自由民主党の党員数は2024年末時点で102万8662人、前年比6万2413人減少で「6万人ショック」と呼ぶ人たちもいる。2024年衆議院選挙だけでなく、地方選挙でも苦戦が続いており、6月22日の都議選も過去最低議席の歴史的な大敗となった。直近の出口調査でも自民党支持層は53%しか自民党に投票しなかったということで、保守層が自民党から離れているのではとの指摘も相次いでいる。大きな変化よりこれまでと変わらない生活を求めるのも保守、かつてはそういう人たちからも保守系の与党として支持を得ていたはずが……。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、保守層を構成している市民たちからの、「物価高対策に国民1人当たり2万円給付」「2030年度に賃金約100万円増」など公約を発表した自民党への本音を聞いた。 【写真】保守から支持を集める党も出てきている * * * 「現金で尻尾を振ると思われているんでしょうね。政府自民党が選挙目当てに現金を配る、一般国民って本当にバカな連中と思われているのだと思います」 80代の高齢女性が率直に語る。趣味サークルの高齢者の集まり、みな喜ぶかと思えば、高齢者すら7月予定の参院選で自民党が目玉政策とする現金給付に「ふざけるな」「バカにしている」「なぜ現金?」と右だ、左だの政治信条お構いなくの総スカンだった。 ちなみに筆者は多くの集まりで、それこそ右だ左だ関係なくヒアリングを続けたが年金者からの評判の悪さはもちろん、現役世代に至ってはもっとひどい罵詈罵倒ばかりであった。ただ自民党が嫌われている、もうそればかりになっている。 心の底からナメられてる 〈お子さんおよび住民税非課税の低所得世帯の大人の方々にはお一人4万円、その他の方々には一人2万円、とすることといたしております〉(※6月18日石破首相会見) 〈消費税減税と比較において、より優れた対応である、このように考えております〉(※石破首相・同) 石破茂首相はG7サミットの会見で改めてこう述べた。自民党と公明党の与党選挙公約に現金給付を掲げると。 すごい、中世の王様の民に対する施しのようだ。 つまるところ一般国民、政府与党にバカにされているのだと思う。貧乏人には4万円、その他の一般人には2万円やるから参院選は自民党と公明党に投票しろと。 これ、決して言い過ぎではない。これそのままでしかないのだから。 石破首相、これより前の会見でこうも言った。 〈来たるべき参議院の公約に盛り込むよう、検討するように指示をいたしたところでございます〉(※6月18日会見) 公約が民草に対する現金2万円の施し、それで勝てると思われている。 「はは……そうか…私…あの人にも心の底からナメられてるんだ……」 (※『カバチタレ』12巻より) 法律と社会、人間という生き物のリアリズムを描いた傑作漫画『カバチタレ』(講談社、青木雄二監修,田島隆原作,東風孝広漫画)で労基違反を繰り返すパート先のブラック企業経営者や女遊びで借金まみれの無職DV夫(途中離婚して元夫)に苦しめられ、耐え続けた女性がそれに気づく瞬間ではないが、心の底からナメられているのである。 当の石破首相、4月の国会でこうも言っていた。 「これはカギ括弧をつけますが「選挙目当てのバラマキ」というようなことを政府として考えているものではございません」(※第217回国会、衆議院予算委員会、4月14日) すごい、嘘つきだ。でなければ「選挙目当てのバラマキ」と思っていないということか、というか6月11日の党首討論でも石破首相は〈政府といたしまして、いまご指摘になりました給付金について、現在検討しておるという事実はございません〉と言い切っている。 バラマキではない、ではなぜ参院選の選挙公約に盛り込むのか。選挙と関係なくそれこそ〈本当に困っておられる方々に重点を置いた給付金〉と言うなら、これまでにいくらでも実施する期間はあったはずだ。 批判したら「老人をいじめるな」 もうあたりまえの話だが多くの自民党関係者すら裏ではあきれている。北関東、30代男性が語る。 「いまさらバラマキですよ、老人しかいない(自民)党はこんな案しか出ないし、数少ない若者(の党員)は老人の顔色を伺うばかりというか、自民党にいる若者なんて頭はおじいちゃん。地方組織もそう。みんな日々の生活でこんなふざけた案が正しいなんて思っちゃいない。でも仕事や近所に差し障りあるから表立って言わない。自民党は田舎政党ですからね、私も言えたぎりじゃないけど、田舎で自営業だと仕事に障るからね」 筆者が気になるのは自民党関係者の多くに面従腹背な人たちが増えたことだ。世代交代もあるのだろうが冷戦時代を知る自民党員に比べれば「仕事貰うため」「近所の手前」が露骨になったように思う。