脂質を減らすとぶよマッチョになる…筋トレ、ダイエットで間違える栄養の摂り方

食後に眠くなったり、ダルさを感じたりする。集中力が途切れたり、イライラしたりして仕事の効率が落ちる。十分食べたはずなのに、すぐにお腹が空く。 こうした自覚症状には要注意。時間をおいて糖尿病からの病気連鎖を招きかねない「糖質疲労」という症状になっているかもしれず、糖質を控える生活に変える必要があります。 その分、必要なのがたっぷりと脂質を摂ること。世界の最新医学を根拠に「油は健康に悪い」「油は太る」という常識を覆す健康のヒントが詰まった、医師で北里大学北里研究所病院院長補佐 糖尿病センター長の山田悟さんの新著『脂質起動』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けします。 脂質起動で「代謝」が上がる 糖質を多く摂り、脂質を控える食事をしていると、疲れやすく、太りやすく、病気になりやすくなります。それを180度変えるのが、脂質を摂ることでからだの脂肪が燃えやすいからだに変わる「脂質起動」です。 糖質を控えて脂質摂取を増やすと、脂質起動が起こります。脂質起動ができれば、疲れにくく、太りにくく、病気になりにくいのです。 食事をすると、からだの中で栄養素を処理するためにエネルギーが使われます。これは食べ物を消化・吸収する過程で消費されるエネルギーのことで、「食事による熱産生」と呼ばれています。 この熱産生は食べ物の種類(栄養素の種類)によって違うことがわかっています。 ハーバード大学の研究では、脂質を多く食べる(糖質を控える)グループでは、糖質を多く食べるグループ(脂質を控えるグループ)よりも1日約300キロカロリーも多くエネルギーを消費していたことがわかりました[*JAMA 2012; 307: 2627-2634]。 これは30分程度の速歩きに相当するエネルギー消費量です。これが積み重なれば、体重管理にも大きく貢献するでしょう。 また、一食ごとの比較をしてみると、糖質を控えたグループでは、食後のエネルギー消費が一度下がった後、約3時間後に再び上がるという興味深い現象も見つかりました[*PLoS Oon 2013; 8: e58172]。 これらの科学的な証拠から、糖質を控えて脂質をしっかり摂る食生活を続けると、エネルギー消費量が底上げされて、太りにくい体質に変えていくことができると言えるのです。 長い間「太る原因」として悪者扱いされてきた脂質ですが、実は健康を支える大切な栄養素なのです。 1. 食べすぎを自然に防ぐ 2. からだの余分な脂肪を減らす手助けをする 3. 代謝を上げる というのが脂質のもたらすはたらきです。脂質は私たちの健康の味方なのです。年齢を重ねても活力あふれるからだづくりに、脂質をしっかり摂る生活をご提案しています。 脂質を減らすと“ぶよマッチョ”になる 脂肪を減らし、筋肉をつけるために、ジムで筋トレやランニングに励んでいる人もいらっしゃるでしょう。 筋肉をつけたり、減量しようとしたりするとき、脂肪を減らすために脂質を控え、筋肉をつけるためにたんぱく質を摂る食事が一般的に勧められがちです。 それを信じて「低脂質&高たんぱく質」な食事をしている方も多いのではないでしょうか。牛乳などを精製したパウダー状で低脂質の「プロテイン」をせっせと飲んでいる人もいらっしゃるでしょう。 日本人のたんぱく質摂取量は、食糧が乏しかった1950年代と同レベルと少ないことがわかっていて[*www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html]、プロテインを活用してたんぱく質量を増やすことには反対しません(本来は、やはりお肉・お魚・大豆食品・卵・チーズなどおいしいお食事の中で摂取したいところですが)。 普段トレーニングをしていない人であっても、たんぱく質の摂取が不十分となるお食事の際には、プロテインでたんぱく質摂取を補うのも悪くはないでしょう。 しかし、低脂質&高たんぱく質がいいと盲信して、プロテインのみに頼ったり、サラダチキンや牛豚のヒレ肉など、脂質の少ないものだけでたんぱく質を摂ろうとしたりするのは、筋トレ効果を考えると「もったいない」方法です。 体脂肪を絞り、筋肉をつけた“細マッチョ”体型に憧れてジムトレーニングに励んでいるのに、脂質摂取が不足し、糖質摂取が過剰であるがために、体脂肪が落ちず、筋肉も思ったようにつかない残念な“ぶよマッチョ”体型になってしまう恐れがあるのです。 脂質を摂るとインスリンの分泌が抑えられます。その結果、脂肪を合成する酵素の働きが弱まり、脂肪を分解する酵素の働きが活発になります。それによりからだの脂肪が落ちやすくなります。ここで脂質を減らすと、脂肪はうまく落とせません。 加えて、低脂質&高たんぱく質に偏り、脂質を減らして摂取カロリーが落ちると、プロテインやサラダチキンなどで摂ったたんぱく質が効率的に筋肉に変わってくれないことも大きな問題です。 運動でカロリーを消費すると、普段以上にエネルギー源が必要となります。通常は筋肉などの材料となるはずのたんぱく質が、不足したカロリーを補うために仕方なく燃焼し、エネルギー源とされてしまうため、筋肉に転換されなくなってしまうのです。 脂肪は減らないし、筋肉もつかず、これでは“ぶよマッチョ”ならぬ“ぶよッチョ”へまっしぐらです。 糖質を制限すると、代わりに脂質がエネルギー源に トレーニングに励む割に筋肉がつかないというお悩みがあるなら、たんぱく質を増やすだけではなく、糖質を控えて脂質を増やし、カロリーを着実に摂りましょう。 筋肉となるはずのたんぱく質がエネルギー源として燃えてしまったかどうかは、健康診断などの指標から推測できるポイントがあります。「尿素窒素(BUN)」の値が高めなら、摂ったたんぱく質が無駄に燃えている恐れがあります。 尿素は、たんぱく質が分解されて生じる最終産物で、その値が基準値より高い場合には、(腎臓の機能が低下している場合は別ですが)摂ったたんぱく質が燃焼している可能性があると考えられるのです(例外は消化管出血です)。 からだを鍛えようという人こそ、脂質もたんぱく質もたっぷり摂り、摂ったたんぱく質を効率的に筋肉に変えて“細マッチョ”をめざしてください。 中には「糖質は運動のエネルギー源として大切だ」という考え方から、糖質を減らすことに抵抗がある方もいるでしょう。でも、それは誤解です。 糖質を制限すると、代わりに脂質がエネルギー源になってくれますから、何ら支障はありません。 むしろトレーニングの質が上がり、からだづくりの追い風になってくれます。 【もっと読む】『脂質は肥満の直接原因ではない…糖質を減らし、脂質を摂ると「健康」になるワケ』 【もっと読む】脂質は肥満の直接原因ではない…糖質を減らし、脂質を摂ると「健康」になるワケ

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