67年前に病院で取り違え“生みの親”捜し続けた男性の20年「真実を知りたい。父母のヒストリーを聞きたい」【news23】

今から67年前、生まれた病院で他の新生児と取り違えられた男性がいます。取り違えの判明から20年以上、生みの親を捜し続けています。「生き別れた生みの親に、一目でも会いたい」と願う男性の思いを取材しました。 【写真を見る】「どっちにも似てない」産院で取り違え 育ての親との家族写真 産院で取り違え「頭の中は真っ白 真実を知りたい」 「こちらにあった病院で、私が生まれたということですよね。そして取り違えがあったということです」 江蔵智さん、67歳。 1958年、この場所にあった「都立墨田産院」で生まれた直後、他の新生児と取り違えられました。 江蔵智さん(67) 「毎年お正月、親戚が集まりますと、お前はどっちにも似てないなとよく言われた」 家族の中で自分だけが長身で一重まぶた。「疎外感を感じていた」という江蔵さんは、14歳の若さで家出をし、飲食店などで住み込みで働くようになりました。 それから25年経った39歳の時、母親が受けた血液検査をきっかけに両親と血液型が合わないことが発覚。 その後、DNA型鑑定をした結果、実の親子ではないことが分かったのです。 江蔵智さん 「私の身体には、両親の血が一滴も流れていないと報告を受けたんですけど、頭の中は真っ白ですよね。真実を知りたい。父母のヒストリーを聞きたい。そこに尽きますね」 東京都に尋ねるも…石原都知事(当時)「隠した方がいいことだってある」 江蔵さんは取り違えの事実を認めてもらい、生みの親を捜してもらおうと、東京都に尋ねましたが…。 東京都職員 「取り違えなんてありえない。でっち上げだ」 相手にすらしてもらえなかった江蔵さんは、2004年、東京都に賠償を求める裁判を起こします。 「裁判所が取り違えを認めれば、東京都が生みの親を捜すことに協力してくれる」 そう考えたからです。 裁判には、江蔵さんの育ての両親の姿も… 江蔵さんの育ての母 チヨ子さん 「取り違えられたというのがあるから悔しい。それも46年間わからなかったわけでしょ。余計悔しくてね」 この裁判で東京地裁は、病院の過失で取り違えがあったことを認めました。 2審の東京高裁も取り違えの事実を認定。 「これで、生みの親を見つけることができる」 江蔵さんの期待は膨らみましたが、当初は調査に協力的だった石原都知事は… 石原慎太郎 都知事(当時) 「相手方の人生にも関わる問題ですから、行政としてはできることに限りがありますね」 東京都は一転、取り違えられた相手のプライバシーを理由に調査への協力を拒否したのです。 石原慎太郎 都知事(当時) 「隠せたら隠した方がいいことだってあるんだ。相手がいることなの、これはね」 江蔵 智さん 「はらわた煮えくりかえったような感じでしたよね。東京都に対する不信感は募る一方でしたね」 「生みの親に会いたい」捜し続けた20年 一軒一軒、訪ね歩き… 納得できなかった江蔵さんは「自分で生みの親を捜そう」と、墨田区の20万人分の『住民基本台帳』を閲覧。 自分と生年月日が近い約80人を選び、一軒一軒、訪ね歩きました。 江蔵智さん 「自分の気持ち、真実を知りたいという気持ち、そういう名簿に頼るしかなかったので、それをもとに捜し歩いていましたね」 それでも、見つけることはできませんでした。 江蔵さんは2021年、再び裁判を起こします。今度は、東京都に生みの親を調査するよう求めたのです。 3年半にわたる審理を経た2025年4月、東京地裁は江蔵さんの訴えを認めました。 焦点は、都側が控訴するかどうかでしたが… 小池百合子 都知事 「都はこの判決を尊重いたしまして、調査を実施いたします」 小池都知事は江蔵さんに謝罪し、控訴断念を表明。 しかし、その日に行われた会見に出席した江蔵さんの表情は曇ったままです。 江蔵智さん 「この20年ずっと月日がものすごく悔しいですよ。すごく悔しいです」 江蔵さんが喜びではなく、悔しさをにじませたのには、理由がありました。 育ての親の「老い」膨らむ期待と不安 江蔵さんの育ての母、チヨ子さん(92)。 認知症を患い、5年ほど前から施設で暮らしています。 江蔵智さん 「おいしい?おいしいですか?」 会話がままならないことが増え、東京都の調査が始まったことが伝わっているのかは、わかりません。 江蔵智さん 「(実の息子に)早く会いたいとは会話ができる時言ってましたけど」 育ての母 チヨ子さん(92) 「会うの?」 江蔵智さん 「もうちょっと早く調べていただきたかったのが本音ですよね。無念だったんじゃないですか」 育ての父親は10年前に他界。取り違えが分かってからの20年間は、育ての親だけでなく、生みの親の「老い」も意味します。 江蔵智さん 「父が他界し、母が認知症を患って、そういう2人を見て、血のつながりのある両親も他界しているのではないか、もう話せないのではないかという思いでいますね」 東京都は5月末、江蔵さんと同じ1958年4月に生まれた人、約200人分の『戸籍受付帳』の写しの提供を墨田区から受けたと発表。 江蔵さん自身も複数回、墨田区に開示請求してきたものですが、毎回、ほとんどが黒塗りでした。 この『戸籍受付帳』の情報があれば、調査は大きく前進することになりますが、調査の進捗について、東京都から連絡はないといいます。 江蔵智さん 「(東京都からの)良い報告を待っている。(私の願いは)当初、『会いたい』『話を聞きたい』ですけども、今は会わなくても知っている方でもいいですから、(生みの親が)どういう方だったのかということを聞きたいです」 入り交じる期待と不安。江蔵さんの願いが叶う日は、来るのでしょうか。 生みの親は?ようやく調査開始 DNA鑑定も 篠原梨菜キャスター: 取り違えがわかってから長い時間が経ちましたが、その間、江蔵さんがどんな思いでいたのかということを考えると、東京都にはきちんと調査を行って誠意ある対応をしてほしいです。 上村彩子キャスター: 20年ですからね。自分のルーツを知りたいと思うのは当然のことだと思います。 江蔵さんの弁護士によりますと、1950〜1970年代にかけて少なくとも32件の取り違えがあったという民間の調査結果があるということです。 東京都の対応は同じ境遇で悩む人の希望になるかもしれないと思います。 篠原キャスター: 東京都は5月、江蔵さんと同じ1958年4月に生まれた約200人分の『戸籍受付帳』の写しを墨田区から取得しました。 今後、この中から男性に絞って戸別に訪問するなどして、江蔵さんと同じ産院で生まれたかどうかを確認し、そこからDNA鑑定を依頼するということになります。 上村キャスター: まだまだ道のりは長いですね。江蔵さんの心情に寄り添ったスピード感のある調査を東京都に期待します。

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