茨城県日立市で行方不明者の男性を見つけ出すなど、県警の嘱託警察犬として大活躍中のトイプードル「アンズ」（メス、１２歳）には、一緒に生まれた３頭の子供がいる。 　次男の「エンジョイ」（７歳）だけはまだ警察犬になれておらず、修業中の身だ。捜索の現場で奮闘する母や兄たちの背中を追って、エンジョイは２０日、警察犬の研修会に挑んだ。（前島弘生） 　県警察学校（茨城町）で行われた研修会は、１０月末に行われる、警察犬として認められるための審査会に向け、トレーニングの成果を披露する場だ。シェパードといった大型犬に交じり、アンズやエンジョイ、長男「エディ」、長女「エリー」の「一家」も指導士らと参加した。 　この日は、においをもとに足跡をたどって遺留品を見つける「足跡追及」と、五つの中から特定のにおいがついた布を嗅ぎ分ける「臭気選別」の２部門が実施された。 　見事に同じにおいを捜し当てる先輩たちに倣うかのように、エンジョイも挑戦。「臭気選別」の部では布を素早く選んで、飼い主で指導士の斉藤良江さん（６１）に向かって全力疾走した。うれしそうに斉藤さんを見上げるも、結果は外れ。その後も３回挑戦したが、慣れない場所に緊張したのか、正解を嗅ぎ当てることはできずに終わった。 　自身も緊張していたという斉藤さんは、「私が動揺したのがエンジョイに伝わったのかも」と振り返りつつ、「練習では成功している。家ではお利口さんなの」と愛犬の努力をねぎらっていた。 　エンジョイはこれまで３回以上、年に１度の審査会に臨んでいるが、いずれも不合格。斉藤さんいわく、審査を模した練習をするなど地道な努力を続けており、将来は母親と肩を並べ、正式に警察犬として活動することを夢見ているようだという。 　県警鑑識課によると、昨年の警察犬の出動件数は１７４件。そのうち約９割が行方不明者の捜索にあたっている。県内には２９頭おり、うち小型犬はアンズ一家の３頭だけだが、トイプードルはシェパードなどの大型犬と比べ、嗅覚などの捜査能力については遜色がないという。須永昇鑑識課長（５１）は「トイプードルは散歩をしているように見えるから、捜索中だと思われにくい」と小型犬ならではの強みを説明した。