ある意味、より自由になったとも言えるが、2024年末で党員が前年比6万人超と東京の千代田区や大阪の藤井寺市の人口とほぼ同規模の党員が1年で消滅してしまった自民党、消えた年金から加計学園問題、旧統一教会、裏金事件、増税と物価高の無策と好き勝手してきたツケがまわってきている。 「でも、それを主導してきた連中は次々に引退して孫と遊んでる。自民党員の爺さんどもって議員経験のあるなしに関わらず逃げるんですよ、そういう姿勢を批判したら『老人をいじめるな』です。年金暮らしでトンズラ、現役時代はあんだけ自民党でなければ人でなし、みたいに言ってたのにね」 彼は自民党員だが代々の仕事の関係で仕方なく党員をしている。それを差し引いてもこういう若手(政治の世界で言うところの若手)もまた本当に増えた。実際、いろいろあって勤め人になった途端に自民党員を辞めた筆者の知人もいる。その程度とはいえ、その程度こそこの国の自民党政権を支えきたとも言える。 「ある意味、日本人向きの党なんですよ。なあなあで空気読んで長いものに巻かれて寄らば大樹、生かさず殺さずでも日々を楽しめればいいってね」 あくまで彼の見解だが日本、一般国民の疲弊と次々に脱落する中間層という明らかな衰退でそうも言ってられなくなってしまった。賃金は上がらない、物価は上がり続ける、税金や社会保険料は天井知らずで野放しのまま〈その他の方々には一人2万円〉では、そりゃあ右も左も関係なく反発するに決まっている。自民党、それがわからないというのはそうとうにヤバい。 保守系無所属の地方議員は「自民党の推薦はお断りした身」としてこう話す。 「年齢とかじゃなく時代についていけない人たちの集団ですよ。それも多くは統一教会にペコペコしたり裏金せっせとみんなで作ったりがバレたもんだから『どう立ち回るか』しか考えてない」 そうでない自民党関係者もいるのだろうが、そもそも失われた30年だ40年だのほとんどは自民党政権である。引退で悠々自適の年金ぐらし、死んで墓まで悪事を持っていった者もある。そういう議員に仕事をもらっていた多くの会社経営者や自営業者もそうだろう。しかし先の30代自民党関係者の言う通り、残った若手はツケを払わされるだけ、それも30代や40代となるとたいした旨味もなかったろう。 「ぶっちゃけ自民党、賞味期限切れですね。消費期限切れか。党内で嫌われ者の石破さんを首相にするしかなかった時点でもう『どうにでもなれ』じゃないですかね、党員の平均年齢も高いし、若い(小泉)進次郎にするなら石破、そのレベルに堕ちた」 「党員増やせって無理だよ」 党員の高齢化は自民党に限らずどのオールド政党も深刻な状況にある。あと10年で党員がほぼ消えるのでは、という危惧は冗談でなく、筆者の旧知の政治記者曰く「20代で自民党の議員とか、いまのうちに議員になっておいて先々は自民党じゃないとこで旨味を味わう算段なんでしょう」と、ある20代国会議員について揶揄していたが筆者も同意見である。わざわざ自民党を選ぶ若手の中には左右の問題でなく上下の問題とわかって選ぶ者もいる。 実のところ国や民なんてどうでもいい、「金だけ地位だけ自分だけ」上下の上で良い暮らしと民を見下す地位があればいいと、それまでせっせとNPOとかやってメディアで顔を売る。大政党に気に入られれば比例名簿の上位、ゾンビ当選でも議員様は議員様だ。 自民党議員の秘書経験もある40代自営業者はこう笑う。 「絶対に腹の中は見せないでしょうけどそのレベルですよ。これまでも反共だ自由主義だなんて口ばかりで自分らの良い暮らしと地位、そのとおりです。選んできた国民、いや選挙に行きもしなかった連中のせいでもあります」 それにしても自民党、本当にリアルで評判が悪い。ネットで悪口を言われている、と自民党議員はよく愚痴をポストするが、むしろネットというかSNSのほうが優しいレベルではないか。 「それに保守と言ってもいまや自民党以外に受け皿が続々出てきていますからね、彼らからすれば、むしろ自民党なんてどこが保守かと。そりゃそうです、今回だって2万円配るしかできないってバレた。それも自民党に票を入れてくれて自民党が勝ったら2万円配りますなんて、むちゃくちゃですよ」 今回、野党系や革新系の関係者は個別に取り上げていない。というか彼らにわざわざ政権批判を代弁させる必要がないほどに、保守全体どころか身内の自民党関係者にすら評判が悪く、いくらだって愚痴や苦言が拾える。 自民党の支持層の多くは地方の中小企業経営者や従業員、自営業者とその関係者、家族(一族)などが多いとされるが、彼らの生活もそうとうに厳しくなっている。物価高と燃料費の高騰、税金や社会保険料に加えてインボイス、ある九州の自民党関係者は「党員増やせって無理だよ、金払って自民党に入る人なんかいないよ、意味ないもん」とそれこそぶっちゃけていた。 思えば自民党、2万円配ることが参院選の公約ということは、もうそれしか売りのない政党になってしまったということか。そんな自公イコール日本国政府ということに恐ろしさすら覚えるが、肝心の「自民党に代わる政党」が出てこないという意見もずっとある。 