発達障害とは何か。 近年増加傾向にある発達障害。どう診断されるのか。どんな種類があるのか。医療や教育はどうおこなわれているか。小学校入学から中学進学、思春期から成人への成長過程を踏まえ、さらなる将来をどう考えるか。 発達障害をめぐる現状を明らかにすることで見えてくる、さまざまな考え方、課題や将来の方向性。そして、発達障害のこども達との向き合い方とは。 著者の50年近くにわたる臨床経験を凝縮した一冊『こどもの発達障害 僕はこう診てきた』より一部抜粋・再編集してお届けする。 『こどもの発達障害 僕はこう診てきた』連載第24回 『「できない子ども」と決めつけないで…50年近いキャリアを誇るベテラン医師が、発達障害児の親に伝えたい「ピグマリオン効果」』より続く。 いろいろやらせることが大切 就学〜小学校〜中学校(義務教育の期間) この期間に大切なことは、知識欲、自尊感情、自己コントロール能力、生活能力を育てるとともに、将来に向かって何をしたいか漠然とでも考えていく時期になります。 もちろん小学校1年生で将来「ケーキ屋さん」になりたいと言ったとしても、そのとおりにはおそらくなりません。しかしケーキ屋さんになるために、どんなケーキがあるかをいっしょに調べたり、簡単なケーキなどをいっしょに作っていったりすることならできます。「そんなの無理だよ」ではなくて、いっしょに楽しんでいるうちに、たとえば、今度は野菜に興味を持ってベランダ栽培を始めるかもしれません。 子どもにいろいろやらせてみて、もっと知りたいという知識欲を育てることも自尊感情の育成には役立ちます。 「できる」を増やす 学習をはじめとして、うまくいかないことがあっても、できることを増やしていくことが、子どもの学習に対する「わくわく感」「達成感」の獲得につながります。この時期には自分で考えて行動する、すなわち自己コントロールの能力も身に付けていく時期です。与えられた課題をただこなすだけではなく、どうこなすかを考えることで、課題のこなし方も変わってくると思います。 著者は学習指導要領(学校での教科内容)だけにこだわる必要はないと考えています。何が好きになるかは、その時点の生活のなかだけで判断しないほうがいいでしょう。いろいろなものを体験することによって、自分の世界が広がりますし、まわりもそのためのサポートができればと考えています。 知的発達の遅れ(知的障害・知的発達症)を抱えている場合には、未就学児の課題で取り残しがあるかもしれません。その場合でも焦ることなく、少しずつできなかった課題に、子どもが「快」のイメージを持って挑戦することで、「できる」が増えていくと思います。 できないことをあきらめるのではなく、10年後、20年後に向けてゆっくりとでも増やせることを願っています。 『「不登校なのに同世代より優秀な子もいます」…発達障害を抱えながら秀でることができる「驚きの学習法」』へ続く。 【こどもの発達障害 僕はこう診てきた】 【内容紹介】 発達障害とは何か。どう診断されるのか。どんな種類があるのか。医療や教育はどうおこなわれているか。小学校入学から中学進学、思春期から成人への成長過程を踏まえ、さらなる将来をどう考えるか。 発達障害をめぐっては、さまざまな考え方、さまざまな対応があります。本書では、発達障害をめぐる現状をつまびらかにしつつ、課題や将来の方向性について概説していきます。 まず、障害、発達障害に対する現在のわが国および国際的な考え方を整理し、自閉症スペクトラムやADHD、発達性学習症、発達性協調運動症、知的発達症など、代表的な障害について説明します。さらに、発達障害を抱える子どもが利用できる社会資源、年齢層に応じて抱える課題や、将来展望まで概観します。 著者の50年近くにわたる臨床経験を凝縮した一冊です。最新のICD-11(国際疾病分類11版)での診断要件(著者訳)も掲載しました。 【目次】 第1部 発達障害とは 第1章 障害をどう考える 第2章 発達障害とその周辺 第3章 発達障害の診断をめぐって 第2部 発達障害と各論 第4章 自閉スペクトラム症 第5章 ADHD 第6章 発達性学習症 第7章 発達性協調運動症 第8章 知的障害(知的発達症) 第9章 その他の発達障害や併存疾患 第3部 発達障害と社会資源 第10章 福祉・保健サービス 第11章 教育をめぐって 第12章 医療とのかかわり 第4部 年齢と対応 第13章 就学まで 第14章 就学~小学校~中学校(義務教育の期間) 第15章 思春期から成人へ 第16章 将来を考える 【次回の記事を読む】「不登校なのに同世代より優秀な子もいます」…発達障害を抱えながら秀でることができる「驚きの学習法」