“トランプ関税”に揺れる「マツダ城下町」追加関税25%の影響は…?【Bizスクエア】

自動車への“トランプ関税”発動からまもなく3か月。アメリカへの輸出が多いマツダの“企業城下町”では影響が広がり始めている。 【写真で見る】“トランプ関税”に揺れる「マツダ城下町」追加関税25%の影響は…? 「いつまで働けるか…」従業員の不安 「メイン市場が北米だったりするので関税の影響はもろに受けていて、売り上げにも不安を覚えたりする」 従業員が不安を口にしていたのは、広島県府中町に本社を置く自動車メーカーの『マツダ』。 2024年にアメリカで販売した42万4389台のうち▼日本から輸出⇒22万2600台▼メキシコから⇒11万2600台と、アメリカへの輸出の割合は約8割に達している。(※マークラインズより) トランプ政権は4月に、輸入車への「25%の追加関税」を発動したが、同じ4月のマツダの「国内生産台数」は5万5161台と、“前年同月比12.6%減”。「関税の負担」は4月だけで“90億〜100億円程度”に上っているという。 マツダの従業員も不安を隠せない状況だ。 「残業が規制されたりとかいろんな活動が制限されている」 「関税が上がると売れない。社員よりも先に契約・派遣社員を切っていくから、いつまでいられるか」 「客が減った」マツダ城下町 広島市にある広島港は、府中町で作られた車を世界へと輸出する拠点で、この日も所狭しと新車が並んでいたが、4月のマツダの【輸出台数】は4万4097台と、“前年同月比29%減”だという。 また、広島港に隣接する国際コンテナターミナルでは、韓国・プサン行きの船に自動車部品や機械製品などのコンテナが積み込まれていた。プサンを経由し、アメリカなど世界各国に輸出されているが、4月はコンテナの数が1割ほど減っているとのことだ。 “企業城下町”の景気にも影響が出始めている。 タクシー運転手: 「最近は如実にタクシーでチケットを使用する人が減ってきている。以前よりも1割から2割ぐらいは乗客が減っているのを肌で感じている」 マツダの工場のすぐそばにある『お好み焼き・鉄板焼き よしき』(広島市南区)でも「マツダ関連の客は少し減ってきている。ボーナス時期に歓迎会・送迎会があったが回数も減っている」と話す。 そして地元住民からは“応援”や“期待”の声も聞かれた。 「マツダがくしゃみしたら市民は風邪引くくらいの影響力がある。頑張って欲しい。市民の誇りだから」 「就職とか広島県の経済に関しても、なくてはならない会社」 「あまり子会社に負担をかけないようにしてくれるのがマツダ。今までそうだったから」 サプライヤーも活路を模索 広島県などの企業の分析などを行っている帝国データバンクの土川さんによると、マツダのサプライチェーンの企業数は広島県だけで2002社。取引額は1兆2210億円に上る。 『帝国データバンク』広島支社情報部 土川英樹部長: 「仮に生産量が1割落ちれば当然1兆2000億円近くの約1割が影響してくるのではないか。長期化すればするほど企業体力が必要になってくるので、中小企業にとっては特に体力がない、経営に苦しんでいるところなどは非常に厳しい状況下になるかと思う」 マツダを支える部品などのサプライヤー企業も、苦境の中で活路を摸索している。 創業以来78年にわたり軽量で快適な自動車用シートを生み出してきた『東洋シート』(広島・海田町)。売上げの8割以上をマツダが占める中で、「不透明な状況が続くことで見通しが立てにくくなっているところは非常に懸念している」と口にしつつも、関税に対し“2つの対策”を考えているという。 1つは、北米にある3拠点(ミシガン工場・ケンタッキー工場・テネシー工場)を活かし“新たなビジネスを作る”こと。もう1つは、“原価低減やサプライチェーンの再構築”で、出ていくお金を極力抑えていくことだ。 渡邉新司社長: 「東洋シートがもっているグローバルのリソースをうまく生かしていかないと生き残れないと思っている。マツダと協力して乗り越えていきたいというのは、広島の地場企業は全部一緒の思いなので団結力を生かして今後もやっていきたい」 強みを活かして「一緒に難局を乗り切りたい」 自動車のエンジンやトランスミッションなどの部品を製造する『荻野工業』(本社・広島県熊野町)では、マツダ関連の部品が7割。4月以降は生産量が落ちているという。 佐々木裕孝社長: 「マツダの生産台数が落ちているから、稼働時間を調節しながら生産をしている」 東広島市にある工場では、人手不足の解消のためほとんどの生産設備が自動化されていて、「材料を投下したら完成まで自動で流れるライン」だという。そして、その設備自体も自社で開発している。 佐々木社長: 「装置関係を当社は自前で内製化しているので、生産の課題が自分たちでよく分かる。それを踏まえた自動化、工程設計をできる強みがある。しっかりとマツダに貢献できるよう生産効率を高めながら、しっかりコミュニケーションをとって一緒にこの難局を乗り切っていきたい」 こうしたサプライヤー企業に対し、マツダは「国内の生産台数を70万台程度に維持していく方針」を説明している。 『帝国データバンク』広島支社 土川部長: 「一旦サプライチェーンが崩れてしまうと地域経済に与える影響も大きいし、立て直しも非常に困難だと思う。なので地域全体で支えていくのもそうだし、国がしっかり支える仕組み作り・支援が必要になる」 関税分の値上げ「果敢に取り組んでいい」 現地生産が多い『トヨタ』や『ホンダ』に対して、輸出比率が高いのは『マツダ』や『スバル』だ。 【米国への輸出台数】2024年 ▼トヨタ:53万8685台 ▼マツダ:33万5200台 ▼スバル:29万6500台 ▼日産自動車:15万2800台 ▼三菱自動車:8万100台 ▼ホンダ:5379台 ※各社HP・マークラインズ(株)より ーーマツダは広島、スバルは群馬と企業城下町があり、地域的なサプライチェーンが非常に色濃く出ている企業だ。 経済ジャーナリスト 磯山友幸さん: 「日本国内から輸出しているところの“日本経済への貢献度”は非常に大きい。この20年間はアメリカ大陸の中で生産工場を作るという方に流れていたわけだが、その中で地場産業として頑張る、地域経済を支えるというのが、ここに来てどう維持するかだと思う」 ーー車の値上げ状況を見ても、25%の関税がかかっている割には値上げ幅が小さい。要は、かぶっていると。 【自動車メーカー値上げ状況】 ▼トヨタ⇒“年1回の価格改定の一環で”「トヨタ」ブランド約4万円・「レクサス」ブランド約3万円の引き上げ ▼マツダ⇒価格据え置き ▼スバル⇒複数モデルで値上げ ▼日産自動車⇒未定 ▼三菱自動車⇒価格を2.1%引き上げ ▼ホンダ⇒未定 磯山さん: 「本来は関税の分値段は上げないと、日本は価格で勝負しているのかというところ。“品質として”日本車を買ってもらうというのがきちんと定着していけば、もう少し値上げをすることに果敢に取り組んでもいいのではと思う」 ーー当初は、サミットまでに決着するかということで1、2か月我慢すればという様子見だったと思うが、3か月さらに4か月5か月になりつつある。 磯山さん: 「関税がどうなるか決まらないというのが、経営にとっては一番大きなインパクト。何かが決まっていれば対応策が取れるが、関税も本当にこのまま25%でいくのか、あるいは何かで妥協して下がるのか読めないと、まともに輸出して在庫を持つことができない。非常に難しいタイミングではないか」 (BS-TBS『Bizスクエア』2025年6月28日放送より)

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