「自民党なんか保守じゃない」になってしまった 筆者の恩師、かつて地元の大物保守系議員を支えてきた80代の元大学教授はこう語る。 「政党は国民が育てるものだ。一回やらせてみようじゃなく、何度もやらせてみようで育てる。そりゃ痛みはあるが、そもそも既存の腐った政党に政権を握らせていても痛みばかりなのは変わらない。右でも左でも、新興政党は現代人に適った政策を出してくれる。昭和平成の感覚の政党なんて既得権で生き延びているだけだから、上下の問題になるのは当然の話だ」 右だろうが左だろうが権力に長くあればそれは左右でなく上下の上になる。ドイツもイギリスも新興右派政党が台頭どころか政権に近づきつつある。イタリアはすでに右派政権が誕生した。かつての反マルクス主義だ、コミンテルン打倒だの保守でない、自国民の生活を第一に考えるというシンプルな保守のスローガンがヨーロッパを席巻している。これまでの金権腐敗の既存政党や移民優遇で自国民に我慢を強いた結果とされる。 この新興保守勢力の台頭は、貧乏な国がフリーライドしているとされるEUで「お前は金があるだろう」と負担ばかりの先進諸国民のシンプルな回答であった。「かわいそうな貧しい国から来た移民を排斥するな」「豊かな国の側こそ他宗教に寛容であれ」「人類みな兄弟」というインテリ層の意見はことごとく聞く耳を持たれなかった。フランスは極右政党の失態もありなんとか踏みとどまったが、アメリカはもちろんヨーロッパ諸国すらこの流れを止めるのは難しいだろう。 日本でも是非はともあれこの流れが加速している。だから現役世代を中心に「自民党なんか保守じゃない」になってしまった。1980年代の中曽根康弘内閣の外国人留学生10万人計画から2023年の岸田文雄内閣の外国人留学生40万人計画とそれを主導してきたのは保守本流を標榜してきた自民党である。 そうした新興保守勢力を支持する人々の「なぜ、まず私たち日本国民のことを考えてくれないのか」はそれこそシンプルな願いだろう。「そんなに移民が可哀想なら都心の一等地にあるバカでかい社屋に住んでもらえ」と大手新聞社が言われてしまう、彼らリベラルメディアの人気のなさも自民党に負けていない。上下の問題で言えば自民党もリベラルメディアも収入面では「上」なのだから。重ねるがいまや左右の問題ではなく上下の問題である。 いつしか自民党は国民を本当に下(げ)に見て、若手すら世襲議員が家系図で家柄を誇ったり、青年局がSM緊縛パーティーを開いたりと変な人たちばかりになった。裏金は「自民党だから」国税すら動かない、ところどころ脱税どころかほぼ脱税でも動かない。自民党だから。そう思われている。 石破首相は3月、自民党の新人議員に対して一人10万円を配った。すっぱ抜かれて全員が返却したが石破首相、人気のない王様ゆえに施しが大好きらしい。自民党関係者によれば当初は国民に対しても一人10万円の案だったがコロナ禍に実施した10万円バラマキを思い出させるからと却下になったそう、やはりバラマキではないか。 参院選で票を入れて勝たせてくれたら自公政府という「上」が施してくれる2万円、ミスリードでなくシンプルにそういうことだろう。ということはついに自民党は一人2万円の価値しかなくなったのかと、かつて米ソと渡り合ったころの強い自民党をギリ知る身としては寂しい限りだが、確かに本当の「消費期限切れ」が近づいているのかもしれない。 7月の参院選の前哨戦とされる都議選、自民党は過去最低の21議席で惨敗となった。自民党都議にも裏金問題が噴出し非公認となった議員も多いが、その裏金議員が無所属として当選してすぐ追加公認する行為に批判が集まっている。もう開き直っているとしか思えない。とりあえず2万円の効果は都民に効かなかったようだ。むしろ都議選前日にガソリン減税法案を事実上の廃案に追い込んだツケが加わってしまった。それで都議会127議席中のたった21議席、大惨敗である。 次は参院選、結果はともあれ自民党の大敗も、自民党が一人2万円で踏みとどまったとしてもそれは国民の選択、日本はそういう国というだけしかない。そして投票率が半分いけばいいほうという傾向が参院選もそうなら、これまたそういう国と、そういう国民ということになってしまう。 どちらを選ぶにしろ、選挙は行こう。都議選は47.59%、前回より増えたとはいえ都民の約半分が投票すらしない。都民を笑うなかれ、日本人は前回の参院選(2022年)だって53.85%で国民の約半分が投票すらしなかったのだ。心の底からナメられないために、必ず選挙に行こう。 日野百草(ひの・ひゃくそう)/1972年生。出版社勤務を経て、内外の社会問題や社会倫理、近現代史のルポルタージュを手掛ける。日本ペンクラブ広報委員会委員。
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