若者には肩の力を抜いて「職場の飲み会」参加してほしい フリー編集者が「飲み会に参加していなかったらと思うとゾッとします……」と明かす理由

仕事上の戦友に  仕事関係の人との飲み会を嫌う若者が多いといわれる昨今。そうした風潮に真っ向から反論する記事が6月24日にプレジデントオンラインに掲載された。文筆家・ラジオパーソナリティの御田寺圭氏によるもので『「会社の飲み会に絶対参加しない人」は損をする…安定した社会人生活に"つきあい"が不可欠な理由 「社畜にならなくていいから、戦友になれ」』というタイトルだ。 【行った方が得?】仲良しライターと、唐津の友人と…飲み会を大切にする筆者が送る酒場放浪の様子  記事内では、飲み会に参加しない、ということを宣言し、誰かと仲良くすることは敵を作るからお薦めしない、というXの投稿の紹介から始まる。御田寺氏はこの手の考え方を「無関心な中立」と表現する。クールな振る舞いだし、「業務の延長として残業代を出せ」と考える人からすればこの投稿は共感できるだろう。 職場の飲み会には賛否両論あるが…  だが、御田寺氏によると、こうした人は「全方位から嫌われ信頼されない」「困った時に助けてもらえない」人間になるのだとか。そのため飲み会は行き、(慣れ合うだけの)「社畜同士」ではなく「戦友」になれという提案だ。 「お付き合い」で行くのではなく、その人と本気で仕事も飲みもして、「いやぁ〜、あの時は大変でしたね」としみじみと数年後に語り合うような「戦友」になれば人生はトクする、という話だ。これには実にピンと来た。私自身、仕事上の数々の「戦友」に恵まれた。20年前、芸能人の恋愛沙汰記事をネットニュースに掲載した時、芸能事務所に呼び出され、そこに軟禁された。この時、編集者の私に同行してくれたサイト全体のプロデューサー的な人とは今でもこのことを飲み屋で語り合う。 若き日に飲み会に参加していなかったら 「いやぁ〜、あの時恐ろしかったですね……」「ホントそうですよ。オレは部下に『3時間以内に戻ってこなかったら、何かあったと思え』と伝えていました」「結局あの社長も途中で怒りゲージが下がって『とにかく邪魔はしないでくれよ、頼むよ、お前も仕事してるから分かるだろ?』みたいなモードに入りましたね」「その後なんとか許してもらえ、2人でガード下の居酒屋で飲んだビール、ウマかったですね」  20年前のこの話は我々にとってインパクトが強過ぎ、未だにしみじみと「戦友」として語り合うのだ。それももちろん、その後彼と私の行った事業がそれなりにうまくいったからこそできる話である。だが、明らかにこの時の軟禁事件とガード下サシ飲みで我々の絆は強まり、「戦友」になった。そうした関係が20年経っても生きているのである。  私自身仕事上の飲み会はかなり多く、そこで有益な時間を過ごせたため御田寺氏には同意するが、万人が飲み会を好きなワケがない。そのため「無関心な中立」の人の考えも理解するが、現在のポジションを考えると若き日に飲み会に参加していなかったらどうなっていたか……とゾッとすることもあるのだ。  フリーランスという働き方のせいもあるのだが、仕事は飲み会も含めて「仲の良い人」からもらうことが大半である。他のルートとしては、私の著書や記事を読んだ人からの連絡や、知人から「一緒にやりませんかー」と大元のクライアント企業のプロジェクトに参加するパターンである。仲の良い人、知人とは最低1回は飲んでいるような間柄であり、その席で「今度一緒に仕事しましょーよ!」と酔っ払って語り合ったことが発注のベースになっていたりもする。 飲み会で人生が好転することも  47歳で半隠居生活を開始し、もうすぐ52歳になるが、金銭的にはまったく困っていない。それも若き日からの飲み会がもたらしてくれたものであると感じている。23歳から27歳までは会社員で、その内の1年半所属していた部署は異常に部員の仲が良く、週4回酒を飲んでいた。当然彼らはその後部署異動等はあるし、私のように退職する者もいるのだが、当時の飲み会での温情か結束か何やら分からないが、あれから26年経った今でも仕事を一緒にしていたりする。  当然、飲み会がイヤな人は行かなければいいが、行ったら案外トクするかもよ、ということは伝えておく。また、このプレジデントオンラインの記事が出た後、さるオンライン会議でこのことについて議論になったが、会議に参加している企業の今年の新入社員(女性2名)からチャットのメッセージが来た。 「私は色々な話を聞きたいですよ〜。飲み会は行きたいです」「私もそうです。ただし、セクハラがない、という条件で」「同期と行く場合は、お金の面でキツい、という声が出るのは確かですが、年上の人がいたら新入社員は安くしてくれるのでそこはありがたいです」  自発的なチャットのメッセージがコレだった。こう言わせたわけではない。元々仕事関係の飲み会のネガティブイメージは「おじさんが説教や自慢話をし続ける」「セクハラをする」「酒を強要する」「女性がいたら『紅一点』などと言う」「お酌を要求する」などだが、このオンライン会議では「こんなことやっていたら今の時代、大問題になりますよね……。多分、まともな人はやらないと思います」といったことを40代男性が言い、そこには納得感があった。  当然、飲み会が嫌いな人のことを否定するものではない。だが、この世には飲み会で人生が好転したことがある人も案外いるんですよね、ということは伝えておきたい。 中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) 1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。 デイリー新潮編集部

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