物価高によって国民の生活がますます苦しくなる中、それでも減税に否定的な態度を崩さない石破政権。新刊『トランプ・ディールで日本復活!』を上梓した、京都大学大学院教授の藤井聡氏によれば、減税によって私たちの手取りを増やすことは「いとも容易いこと」だという。ではなぜ、石破政権はそれをやらないのか? 藤井氏がその理由を明らかにする。 「可処分所得」を増やすのは容易いこと 実質的な可処分所得を増やすことは、いとも容易いことです。一番シンプルなのは減税です。そもそも可処分所得とは、所得から税金や社会保険料などを引いたいわゆる「手取り」のことだからです。たとえ給料が同じでも、税金が減れば手取りが増えるのです。 消費税の減税や「103万円の壁」の「178万円」への引き上げ、ガソリン税の減税などをやればいいだけです。 あるいは、輸入している石油や食料品への補助金支給を行うことでも、(賃金を下落させることなく)物価を引き下げ、それを通して手取り=可処分所得を増やすことができます。 例えば、政府が海外の輸出業者から小麦や石油を一括で買い取った上で、国内にはこれまでと同じ値段で払い下げればいいのです。政府が高く買って安く売れば、当然ながら物価は下がり、そして結果的に私たちの手取りが増えます。 実は、政府は一部、こうしたことをやっています。例えば、小麦は政府がすべて買い取って、国内で払い下げています。 ちなみにこうした手続きの代わりに、日本の輸入業者に、物価が高くなった分だけ補助金を出してもいい。手続きは若干違いますがやっていることは同じです。そうすれば、円安による物価高や輸入品の高騰による物価高を抑えつけることができるのです。 こうした仕組みを使えば、政府はいくらでも食料品を安くすることができるのです。それなのに、石破政権はやりません。仕組みはあるのに、買った金額とあまり変わらない値段で売りさばいています。 「ケチ」な態度を崩さない石破政権 なぜ石破政権はそうしないのかというと、一言でわかりやすく言うなら彼らは要するに「ケチ」なのです。お金を払いたくないのです。 「ケチ」な政府は、ガソリンの補助金にしても、一応支給するポーズは見せるものの、当初用意したお金がなくなればスグにやめてしまいます。 普通の政府は、ガソリン代がある一定水準以上になれば補助金等によって物価高を抑え、一定水準以下になるまで補助金支給を継続させます。 病院で、倒れた患者を治すために点滴を打つのと同じ。点滴をたくさん打つのがもったいないから、とりあえず一本だけ打って退院させる、なんてことをやっていたら、治る病気も治らなくなるでしょう。そんな病院は要するに病気の患者を本気で助けようとはしていないと言わざるを得ません。 同様に政府もまた、ケチすぎるがゆえに、「あらかじめ用意した予算」が切れれば、あっさりと物価引き下げのための補助金支給をやめてしまうのです。ということは要するに政府は、ガソリン代を引き下げて国民の可処分所得を増やすことより、「お金を使わないこと」を徹底的に優先しているのです。 いずれにせよ、実質的な可処分所得を増やすためにやれることは山ほどあります。そして石破首相は、「物価上昇対策をやります!」と明確に口にしています。 ところが彼は結局は「ドケチ」であるがゆえに、必要な対策を絶対にやらないのです。その結果、国民の貧困化はいつまでたっても終わらないのです。 では彼はなぜ、国民の暮らしを破壊してまでもそんな「ケチ」な態度を崩さないのでしょうか……? その答えは、後編記事〈石破政権が国民を苦しめるほど「ドケチ」なのはなぜか?日本の政治は「財務省」が決めているという「残酷な現実」〉で詳しく解説します。 【もっと読む】石破政権が国民を苦しめるほど「ドケチ」なのはなぜか?日本の政治は「財務省」が決めているという「残酷な現実」