公明党「聖地での歴史的敗北」が予言するすぐそこにある「終焉」…支持母体・創価学会の高齢化、4年得票数15%減が止まらない

新宿区、大田区での落選がなぜ衝撃か 2025年の東京都議会議員選挙が終わった。自民党の歴史的大敗が伝えられるとともに、公明党が36年ぶりに議席を落としたことが話題になった。 公明党は3議席落としたが、その選挙区は新宿区と大田区であった。新宿区の信濃町には、公明党の本部がある。お膝下で落選したことになる。 大田区は、公明党の生みの親である創価学会の元会長、池田大作氏の生誕の地である。大田区の公明党は2名の候補者を立てたが、ともに落選した。 大田区が池田氏ゆかりの場所であることは、一般のニュースでも伝えられたが、そこは、創価学会を生み出すことになる日蓮信仰、あるいは日蓮主義が戦前から盛んだった地域である。もちろん、候補者を1名に絞っていれば当選していたであろうが、定数は7名とかなり多い。しかも、公明党の候補者は1名は次点だったが、もう1名はその次でもなかった。得票数も2万票を下回った。 公明党にとって、この結果は大変にショックだったようで、選挙戦略の見直しを示唆したりしている。だが、最大の支持母体である創価学会の会員の高齢化は相当に進んでおり、次の選挙で勢力を回復させる見通しはまったく立っていない。7月には参院選があり、そこでも、前回の参院選に比べて票を減らすことが予想される。 公明党にとって前途は暗澹たるものである。しかも、将来を予想してみるならば、いったいいつまで公明党は政党としての体をなしていられるのか、それさえ疑問になるような状況に立ち至っている。 人間にとって死を免れることができないように、政党もいつかは必ず死滅していくものなのだろうか。そんな感慨さえ抱かせる。 4年間で得票数15%減という現実 都議選が行われる一週間前、兵庫県の尼崎市議会議員選挙が行われた。尼崎は創価学会が非常に強い地域で、今回の選挙でも、公明党は42名の定員のうち12名を当選させている。 公明党では、候補者を全員当選させることを「完勝」と呼び、どの選挙でもそれを目標としているが、今回の尼崎はまさに完勝だった。しかも、12名も当選させているのだから第1党である。 しかし、その内実を見てみるならば、公明党にとって今回の結果は決して喜べるようなものではなかった。というのも、前回の2021年の市議選では、やはり12名当選の完勝で、全員で4万4045票を獲得していたのに対して、今回は3万7293票しか獲得できなかったからである。 市議選は4年に1度行われるものである。その4年間に、尼崎市の公明党は15パーセントほど票を減らしたことになる。 この15パーセント減という数字はとても重要である。というのも、今回の都議選で、公明党は前回に比べて10万票減らしており、やはり15パーセント減だからである。 私は、ここのところ地方議会の選挙における公明党について見てきたが、どの選挙においても、公明党は10パーセントから20パーセント票を減らしており、15パーセントはその平均値になる。 議席ということになれば、公明党はきっちりとした区割りをしており、また、状勢がかんばしくないとなれば、候補者の数を減らすので、勢力が衰えているかどうかがわかりにくいことが少なくない。しかし、全体の得票数には明らかに陰りが見えており、党勢の衰えは明らかである。 4年ごとの選挙で得票数が15パーセントずつ下がっていく。それが、現在の公明党のおかれた状況であり、この傾向は今後も続いていくものと予想される。 2029年の都議選では9議席? となれば、これからどうなってしまうのだろうか。 次の都議選は2029年に行われる。随分と先の話になるが、そこでも今回の選挙から15パーセント票を減らしたとしたらどうなるのか。今回当選した公明党の候補者について、一律15パーセント票を減らしたとしたら、落選する候補者はかなり出てくることになる。 今回の都議選で、公明党は足立区でも2名の候補者を立て、こちらはどちらも当選している。しかし、次回も2名を立てれば、とも倒れの可能性が極めて高い。 大田区では、今回の結果を踏まえて候補者を1名に絞れば、その1名は当選するだろう。そのように見ていくと、当選しそうなのは、足立区と大田区の他には、江戸川区、葛飾区、品川区、練馬区、杉並区、世田谷区、それに創価大学のある八王子市に限られる。