障害者や高齢者の介護を支えるヘルパーの不足が深刻です。背景には低いままの収入が。介護崩壊も心配される現状を追いました。 【写真を見る】あなたの介護は誰がする?外国人が頼りに… 深刻なヘルパー不足が招く“介護崩壊”の危機 15年後には60万人不足 名古屋市に住む近藤佑次さん39歳。運動中の事故で首を骨折し寝たきりに。排泄も自分の意思ではできません。 近藤さんの1人暮らしを支えるのがヘルパーの介助。この日の担当はバングラデシュ人の留学生イブラヒムさんです。 (イブラヒムさん)「夜は何時に寝た?」 (近藤さん)「12時くらい」 着替えやお風呂、排泄など生活全ての介助を行います。 (近藤さん)「イブラヒムさん、頭を洗うのが一番上手」 (イブラヒムさん)「うそ、うそ、本当?」 (近藤さん)「本当だよ」 外国人が介護現場の重要な担い手に 近藤さんはいつもイブラヒムさんとのやり取りをSNSに投稿しています。 (近藤佑次さん) 「生活に欠かすことができない。自分の人生においても必要不可欠な存在です。(自分のSNS投稿がきっかけで)介護の業界で働いてくれる、ヘルパーになる人が増えてくれたらいいなという」 イブラヒムさんが勤める介護事業所に登録するヘルパーは112人。そのうち14人が外国からの留学生で、今や介護の重要な担い手です。 (障害者ヘルパーステーション マイライフ西 本田一成 所長) 「(外国人は)増えている。24時間365日ヘルパーを派遣しているので、夜の泊まりなどに率先して外国人留学生が入っていただけるので非常に助かっている。 (Q:人手が足りていない?)足りていないです」 介護職に人が集まらない理由はひとえに「報酬の低さ」だと専門家は指摘します。 (淑徳大学 社会福祉学科 結城康博 教授) 「ヘルパーの賃金は全産業の他の産業に比べると非常に安い。仕事の割には非常に安いので、なかなか なり手がいない」 介護職の賃金は全産業平均より8万円低い 全産業の平均賃金は少しずつ上昇傾向で今38万円余りです。介護職は8万円ほど低く、大きな差があるのが実態です。 (障害者介護のヘルパー) 「その人の生活や、命を預かっているという責任感、社会での変化にアンテナを張りながら、その人が置かれている背景を考える。責任感や意識を高めて仕事をしている。もし上がるなら、(給料を)もう少しもらってもうれしい」 特に深刻なのが高齢者介護の人手不足。これからさらに大変になるといいます。 (淑徳大学 社会福祉学科 結城康博 教授) 「2025年に団塊世代の人が全て75歳以上になった。本来は増やさなければいけない介護職員が、2023年度に前年度を下回っている。明らかに2025年は、介護の需給バランスが大きく崩れる元年で、もしかしたら介護崩壊始まりの年になってしまうのではないかと非常に危惧している」 国の推計では現時点ですでに20万人以上足りない状況ですが、これが15年後には約60万人不足するといいます。 訪問介護ヘルパー「やりがいあるが…」 高齢者の訪問介護をしている、島知子さん48歳。 (訪問介護エイル 島知子さん) 「じゃあ拭くよ。冷たいでね」 「ちょっと待ってよ。くるぶしこんなに赤くなってたっけ?前みたいにかかとのところだけカバーするね」 訪問時間は30分ほどですが、利用者の些細な変化に目を配っています。 (利用者(73)) 「人のオムツ替えたり、ご飯を食べさせてくれたりしないでしょ?普通は。私たちにとって、なくてはならない人ですね」 (訪問介護エイル 島知子さん) 「やりがいはある。誰でもできるようなことに対して、来てくれてありがとねって感謝してもらえる」 やりがいは感じつつ不安なのはやはり給料の低さです。 (訪問介護エイル 島知子さん) 「職種として給料が良くないと若い子たちが入ってきてくれない。新しいヘルパーを育てておかないと自分が介護難民になってしまう。それは困るなと」 介護崩壊を防ぐ政策は待ったなし 国は介護職の処遇改善を打ち出しながらも、訪問介護は利益率が高いとして報酬を約2%引き下げる改定を行いました。仕事を増やさないと収入は維持できなくなっています。 (訪問介護エイル 島知子さん) 「自分が施設に入れるようなお金を用意できるのか心配。自分の将来も不安になる」 (島さん)「足はどう?当たっている感じしない?」 (利用者)「うん 大丈夫」 「やりがい搾取」とも言える現状をどうするのか?介護の崩壊を防ぐ政策は待ったなしです。 (利用者) 「本当に助かっている。毎日生かされてる。でないと、たぶん死んでいる」 (記者)「これからも頑張れそう?ですか?」 (訪問介護エイル 島知子さん) 「これからも頑張れそうです。(利用者に向けて)これからもね。一緒に頑張っていきましょうね」