7月1日、都内のベンチャー企業が、医療分野の新たな技術を発表しました。その技術に使われているのが「3Dプリンター」です。将来「ドナーのいらない移植」を目指す最先端技術を取材しました。 ◇ 藤井貴彦キャスターが訪ねたのは“世界初”の技術が眠る東京・港区のオフィス。案内された場所には…。 藤井貴彦キャスター 「これですか?」 サイフューズ担当者 「こちらがバイオ3Dプリンター。いまちょうど動き始めたところです」 藤井キャスター 「何を作っているところですか?」 サイフューズ担当者 「チューブ状の円柱のもの。ヒトの細胞でできた血管のようなチューブを作っています」 世界で初めてヒトの細胞だけで、移植可能な血管などの臓器を作製することができる「バイオ3Dプリンター」。大きさわずか0.5ミリほどの細胞の塊を「剣山」に刺すと、次第に細胞同士がくっつき始め、立体的に。 積み上げ終わるまで約半日。特別に完成した血管を触らせてもらいました。 藤井キャスター 「いや、なんか緊張するな…。柔らかい! イメージとしてはマカロニどころの柔らかさじゃないですね」 サイフューズ担当者 「すごく柔らかいとは思うんですけど、手術の際に先生がはさみで切ったり縫ったりすることも可能な強度」 今後2〜3年で実際に治療を受けられるよう、すでにさまざまな臨床試験が行われているこの技術。中でも代表的なのが、断裂した神経にバイオ3Dプリンターで作った神経同士をつなぐ管=神経導管を移植する手術です。 これまでの手術では、患者の足や耳裏などの神経を切って移植したり、人工神経を使ったりする方法が一般的でしたが、副作用や人工物を移植することへの安全性などが課題となっていました。 一方、このバイオ3Dプリンターで使うのは、患者の皮膚の一部から採取した細胞。これを培養して作製したものを移植するため、副作用はなく、安全性を確保できるといいます。 サイフューズ担当者 「3名に移植して、3名とも職場復帰された」 ◇ さらに、この日に発表されたのが、新たな治療薬の開発などに期待されている新技術。バイオ3Dプリンターで、病気になった状態を再現した「ミニ肝臓」です。 藤井キャスター 「これが肝臓なんですか?」 サイフューズ担当者 「病気になった状態のものに薬をあげてあげることで、どうやったら治る、どうやったら治らず悪化するというのが見られるのが特徴」 藤井キャスター 「患者の体に負担を与えずに、どう治療すべきなのか分かる?」 サイフューズ担当者 「ご自身の肝臓がどういう状態で、何を入れたらどういう反応するかを見られるかもしれない」 大阪・関西万博でも「ミライの診察室」の一部として紹介されているバイオ3Dプリンター。目指すのは…? 藤井キャスター 「自分の移植を待って順番が来ないまま、命を落としてしまう方もいらっしゃると思うが」 サイフューズ担当者 「よくドナーのいらない移植というふうに弊社では言っていまして、ドナーを待たず、かつ自分の細胞で作ったものを移植できたりとか、冷凍しておいて自分が(病気に)なったときに、それを移植で使う未来も待っていると思う」 ◇ 藤井キャスター 「私もびっくりしたんですが、長濱さんは『バイオ3D』って知っていましたか?」 長濱ねるさん(俳優/タレント/『news zero』火曜パートナー) 「初めて知ったんですが、未来を変える大きな一歩だなと感じました。日々研究している研究者のみなさんがいてこその成果だと思うので、心から感謝と敬意を示したいです。そして、待ち望んでいる方々にいち早く届くことを願っています」 藤井キャスター 「新しい技術が当たり前の存在になっていたからこそ、こういった3Dプリンターの別の活用法に驚きました。他人が臓器を提供する負担や、患者がドナーを待つ苦しみを減らせるように、技術がさらに高まることを期待しています」 (7月1日放送『news zero』より)