日本文学を世界に紹介したドナルド・キーンさんが、埼玉県草加市に残した足跡をたどる展示が２４日、草加市文化会館敷地内の文化施設「漸草庵(ぜんそうあん) 百代(はくたい)の過客(かかく)」で始まった。 「ドナルド・キーン先生と草加のゆかり展」と題した展示では、２０１９年に９６歳で亡くなったキーンさんが書斎で使っていたワープロや辞書といった仕事道具や、直筆原稿、パネル写真など約４０点が展示されている。 会場ではまた、松尾芭蕉の魅力と「奥の細道」の価値について、キーンさんと俳人の黒田杏子(ももこ)さん（２０２３年死去）が草加市で対談した際の音声の一部も公開されている。対談は２０１４年、草加市主催の「第１回ドナルド・キーン賞」と「第７回奥の細道文学賞」の授賞式を記念して行われた。 「直筆原稿と再現された書斎を見ていると、まるで父がここにいるようです」。開幕に合わせて会場を訪れたキーンさんの養子、誠己さん（７４）はそう話した。「父は畳が好きでしたので、和建築の畳の部屋で鑑賞できるのもいい」 キーンさんは若いころから長年、「奥の細道」を研究し、作品を翻訳して世界に紹介した。江戸から北上した芭蕉は、その途中、草加松原を歩いている。キーンさんはこれが縁で、草加市の二つの賞の創設にかかわり、２０１９年にオープンした漸草庵を命名した。 展示は、３０日まで。開館時間は、午前１０時から午後４時まで。入場無料。漸草庵では、抹茶と上生菓子のセット（８００円）が期間限定で販売されている。菓子は、キーンさんが幼少期にかわいがっていた愛犬がモチーフになっている。
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