤記者:さらに多くの政党があげた“ODAIBAファウンテン(仮称)”。お台場海浜公園に建設される、世界最大級の噴水です。今年度、26億円の予算がついてて、来年の3月ぐらいに完成する予定とされています。 田頭デスク:政党は当然、議会などで追及したと思うんですけれども。 内藤記者:東京都としては、都民の税金は一切使わないと言っています。じゃあ何が財源なのか。お台場エリアや有明などは臨海副都心と言われますが、その臨海副都心は東京都が持ってる土地なんです。その土地の売却などで得た収入を財源として、整備や維持管理をするというんです。 田頭デスク:一般会計、つまり都民の税金からは出ないとしても、元々のお台場の土地が誰の財産なのかと言ったら、都民の財産ですよね。都民の財産を売却して得て、そのお金が入ってきたのに“都民のお金は使いません”ということで、納得できるのか…。 内藤記者:この臨海地域開発事業会計というのは、臨海副都心エリアの再開発事業などでしか使えないお金って決まっている。だから、子育て支援とか何か別の事業に使うことはできないんですが、都議会の一部会派とかは、その枠組みを廃止して、もっと都民に必要な事業に使えるようにした方がいいんじゃないかと主張しているんですが、そうなってはいないですね。 田頭デスク:そもそも、なぜお台場に噴水、という話になったんでしたっけ? 内藤記者:やっぱりお台場は、近年、来訪者数が激減しています。私も子どもの時はよく行ってて、駐車場とか探すのも大変だったんですけど、今は全然人がいなくて寂しい街になってしまった。東京都は都の責任としてお台場を活性化させなければというのがあり、新たなランドマークを作ろうということですね。 ■ディズニー超え 年間3000万人の観覧者を見込む? 田頭デスク:にぎわいを創出、なんだろうけど、どのぐらいのお客さんを見込んでいるのだろう? 内藤記者:年間で3000万人の観覧者と、98億円の経済波及効果を見込んでいます。ただ、ディズニーリゾートが年間来場者数2700万人とも言われている。それよりも多い。ただ、人数の数え方についても色々あって、周辺のタワマンに住んでいる人とか、近くのホテルに滞在してる人とか、いろんな数字が集まって“3000万人”としているんです。 田頭デスク: でも、これをちゃんとやって、お台場、臨海副都心の価値を上げないと、また土地を売却するにもね、その価値が下がってしまったら、東京都にとって逆にマイナスになるという考えも当然ある。どう価値を上げるか。 雨宮記者:ちょっと意外だったのは、“小池都政を評価する”サイドだった自民党も、今回のこのプロジェクションマッピングと噴水については“課題のある事業”としている。国民も効果検証をすべきだと。あまり好意的なことを公約で語ってないイメージです。 田頭デスク: 逆に、都ファや公明などは、これに積極的ということ? 雨宮記者 :積極的な回答も特にないです。ここについて、あえて今回の都議選で触れてくるようなことは、特になかったですね。 ■チルドレンファーストで「置き去りにされる人も」 内藤記者:東京都は巨額予算で、いろんな支援や取り組みをやっています。ですが、それが都民に十分に伝わっているのかなと思うことが結構あります。小池知事が今年4月、都庁職員への訓示で“政策は都民に届いてこそ政策”と言っていて、その通りだなと思った。あまたある東京都の取り組みを、都民がちゃんと知って有効に使わないと本当にもったいないし、東京都はそれを分かりやすく伝える努力がもっと必要だと思います。 もう一つ。私は都民として、記者として、子育て支援が大事というのは、すごくよく分かります。今後の東京や日本の未来を考えると、重要なことは分かります。 そんな中で私は子どもがいないんですが、小池知事が“チルドレンファースト”で、各党も今回の都議選で、子育て世帯を対象に行ってもいろんなところで使っている。で、それを聞く度に子どもがいない人がどんどん置いてけぼりになっちゃってるのを感じていて、すごく寂しくなる。 このままだと、子どものいる人といない人の間にすごく大きな分断が生まれちゃうんじゃないかなとも思っていて。子育て政策がとても大事だということは分かってますが、子どもがいない人に向けての考え方も、ちょっとあってもいいんじゃないかなと、都民の一人として感じています。 ■小池都政のワードの「上塗り感」 田頭デスク:最近、東京都の合計特殊出生率が1を切っている。現状は非常に深刻で、将来の社会保障の担い手がいなくなる。だから、子育て・教育支援については、お子さんをお持ちの方だけじゃなくて、幅広い国民で負担しましょうというね。若干国政の話ではあるけれども、そういう感覚はわかるんだけれども、その一方で“チルドレンファースト”という中で、どうしてもそういう気持ちを抱いてしまう人をどうフォローするのかということですかね。 雨宮記者:私は普段、こども家庭庁の取材なども担当しています。最近“独身税”というワードがネットで話題になったと思うんですけど、やはり政策を伝える上でも、伝え方とかってすごく大事だなと思いました。色んなシチュエーションの方々が、分断しないようにという配慮が必要だなと。 あと、今回、公約の比較や検証をする中で、水道基本料金の無償化を入れ込んできた政党もありましたし、「018サポート」の増額っていうのもありました。気づいたら、これまで小池都政の中で出てきたワードの上塗り、プラス、アップデートみたいなものが結構並べられてるメニューでした。 結局、小池都政の手の中で、都議選が繰り広げられているのかなという印象を受けました。争点になるものが何だろうと考えた時に、対極になるような政策が見つかりにくかったですね。 田頭 デスク:うちの党は減税しますとか、うちの党は給付しますとか。手厚い、これだけの巨額な東京都の予算をみなさんに還元します、というような政策が並んでいる。都民としては嬉しいけれども、東京以外の自治体にはできないようなものを、都民だけもらっていいのかなっていうのは、どこか考えてもいいんじゃないかな、という気もします。