ともに１９６２年生まれ、一度見たら忘れられない個性、抜きんでた演技力でも共通する佐藤誓（ちかう）と山西惇が、演劇ユニット「らんぶる」を結成した。 　第１回公演は福原充則作・演出の新作「晩節荒らし」。合わせて３０人以上を演じ分ける、一筋縄ではいかない２人芝居だ。（山内則史） 　発端は２０１８年、ミュージカル「生きる」での初共演（２０年に再演）だった。山西は市役所の助役、佐藤は総務課長を演じ、意気投合した。「もうちょっと芝居で一緒にやりたい」と考えた佐藤が２２年１月、新年のあいさつをＬＩＮＥで交わした際、「２人でやってみない？」と持ちかけ、山西は楽しそうだなと思い「いいですよ」と応じた。 　「ちょうど還暦の年で、コロナの時期。この先、何本芝居ができるんだろうとか、色々思うことがあり、やりたいと思うことは、やってしまった方がいいなと思った」と佐藤は振り返る。 　だが、そこからが大変だった。佐藤は花組芝居、山西はそとばこまちと、共に長く劇団に所属したが、「自分で何かを発足させた経験はない。まず何から始めたらいいですかね、と相談できる人を探すところから始めるしかなかった」と山西は笑う。 　前に進まず、行き詰まってきたころ、幸運にも恵まれた。山西が新宿へ芝居を見に行くと、偶然、隣に旧知の福原が座った。「『誓さんとユニット組もうと思ってるんだけど』と言ったら『面白そうですね』と言ってくれて、『ちなみにこの時期どうしてる？』って、その場で聞いた」。２人ともファンという福原から後日、ＯＫの返事があり、ついに企画が動き出した。 　佐藤は「福原君に『今、興味があることは何ですか？』と聞かれ、僕は老いとか、死とかかなあ、と答えた」。できあがった台本は「大変そうだけど、面白そう」。６０歳を過ぎてノウハウもなく選挙に立ってしまう男と、大学の４年間つきあった女性のアパートを４０年ぶりに訪ね、彼女の消息を追ってしまう男。場所や状況が移り、様々な人物が絡み合いながら物語は進む。 　２人は、めまぐるしく役柄を変えていく。「一回引っ込んで衣装を替えて別人で出てくるんじゃなく、途中でその場で変えていく。６３歳を前にして今、初めてのことをやっている」と佐藤。「演劇には演じる芝居と語る芝居があって、これは完全に語る芝居だなと思う」という山西は、「２人でやる落語みたいなイメージを持ちつつやっている」。 　らんぶるとしての夢は？　佐藤は「第２回以降もやりたいな」。山西は「確実に年を取るので、お互いに衰えていった中で何が生まれてくるかに興味がある」。今回は「よくこんなことやってたよね、と言える作品にしたい」と佐藤が付け加えた。 　７月２〜９日、東京・新宿シアタートップス。（電）０５７０・００・３３３７。