モンゴル公式訪問する天皇陛下「上下水道公社訪れて、水の問題学びたい」【記者会見全文その2】

 天皇陛下は2日、モンゴル公式訪問を前に皇居・宮殿で記者会見に臨まれた。  会見の全文は次の通り(その2)。      ◇  問2 戦後80年にあたり、両陛下は国内では硫黄島、沖縄、広島などで戦没者を慰霊されました。モンゴルでは日本人抑留者の慰霊碑を訪問される予定ですが、どのようなお気持ちで慰霊に臨まれますか。先の大戦や平和に対する今のお考えもあわせてお聞かせください。  天皇陛下 先の大戦においては、世界の各国で多くの尊い人命が失われ、多くの人々が苦しく、悲しい思いをされたことを大変痛ましく思います。亡くなられた方々のことを忘れず、過去の歴史に対する理解を深め、平和を愛する心を育んでいくことが大切ではないかと思います。  シベリア抑留者として、モンゴルに移送された約1万4000人のうち約2000人が不幸にして亡くなられたと聞きます。  その一方で、抑留された方々が、現在も使われているモンゴルの政府庁舎や国立オペラ・バレエ劇場などの建設に従事し、厳しい環境にありながらも自分たちの仕事に力を尽くしたことは、モンゴル国民からの尊敬を集めたと聞いています。  実際に、前回モンゴルを訪問した際に、ウランバートル中心部のスフバートル広場近くにある国立オペラ・バレエ劇場の立派なたたずまいが目をひいたのですが、この劇場が、司馬遼太郎氏の『モンゴル紀行』に書かれた劇場であり、先の大戦中に日本人の捕虜によって建てられたものであることを知り、極寒の地で建設に携わった人々の苦難に思いをはせたことを記憶しています。  また、戦後にモンゴルに抑留されながら、モンゴルの子どもたちのために孤児院を運営していた春日行雄さんとお会いし、お話ししたこともよく覚えています。 ラオス訪問する愛子さまへ「経験踏まえ助言していく」  今回の訪問では、そのような歴史に思いを巡らせつつ、日本人死亡者慰霊碑に供花をし、心ならずも故郷から遠く離れた地で亡くなられた方々を慰霊し、そのご苦労に思いを致したいと思います。  問3 大阪・関西万博が開幕し、皇室の方々は各国の賓客と交流される機会が増えています。陛下は皇室の国際親善の役割をどのようにお考えでしょうか。両陛下のモンゴル訪問に続き、11月には愛子さまにとって初めての外国公式訪問となるラオス訪問も検討されています。愛子さまの準備の状況、期待されていることをお聞かせ下さい。陛下の初の外国公式訪問を踏まえて、助言されていることもお聞かせください。  天皇陛下 皇室の国際親善の役割については、皇室が果たすべき役割の中で大事な柱の一つと考えており、私としても、訪日された賓客との交流や外国訪問に際しては、我が国と相手国との交流の歴史を踏まえ、今後の相手国との友好親善関係が更に深まるよう努めていきたいと考えております。  大阪・関西万博の関係では、これまでも旧知の王室の方々や大統領などとお会いして旧交を温めることができましたし、また、初めてお会いした国家元首の方々などもおられ、お話を通じて、それぞれの国についての理解を深めることができてきていることを有り難く思います。  また、愛子のラオス訪問については、ラオス政府から本年11月にご招待いただいたことに対し、愛子はもちろん、私と雅子も大変ありがたいことと思っております。訪問時期がまだ少し先ということもあり、準備については今後進めていくことになると思いますが、愛子のラオス訪問が、先ほど申し上げたとおり、我が国とラオスの友好親善関係の増進につながることを願っています。  私自身も平成24年にラオスを訪問する機会があり、ラオスの国民の皆さんに温かく迎えていただいたことをうれしく思いましたし、ラオスの人々が餅米を食べる習慣があるなど、日本とも共通する文化を感じることができました。私と雅子からもこれまでの外国訪問の経験を踏まえつつ、愛子に助言をしていくことができればと考えています。 前回訪問で「川の恵みに感慨」  なお、先般ブラジルを訪問した佳子内親王から帰国後の挨拶を受けた際には愛子も同席しており、佳子内親王からブラジル訪問の様子などを詳しく聞いておりましたので、こうした機会も通じて、愛子自身も皇室の外国訪問について学ぶことができたのではないかと思いました。  問4 モンゴルの首都、ウランバートルへの人口集中による都市問題が深刻化し、JICAなどを通じ上下水道など社会インフラ整備の協力が行われています。水問題についてのご造詣が深い天皇陛下はモンゴルの都市開発にどのようなご関心をお持ちでしょうか。また、日本の国際協力は両国の友好関係にどのように寄与していると思われますか。  天皇陛下 平成19年にモンゴルを訪れた際、首都ウランバートルはトーラ川の支流沿いに都市が発達していましたし、古都カラコルム、ハラホリンではオルホン川沿いに都市が形成されていました。草原と砂漠の国という印象があるモンゴルでも、川の豊かな恵みを受けて都市が発展していることを知り、深い感慨を覚えたことを思い出します。  私がいつも感じていることですが、災害に対応しながら水の恩恵を享受することは、人類共通の歩みでもあり、各国の水をめぐる問題を知ることは、それぞれの国の社会や文化を理解することにもつながります。  今回、ウランバートル市上下水道公社本部やガチョールト水源を訪れる機会があります。そこで日本の経済・技術協力が行われていることをうれしく思いますし、モンゴルにおける都市開発や水の問題について学ぶことを通じて、この国への理解を更に深めることができればと思っています。  また、1990年代以降、モンゴルの民主化を契機に、我が国はモンゴルと幅広い分野での協力関係を進展させてきており、こうした長年の協力関係を通じてモンゴルの方々は日本への信頼と親近感を持っておられると聞いております。今回の私と雅子の訪問が、日本とモンゴルの従来からの親密な友好関係を一層強める機会となれば幸いです。

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