いずれも当選者は1名で、全部で9議席にしかならない。 今回は19議席だから、10議席も減らすことになる。半減である。 都議選は、創価学会が組織のなかに文化部というセクションを設け、はじめて選挙に出た地域である。その分、公明党の中で都議会は特別な重みを持っている。 しかも、次のような事情もある。 公明党が1964年に結成され、67年に初めて衆院選に臨んだ。ところが、66年に「黒い霧事件」によって多数の自民党都議が逮捕され、公明党が主導して都議会は解散に至った。そのため都議選となり、公明党は23人を当選させたのだが、その中にいたベテランの都議が衆院選に出られなくなってしまった。そこで、公明党の中では、都議の方が国会議員よりも主導権を握るという事態が生まれた。それも、都議会の重視に結びついた。 それが、次の都議選では10議席以下に落ち込む可能性が高いのである。 比例区400万票台の可能性 2023年12月31日現在で、全国の都道府県議会議員の総数は2644人である。そのうち、公明党は206名を占めている。 他の都道府県でも4年で得票数が15パーセントずつ減っていくならば、公明党の都道府県議会の議員数は減っていくことが予想される。 ただ、無投票の場合も多く、そもそも候補者の数が少ないので、公明党はしばらくの間は議席数では現状を維持できるだろう。だが、問題は国政選挙の場合である。 7月の参院選はどうなるだろうか。 今回の選挙は2019年に改選された議席が対象になる。こちらは6年経ったことになる。19年の参院選で、公明党は選挙区と比例区でそれぞれ7名ずつを当選させている。総計14議席である。 6年なので、22パーセント程度票を減らすと仮定するなら、定数が3の兵庫選挙区では、立憲民主党に議席を奪われ、落選する可能性が十分に考えられる。他の選挙区では当選の可能性が高い。 だが、比例区では約653万票だったのが500万票前後に落ち込む可能性がある。400万票台になっても不思議ではない。となれば、比例区は5議席程度にとどまるのではないだろうか。 公明党は2010年の参院選比例区で763万票を獲得した。13年は756万票、16年は757万票、そして、19年が653万票である。22年は618万票だった。 公明党は自民党と連立を組んでおり、参院選の際に、公明党が選挙区の自民党候補者を応援し、その見返りに自民党の候補者が「比例は公明党」と宣伝することも多かった。その分、公明党は自力以外の部分で票を増やしてきた可能性があるが、頼みの自民党も票を稼ぎ出せなくなっている。400万票台まで落ち込む可能性が考えられるのは、そのためでもある。 もしも400万票台まで落ち込んだならば、公明党にとって大ショックかもしれない。しかしそれは十分に予想されることである。決して意外な結果ではない。 「風」を受けることも出来ない 他の政党であれば、何らかの風が吹くことで浮動票を取り込み、票を増やすこともできる。公明党の最大のライバルとされてきた共産党にはそうした性格がかつてはあった。 しかし、公明党の場合、創価学会員という強固な支持母体はあっても、またそうであるがゆえに、浮動票を取り入れることは期待できない。今後、創価学会の会員が増えていく見込みもまったくなく、支持母体はやせ細っていくしかない。 1969年に、創価学会と公明党は、自分たちを批判する出版物に対して圧力をかける「言論出版妨害事件」を起こした。その結果、創価学会と公明党との政教分離をはからなければならず、公明党の議員は創価学会の幹部の職を退いた。その際に、公明党は大衆政党への脱皮を目指すことになったのだが、それは無理なことだった。結局、選挙は創価学会頼みのままとなってしまったのである。 そのつけが、今になって回ってきたことになる。これから、本格的な大衆政党に脱皮しようとしても、それは不可能である。すでに政党をめぐる状況は大きく変わり、自民党でさえ存続が怪しくなってきている。有権者は、次々と現れる新勢力に目移りし、公明党には目を向けない。 今回の都議選は、そして次の参院選は、「公明党の終焉」を予告するものなのかもしれないのである。 やっぱり石丸伸二は”オワコン”なのか…議席ゼロ「再生の道」が見誤った「都議選の罠」

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