6月24日に始まったNATO首脳会議で、異例の厚遇を受けたトランプ大統領。 一方で、加盟国に迫ったのは、国の財政を揺るがすような「防衛費の増額」です。 【写真を見る】「お世辞が目立つ」記者からの厳しい質問に答えるNATO事務総長 トランプ氏相手に過剰な配慮…NATOの弱腰ぶり 6月25日、首脳陣に“国賓”のように歓待され、ご機嫌な様子のトランプ大統領。 今回、オランダで行われた「NATO(北大西洋条約機構)首脳会議」で見えたのは、トランプ大統領への過剰なまでの配慮でした。 晩餐会でも、NATOのルッテ事務総長が持ち上げます。 NATO ルッテ事務総長 「NATOに防衛費の増額を求めるトランプ大統領の長年のリーダーシップに敬意を表したい」 「ミスター大統領、親愛なるドナルド。あなたが私たちを後押ししてくれるおかげです」 一方で、こんな配慮もありました。 今回、首脳会議にジャケット姿で現れた、ウクライナのゼレンスキー大統領。NATO加盟を強く要望していますが… NATOは、ロシア寄りとされるトランプ氏に配慮してか、 ウクライナ侵攻を主要な議題にしなかったのです。 会議後の声明でも… ルッテ事務総長 「我々はウクライナへの揺るぎない支援を再確認した」 ロシアへの非難さえありませんでした。 NATOがトランプ氏配慮の理由…抗議デモの中で NATO首脳会議での、トランプ氏への過剰なまでの配慮。こうした弱腰ともとれる姿勢に、事務総長には、記者から厳しい質問が飛びます。 記者 「トランプ氏と話すときの、あなたの言葉はお世辞が目立ちます。ちょっと屈辱的だし、弱々しく見えますよ」 ルッテ事務総長 「いや、そうは思わないですね。ちょっとした好みの問題だと思います。彼は良き友人なんですよ」 実はトランプ大統領は、NATO加盟国に対し、防衛費の増額を要求。揺さぶりをかけ続けていました。年明けから求めているのは、 GDP比5%の防衛費に増額すること。 トランプ大統領(2025年1月) 「NATO加盟国は(GDPの)5%(の防衛費)が必要だ。2%では無理だよ」 「支払わないなら、我々は彼らを守らない」 今回のNATO会合でのトランプ氏への過剰な配慮の裏には、軍事同盟の“中心”であるアメリカが手を引かないように、という思惑があったのです。 しかし、NATOが要求された「GDP比5%の防衛費増額」は、国の財政に影響しかねない莫大なもの。 スペインでは、トランプ氏の要求に抗議デモが起こっていました。 デモの参加者 「お金は社会権を強化するために使われるべきだと、私たちは考えています。教育や健康、 住宅、介護のために、お金が必要なのです」 結局、NATOは加盟32か国が、2035年までに要求された防衛費の増額(GDP比5%)目標に合意。トランプ氏は… トランプ大統領 「非常に歴史的な節目として、NATO同盟国は防衛費をGDPの5%に劇的に増やすことを約束した。誰も実現可能とは考えていなかったことだ。兵器がアメリカ製になることを願っている」 合意早々にイギリスは、アメリカから核を搭載可能な戦闘機F35Aを12機購入する計画を発表。 イギリス スターマー首相 「NATO加盟国は2035年までに、国防と安全保障への支出をGDPの5%に引き上げ、NATOをこれまで以上に強力で公平、戦力の高いものにする」 NATOの合意は他山の石…日本政府の対応は トランプ氏の要求に応じた形のNATO。しかしこれは対岸の火事ではありません。 首脳会議を終え、トランプ氏がアメリカに帰国した26日。 アメリカ レビット報道官(26日) 「NATO同盟国が(5%達成を)できるかどうかみてください。アジア太平洋地域の同盟国や友人たちも、同様にできると思います」 突然、日本にも突き付けられたGDP比5%の防衛費の増額。日本政府は… 林芳正 官房長官(27日) 「大事なのは金額ありきではなく、防衛力の中身である」 はたして日本との交渉も始まるのか。トランプ政権をめぐる悩みの種が、またひとつ増えた形です。