160キロの剛速球を封じた「佐々木朗希」はメジャーで成功するか…“ガラスのエース”にロッテOB投手が「マイナー行き」を勧める理由

 第2回【ドジャース首脳陣が「痛みはない」と断言も「佐々木朗希」はなぜ復活できない? ロッテOB投手は「ケガとうまく付き合った経験がない」と指摘】からの続き──。ネットメディアのドジャース・ネイションは5月9日、「なぜロウキ・ササキは160キロの球をもう投げないのか、ドジャースの投手コーチが明かす(註)」との記事を配信した(全3回の第3回)  *** 【写真】目元がソックリ? 佐々木朗希と同じく地元・大船渡高校で活躍した、弟の佐々木怜希選手。兄のメジャー挑戦と時を同じくして中央大学に進学  ロッテ時代の佐々木朗希(23)は160キロの剛速球を連発し、日本の野球ファンを熱狂させていた。ところがドジャースに移籍すると、素人目にも分かるほど球速は落ちた。 佐々木朗希  なぜ佐々木の球速は150キロ台になってしまったのか。記事の中でドジャースのマーク・プライアー投手コーチ(44)は「160キロ台の球を投げられるよう我々もサポートしていたが、制球力に悪影響を与えることが分かった」と説明している。  佐々木も取材に応じ、「他の球種を混ぜて、制球力さえしっかりしていれば、メジャーリーグの打者をアウトにできると感じている」──と意欲を見せた。だが今のところ、佐々木はメジャーの打者を完璧に打ち取れてはいない。  野球解説者の前田幸長氏はロッテ、中日、巨人の3球団で投手として活躍。先発、中継ぎ、クローザーの全てを経験した。2008年には渡米してレンジャーズとマイナー契約。3Aオクラホマで36試合に登板したため、アメリカの野球事情にも詳しい。  前田氏は「何らかの事情があって、佐々木投手は開幕前の時点で160キロの速球で打者を打ち取るというベストの投球はできないと判断していたのでしょう」と言う。 「無理をするな」の野球人生 「そのため佐々木投手は速球を諦め、スライダーとフォークのコンビネーションで相手バッターを打ち取っていく計画を立てていたのだと思います。しかし相手はメジャーの強打者ですから、球威が乏しいスライダーではやはり打たれてしまいます。マイナーチェンジで乗り切ろうとしたものの、それは上手くいかなかったというのが現状です」  なぜ佐々木は持っているはずの実力を、メジャーの大舞台で発揮できていないのか。その原因を突き詰めていくと、アマチュア時代に遡るという。 「僕も少年野球の指導に携わっているので自戒を込めて言うのですが、ピッチャーの子供たちには常に『無理するなよ』を繰り返しています。きっと佐々木投手も小学生の時から『無理するなよ』と言われ続けてきたはずです。特に彼は高校時代に“日本球界の宝物”のような存在になってしまいました。確かにアマチュアの選手に無理をさせないことは意味があると思いますが、佐々木投手の場合はプロの世界でも『無理をさせないこと』が指導方針になってしまったのです」(同・前田氏)  佐々木はあまりにも大切にされすぎたまま、ドジャースに移籍することになった。 投げない投手が増加中 「長い投手人生を歩むためには痛みや不調と上手に付き合っていく必要があります。ところが佐々木投手はロッテの5年間で一度も規定投球回数に達しませんでした。あまりにも大切にされすぎて、常にケガをする手前で投球を回避させられてきたのです。これではケガや不調とうまく付き合うという経験が得られなくて当たり前でしょう。自分の限界を知り、体の違和感をごまかしながらローテーションを守り切る方法を学べなかったわけです」(同・前田氏)  前田氏によると、「無理するな」という指導が続いてしまったのは、佐々木という稀有なピッチャーだからこそ起きた問題ではある。だが、その一方で、最近ではプロ野球の現場でも増えている現象でもあるという。 「プロ野球の場合は指導者ではなく、選手に増えている現象です。肩を消耗しないという理由から、春のキャンプでは2日連続で投げない投手も増えてきました。僕もキャンプ地で取材したのですが、必ずしも首脳陣は『投げるな』と言っているわけではないです。むしろ時と場合によっては『たくさん投げ込んでほしい』と投手コーチは心の中では思っている。でも言えない。投げろと指示して肩が壊れたら、『責任を取ってください』と言われるのが怖いからです」(同・前田氏) 150球を投げ込むメリット  だがピッチング練習の原点を考えると、前田氏は「試合で100球を投げるためには、練習で120球から150球は投げる必要があります」と言う。 「練習と試合では本気度や緊張感が全く違います。そのため練習は試合の時より球数を増やす必要があります。徹底的に投げ込むメリットはあります。試合で100球を投げるプロセスを体験するためには、100球以上を実際に投げるしかありません。さらに投球練習ではバッターがいないので、投球動作を延々と反復することになります。こうすることで正しいフォームを体にしみ込ませることができるのです」  こうした練習法は、佐々木の“復活”を考える上でも参考になる。アメリカでも「佐々木はマイナーに落とすべきか」という報道やSNS上での議論が盛んだ。 「絶対に佐々木投手はマイナーに行くべきだと思います。僕も3Aで投げた経験がありますが、非常に苛酷な環境です。そして、だからこそ、マイナーの経験は佐々木投手の殻を打ち破るだけの実りをもたらす可能性があります。何しろ自分の限界を見極めるには最適な環境ですから」(同・前田氏) 意外に肩は壊れない  前田氏は「肩は消耗品であることは紛れもない事実ですが、そう簡単に肩は壊れないということもまた事実なんです」と笑う。  少年野球で球数制限は絶対に必要だとしても、プロの世界なら負荷をかける練習にも意味はある。最先端のスポーツ医学を上手に活用しながら、かつての練習法のメリットも取り入れるべきではないか──前田氏は、そう提案する。  第1回【佐々木朗希「60日間の負傷者リスト」入りで“今季絶望”か…ロッテOB投手は「新人賞どころか1シーズン投げ切れるか不安だった」】では、菅野智之、千賀滉大、山本由伸の3人に比べ、佐々木には何が足りないか、詳細に報じている──。 註:Dodgers Pitching Coach Reveals Why Roki Sasaki Isn’t Throwing 100 MPH Anymore(Dodgers Nation:5月9日) デイリー新潮編集部

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