セ・リーグ6球団、後半戦期待の“上積み戦力”は誰になる!? 離脱中のベテランの復帰か、若手の台頭か

 間もなくシーズンの折り返しを迎える今年のプロ野球。7月末まではトレードなどの補強も可能となっているが、それ以上に重要なポイントは、既存戦力の底上げである。現在、故障で離脱している主力や成長が著しい若手にスポットを当てて、後半戦に戦力としての上積みが期待できる選手を探ってみたい。今回は、セ・リーグの6球団についてだ。(成績は6月19日終了時点)【西尾典文/野球ライター】 【写真】ポテンシャル高め!巨人入団3年目で期待がかかる三塚琉生の桐生第一時代の貴重な一枚 後半戦に復帰できるかどうか  現在、首位を走る阪神で期待したい投手が、ルーキーの木下里都だ。福岡舞鶴時代は内野手で、福岡大に入学すると、1年生で投手に転向した。社会人のKMGホールディングスを経て、昨年のドラフト会議で3位指名を受けて、入団している。 まもなく折り返しを迎えるプロ野球(NPBの公式ホームページより)  二軍ではここまで22試合に登板して防御率2点台と好投。一軍初登板となった5月29日のDeNA戦では、1回を1失点とほろ苦いデビューとなり、一度は登録抹消となったものの、再昇格後の6月17日に行われたロッテ戦では、1回を無失点に抑えている。  最大の魅力は、常時150キロを超えるストレート。ロッテ戦では最速156キロをマークしている。  阪神の球団関係者によると、ボール以外の強みもあるという。 「とにかくマイペースで動じないところがいいですね。良い意味で怖いもの知らずというか、他球団の主力に対しても全く臆するところがありません。ストレートの球威は申し分ないですし、投げるスタミナもある。そういう意味でもリリーフ向きではないでしょうか」  阪神のリリーフ陣は強力とはいえ、抑えの岩崎優にかつてのような安定感がなく、セットアッパーの石井大智も6月6日のオリックス戦で頭部に打球を受けて戦線を離脱している。今後、木下の出番が増えそうだ。  外国人投手の活躍が目立つDeNAだが、後半戦に向けて復帰が待たれる選手は、主砲のオースティンだ。  昨年は3シーズンぶりに100試合以上に出場し、打率.316で首位打者を獲得する活躍で、チームの日本一に貢献した。しかしながら、今年は、開幕直後に下半身のコンディション不良で戦列を離れると、5月に一度復帰するも、膝を痛めて6月6日には再び登録を抹消された。  筒香嘉智や宮崎敏郎といったベテランにかつてのような力がなく、若手を見ても、そこまで長打が期待できる選手は見当たらない。オースティンはこれまでも故障での離脱を繰り返しており、無理は禁物だ。後半戦に復帰できるかどうかで、チームの順位は大きく変わることになりそうだ。 若手の台頭は必要不可欠  昨シーズンは終盤に急失速を見せて4位に沈んだものの、今年はAクラス争いに踏みとどまっている広島。現在、故障で離脱しているドラフト1位ルーキーの佐々木泰の早期復帰が待たれるところだが、もう1人打線の起爆剤として期待したい野手が、入団7年目の林晃汰だ。  3年目の2021年には一軍で10本塁打を放つも、その後の3年間ではわずか1本塁打と低迷。今年も、ここまで一軍では10試合の出場で2安打に終わっている。とはいえ、二軍ではチームトップの5本塁打を放ち、打率は3割近い数字をマークするなど、好調を維持している。  広島のサードは、主に小園海斗が守っているが、菊池涼介の不振で小園がセカンドに回ることが少なくなく、日替わりでの起用となっている。それに加えて、長打が期待できる左打者がいないチーム事情も、林にとっては“追い風”となりそうだ。このまま二軍でアピールを続けて、早期の一軍昇格を目指したい。  巨人は、何よりも不動の4番打者、岡本和真の復帰が待たれるところだが、チームの将来を考えると、若手の台頭は必要不可欠である。  そこで、入団3年目で桐生第一出身の三塚琉生に期待したい。2022年の育成ドラフト6位での入団ながら、今年は二軍で結果を残して、6月13日には支配下に昇格した。翌日には、いきなり一軍でスタメンに抜擢されたことも話題となった。  巨人の球団関係者は、三塚のポテンシャルの高さについて、こう話している。 「(身長182cm、体重93kgで)体も大きいですが、決してプルヒッター(左打者ならば右側に力強く引っ張る打者)ではなく、センターや左中間にも大きい当たりを打つことができます。打撃練習を見ていると、一軍の選手とも全く引けをとりません。ハンドリングも柔らかくてファーストの守備は、駒田徳広・三軍監督の現役時代のようですし、外野手としても肩がある。秋広優人がソフトバンクに移籍してチームから抜けたこともあり、首脳陣の期待はかなり高いです」  ここまで一軍では9打数ノーヒット、6三振と苦しんでいるが、それでも一軍に帯同しているのは期待の表れと言えるはずだ。この経験を糧に、後半戦は成長した姿を見せてもらいたい。 「ここからが勝負」という選手が多い  中日では松葉貴大、涌井秀章、大野雄大のベテラン投手陣の頑張りが目立つが、もう一人忘れてはならないのが柳裕也だ。  昨年は、一軍定着後、最低となる67回の登板に終わるなど精彩を欠いた。今年は4試合に登板して1勝1敗ながら防御率は0点台と抜群の安定感を見せていた。  4月23日の巨人戦で右肩に違和感を覚えて翌日には登録抹消となり、二軍での調整が続いている。6月15日のソフトバンクとの二軍戦で、実戦復帰を果たし、3回を投げて無失点と好投を見せた。  順調にいけば、今年中に国内FA権を取得すると見られており、自身の“市場価値”を高めるためにも、重要なシーズンとなる。後半戦は完全復活に期待だ。  5チームと大差をつけられて最下位に沈んでいるヤクルト。ここまでわずか1試合の出場に終わっている主砲の村上宗隆の復帰が待たれるところだが、来年以降のことを考えると、それ以外の上積みも欲しい。  そうなると、期待はやはりドラフト1位ルーキーの中村優斗になるだろう。地方リーグ所属ながら、そのスピードは圧倒的なものがあり、4年時には大学日本代表でも活躍した。1月の合同自主トレ中に上半身のコンディション不良を訴えて、スロー調整となっていたものの、順調に回復した。  二軍では既に持ち味の150キロを超えるストレートを投げ込み、復調ぶりをアピールしている。後半戦でチームが浮上するために、どれだけ力になれるのか、非常に楽しみだ。  今シーズンはもちろんだが、チームによっては来季以降のことも徐々に気になる時期となってくる。「ここからが勝負」という選手が多いだけに、名前を挙げた以外からも続々と、チームに活気を与える戦力が飛び出してくることを期待したい。 西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 デイリー新潮編集部

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