肩こり、首の痛み、腰痛を放置していませんか？ 「いつもの痛みだろう」と軽く見ていると、「死に至る病」を見逃すことになるかもしれない。 前編記事『「ただの肩こり」が死の予兆に…重病のサインとなる「肩の痛み」の特徴』より続く。 「なんとなく痛い」程度でも危ない これらの疾患による痛みは耐えがたいほどに激しいものが多く、異変に気づきやすいという。ただし、なかには強い痛みを伴わないケースもある。 リペアセルクリニック大阪院の院長・岩井俊賢氏は次のように警鐘を鳴らす。 「最近増えているのが『無痛性心筋梗塞』です。通常、心筋梗塞は激痛を伴いますが、糖尿病患者の場合、神経障害が起こり痛みを感じにくくなることがあります。 実際、心筋梗塞の患者さんが『なんとなく肩のあたりに違和感がある』程度の症状で、普通に歩いて来院されたケースもありました。 このように痛みに気づきにくい場合には、簡単なチェック方法があります。 通常の肩・首こりであれば、ラクな姿勢ときつい姿勢があり、体を動かすと痛みの強さが変わります。 しかし、内臓疾患が原因の痛みは、姿勢を変えても痛みの強さがほとんど変わりません。慢性的な痛みに悩む方は、このような方法で一度チェックしてみることをお勧めします」 肩や首の症状から「死のサイン」を見つける方法を理解したところで、実はもう一つ、「こり」に注意すべき部位がある。それが「腰」だ。 厚生労働省の調査によると、日本人の4分の1にあたる2800万人が腰痛の症状を訴えており、肩と同様に多くの人が慢性的な痛みに悩まされている。 スポーツ選手をはじめ、100万人以上の患者を診てきた、さかいクリニックグループ代表の酒井慎太郎氏が解説する。 「腰痛は8割が原因不明と言われますが、なかには、内科的な疾患が関係していることがあります。 恐ろしい病気としては、腎臓がん、すい臓がん、胆のうがんのほか、背骨に細菌が感染して起こる化膿性椎間板炎などがあります。また、肩・首と同様に、腹部大動脈瘤破裂や大動脈解離なども腰痛の原因として挙げられます」 症状を伝えるときの3つのポイント 腰痛は日常的に強い痛みを感じるため、肩や首のこりと比べて、重大な疾患による痛みを見分けるのが困難とされている。 「大動脈が原因の腰痛は突発的で激しい痛みなので、普通の腰痛と区別がつくと思います。安静にしていても痛みがある場合は、大動脈瘤破裂や大動脈解離を疑ったほうがいいでしょう。 一方、がんによる腰痛は見分けるのがなかなか困難です。胆嚢がんでは右背部の痛み、腎臓がんでは血尿や排尿・排便障害を伴うことがあります。また、がん全般では発熱を伴う傾向があります。 以前、複数の整形外科を受診しても『全然痛みが取れない』という患者さんがいました。詳しく話を聞くと『血尿が出たことがある』とのことで、もしやと思いCT検査を行った結果、腎臓がんが発見されました。 腰痛の場合、このような随伴症状に注意を向けることが、重大な疾患の早期発見につながります」（前出・酒井氏） では、このような危険な症状に気づいた場合、どのように対処すればよいのだろうか。場合によっては、1分1秒を争うこともあり、すぐに医療機関に行くことが望ましい。 その際、原因を素早く医者に判断してもらうために、伝えるべき重要なポイントが3つあるという。 「受診する診療科については、内科や整形外科など、どこでも構いません。大切なのは、 ・いつ始まったのか ・どこが痛いか ・どのように痛いか を正確に伝えることです。発症日時が明確であればあるほど、医者は緊急性が高いと判断します。 『どのように痛いか』というのは伝えるのが難しいと思いますが、初めて感じる痛みかどうかだけでもヒントになります。 いずれにしても、少しでも違和感があれば、近くの内科、整形外科に行くとよいでしょう」（前出・岩井氏） 肩・首・腰の不調は多くの人が経験する身近な症状だ。いつもの痛みと放置せずに、重大な疾患のサインに気づいてほしい。早期発見が、あなたの命を救う鍵となるのだ。 「週刊現代」2025年6月23日号より 【もっと読む】「ただの肩こり」が死の予兆に…重病のサインとなる「肩の痛み」の特徴