熱中症疑いでの救急搬送のニュースが連日報じられるなか、SNSでは熱中症によって頭痛が起きた場合の頭痛薬の使用方法が話題になっている。熱中症による頭痛の症状が出た場合、どのように対処すればよいのだろうか。 医師は、熱中症の場合にロキソニンのような「非ステロイド系抗炎症剤」の頭痛薬を飲むと腎機能障害やふらつきによる転倒の危険があるため「原則使わない方がいい」とする。ただし、頭痛が出るほどの熱中症は「けっこう重症」とし、安易に判断せず涼しい場所で休み水分補給しても治らない場合は病院に行くよう呼びかけた。 注意すべきは「非ステロイド系抗炎症剤」の頭痛薬 消防庁の発表によると、2025年5月1日〜6月29日に熱中症で救急搬送された人数は1万8133人(速報値)。24年の同時期の搬送人数は9812人で、2倍近くとなっている。 このような状況のなか、SNSでは熱中症で頭痛の症状が出たときに、ロキソニンなどの頭痛を使ってはいけないとする情報が拡散されている。本当なのだろうか。J-CASTニュースは済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜医師に話を聞いた。 谷口医師によれば、注意が必要なのは鎮痛解熱剤に分類される「非ステロイド系抗炎症剤」と呼ばれる頭痛薬だ。熱中症に対する頭痛に対しては、「原則使わない方がいい」という。市販薬では、ロキソニンやバファリン、イブなどがそれに当たる。 熱中症による頭痛は「高体温や脱水症がベースにある」といい、こうしたときに非ステロイド系抗炎症剤を使うと、熱が下がらないばかりか腎機能障害や血圧低下が起こる可能性があると谷口医師は説明する。血圧が低下すると、立ちくらみによりふらついたり、転倒したりする危険性がある。 谷口医師は、熱中症の場合に頭痛薬を飲んだとしても、一瞬は良くなるかもしれないが「根本的な治療になっていないので、また頭痛が起きてくる」という。 「熱中症に効く薬はないと思った方がいいです」 といい、症状を感じたら体温を下げ、水分や経口補水液を摂ることが重要とした。そのような処置をしても1時間程度様子を見て改善が見られず悪くなるようであれば、病院に行くことを勧めた。 なお、頭痛薬には同じく鎮痛解熱剤に分類されるカロナールなどの「アセトアミノフェン」と呼ばれるものもある。どちらも熱中症による頭痛への効果は薄いが、「アセトアミノフェン」には腎機能障害や血圧低下の弊害は少ないとした。 誤って頭痛薬を飲んでしまった場合は では、誤って「非ステロイド系抗炎症剤」の頭痛薬を飲んでしまった場合はどうすればよいのか。 谷口医師は、まずは、立ちくらみによる転倒を防止するため「座ったり横になったりして休むことが大事」とした。次に、脱水状態を補うため「水分をたくさん取ることが必要」と説明した。 なお、腎機能障害については、若い健康な人であれば、熱中症の際に1〜2回程度「非ステロイド系抗炎症剤」を誤って飲んだとしても、腎機能への影響は少ないとする。しかし、高齢者などは1回で腎機能障害が出る可能性があるため「その後きちんと尿が出ているかどうかを見た方がいい」と推奨した。目安としては、「5〜6時間、尿が出なかったら病院に行った方がいいです」とした。 頭痛が熱中症によるものはどうかを見分けるポイントは では、起きている頭痛が熱中症によるものかどうかは、どのように判断すればよいのだろうか。 谷口医師は、「結論から言うと、原因の診断は医師にしかわからない」とする。熱中症であったとしても、「例えば、脳の動脈瘤が元々ある人は、熱中症によって血圧が上がってそれが破裂しつつある可能性もある」とし、「安易に素人判断はしない方がいい」と警鐘を鳴らした。 谷口医師によると、見分けるポイントは「思い起こして、暑いのと頭痛とがリンク」するかどうか。半日程度たった後に症状が出ることもあるという。また、熱中症では頭以外にも「唇の周りや筋肉・関節など、体中が痛くなります」とした。 頭痛が起こるほどの熱中症は「けっこう重症」とし、「涼しいところで休んで水分補給しても頭痛が治らない場合は病院に行っていいです。全然躊躇しなくていい」と呼びかける。熱中症の初期症状としては、だるい、食欲がない、足をつるといった「熱あたりの症状」とした。