【ワシントン＝淵上隆悠、テヘラン＝吉形祐司】米国のトランプ大統領は２１日、ホワイトハウスで演説し、「米軍は、イランの三つの主要な核施設に対し大規模な精密攻撃を行った」と明らかにした。 　イスラエルとイランの交戦に米国が軍事介入した形となり、イランの反発は必至だ。 　トランプ氏は攻撃の目的について、「イランの核濃縮能力の破壊と、世界最大のテロ支援国家がもたらす核の脅威の阻止だ」と説明した。「イランの主要な核濃縮施設は完全に壊滅した」とも語った。 　米軍が標的にしたのは、イラン中部にあるフォルドゥ、ナタンツ、イスファハンの三つの核施設。米紙ニューヨーク・タイムズは、米政府高官の話として、地下約８０メートルにあるとされるフォルドゥの核施設のウラン濃縮工場の攻撃には、Ｂ２爆撃機６機が投入され、地下貫通型の大型爆弾「バンカーバスター」１２発が使用されたと報じた。ナタンツとイスファハンの両核施設には、海上から巡航ミサイル「トマホーク」計３０発が発射されたという。 　トランプ氏は１９日、軍事介入の是非を「２週間以内に判断する」としていたが、イランに核開発を放棄する意思がないと判断し、攻撃に踏み切った模様だ。 　米軍の攻撃を受けた核施設の被害状況は不明だが、イランのタスニム通信はフォルドゥで負傷者の救助が行われたと報じた。イラン当局は、イスラエルによる核施設攻撃が始まる前に核物質を安全な場所に移動したと説明しており、原子力庁は２２日、「環境汚染は確認されず、周辺住民への危険もない」と発表した。 　国際原子力機関（ＩＡＥＡ）も２２日、米国の攻撃後、イランの核施設の周辺では放射線量の上昇は確認されていないと発表した。 　一方、米ＣＢＳニュースは、米側が攻撃の前にイラン政府に接触し、軍事計画は限定的で、政権転覆の意図はないと伝えていたと報じた。イランとの全面衝突を避ける狙いがあったとみられる。トランプ氏は演説で、イランに対し「今こそ平和を築くべきだ」と呼びかけた一方、イラン側が応じず、報復を行えば、「今後の攻撃はさらに大規模になる」と警告した。 　イラン外務省は２２日、米国を強く非難する声明を発表し、「全力で抵抗する権利を有する」と軍事報復の可能性を示唆した。 　イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」は２２日、米国が支援するイスラエルへの新たな攻撃を開始し、弾道ミサイル４０発をイスラエル中部テルアビブなどに向けて発射したと発表した。 　イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は２２日、「あなたの大胆な決断は、歴史を変えるだろう」とトランプ氏を称賛するビデオ談話を出した。攻撃の直後、トランプ氏からネタニヤフ氏に電話があったという。