「テロリストたちがのる経済制裁リストに…」トランプ政権の制裁でICC判事が涙、“法による平和”を阻む大国の壁【サンデーモーニング・風をよむ】

トランプ政権による突然のイラン攻撃で世界が大きく揺れ動く中、戦争犯罪などを裁く国際刑事裁判所(ICC)の所長が、その思いを語ってくれました。 【写真を見る】「圧力に服してはならない」語るICC赤根智子 所長 トランプ政権による制裁 憤るICC所長「こんなことが許されていいのか」 トランプ大統領(25日 オランダ・ハーグ) 「あの攻撃が戦争を終わらせた。広島や長崎をたとえにしたくはないが、本質的に同じものだ」 イラン攻撃を正当化するトランプ大統領。 ヘグセス国防長官(26日 国防総省) 「アメリカがどれほどすごいのか語ろう。こんな能力を持っているのは、 私たちだけなんだから」 自分たちの攻撃を誇示するアメリカ。 しかし今回の攻撃については、「国際法違反」と批判する声も上がっています。 こうした中、今回の攻撃に注目したのが、戦争犯罪などを裁く「ICC=国際刑事裁判所」の赤根智子所長です。 ICC(国際刑事裁判所) 赤根智子 所長 「手っ取り早く力と力で処理してしまうような動きが、徐々に力を増しているのではないか」 現在、ICC は判事 4人が、トランプ政権からアメリカ国内の資産を凍結されるなどの制裁を受けています。 その理由は、ICCが2024年11月、戦争犯罪や人道に対する罪の疑いで、イスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を発行したことなどにありました。 ネタニヤフ首相(2024年11月) 「イスラエルはこの(逮捕状発行)決定の妥当性を認めない」 今回、インタビューに答えてくれた赤根さんは、トランプ政権による制裁について、制裁を受けた判事の言葉を引用しながら、こう憤ります。 ICC(国際刑事裁判所) 赤根智子 所長 「『アメリカから一方的に、かつ理不尽極まりない理由によって、テロリストたちが載る経済制裁リストに並んでのせられた。私たちの人間性を否定するような許しがたい行為』だと、彼女(判事)は泣きながら言っていた。こんなことが許されていいのでしょうか」 また、赤根さんは、こうしたアメリカの圧力によって、加盟する各国の協力が得られなければ、ICC自体が立ちゆかなくなるとの危機感を抱いています。 「圧力に屈してはならない」ロシアからも指名手配 さらに、赤根さん自身もロシアから、指名手配されています。 2023年3月、ロシアが占領したウクライナ地域から、子どもを不法に移送したことが「戦争犯罪」だとして、ICCがプーチン大統領に逮捕状を発行したからです。 これにロシアのペスコフ大統領報道官は「言語道断だ」と猛反発。 ロシア当局は、赤根さんを含むICCの判事3人を指名手配したのです。 ロシアに入国すれば拘束されかねない状況に、2024年 6月、 赤根さんは一時帰国しました。 ICC(国際刑事裁判所) 赤根智子 所長(2024年6月) 「政治的圧力に関して申し上げますと、ICCの職員、裁判官一同、これら(圧力)に服してはならないという気持ちで、毎日の裁判業務に向かっている」 国家間の紛争を取り扱う「ICJ=国際司法裁判所」とは違い、戦争犯罪などを引き起こした個人に逮捕状を発行する「ICC」。 逮捕状が出た人物について、ICC加盟国は身柄を引き渡す義務があり、実際に逮捕され、審理が進んでいる例もあります。 オンラインで出廷したフィリピン・ドゥテルテ前大統領(2025年3月14日) 「私はロドリゴ・ロア・ドゥテルテです」 国内の麻薬犯罪に対し、容疑者殺害もいとわない強硬な取り締まりを行ったフィリピンのドゥテルテ前大統領。 フィリピン・ドゥテルテ大統領(2016年当時) 「フィリピンでの薬物撲滅運動はまだまだ続く。絶対に容赦しない。 死体は数えない」 当時、フィリピンは加盟国だったこともあり、ICCは捜査を2018年に開始し、2025年3月、人道に対する犯罪の容疑で逮捕状を発行。 フィリピン政府がドゥテルテ氏を逮捕し、オランダのハーグに移送され、 裁判に向けた手続きが進められています。 ICC所長が語る“法による平和”への思い その一方で、大国であるアメリカ、ロシア、中国は、ICCに加盟していません。 こうした大国不在の状況が、いま世界に混乱を招いています。 トランプ大統領 「イランの主要な濃縮施設は完全に消滅した」 いま世界は、国際法を無視し、トランプ大統領が標榜するような「力による平和」がまかり通る現実があります。 しかし、ICCの権限が及ぶのは、基本的に125の国・地域、国連(193か国)の3分の2以下の加盟国に限られており、赤根さんはそのことに忸怩たる思いをいだいています。 ーイランへの爆撃について何か捜査すべきだという機運は? ICC(国際刑事裁判所) 赤根智子 所長 「(ICCに)管轄権が生じるのは、締約国(加盟国)の地域で(戦争犯罪などが) 起きるか、締約国の人が起こした場合。世界全体の大きな事件を全てICCが管轄権を持っているかというと、持っていないのが現状。 アメリカもイランもイスラエルも締約国ではないので(ICCに)管轄権がない。もっと締約国を増やしていくことが大事」 しかし、赤根さんは、こうした時代だからこそ、ICCの意義は 大きいと、その重要性を語ります。 ICC(国際刑事裁判所) 赤根智子 所長 「国と国との戦争は増えているし、力による支配が横行してしまうような世界にも なりかねない。ICCが最後の砦となって、戦争犯罪などを犯した人を処罰すること によって、将来も法の支配というのを無にしないような努力をしていきたい」 「力による平和」ではなく、あくまで「法による平和」を訴える赤根さん。 世界は今、その岐路に立たされています。

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