北海道を代表するコメの産地・後志の蘭越町で、新たな特産品として薬草の栽培を始めています。 万博にも出展するなど世界にも薬草の魅力を発信。 マチをあげて取り組むその狙いとは。 コメのマチ「蘭越町」に変化!?新たな特産品は…赤ジソ! ふっくらと窯で炊きあがったご飯。 粒が立って、白く輝いています。 この炊き立てのご飯を求めて続々と注文が入ります。 特に人気なのが、塩むすびと生たらこ。 すべて蘭越産の「ななつぼし」を使用しています。 (小樽から来た人)「コメは甘みもあります」 (小樽から来た人)「満足」 後志の蘭越町にある飲食店です。 店に併設されている売店では、蘭越特産のコメが売られていますが… 中には、あまり見慣れないビールやジュース。 さらに化粧品も売られていました。 よく見ると、「世界で蘭越だけの紫蘇」と書かれています。 (街の茶屋 朝比奈隆之店長)「蘭越町で世界で唯一栽培されている赤ジソの「下阿達」を使った特産品となっています」 薬草でもある「赤ジソ」。 マチの人に聞いてみると… (町民)「私の知っているところ(農家)で作っていると聞いたことがある」 (町民)「そこのバーでもシソのお酒を出しているので」 (町民)「コメのまちなんですけど、試行錯誤して色々なことに取り組んでいる」 北海道が誇るコメのまちから「薬草のまち」へ。 世界で唯一の赤ジソの魅力に迫ります。 「コメに次ぐような特産の農作物を育てたい」 町と京都大学など協定を結び栽培スタート 羊蹄山のふもとに広がる田園風景。 そこに、薬草を試験栽培している農場がありました。 (シミックホールディングス 西山大介さん)「栽培している薬草がこちらになります。京都大学で30年くらいかけて開発された、香りのいい、赤ジソになります。大きな特色として、レモンの香りを持っているという他にない特性がある」 これが特産品化を目指す赤ジソ。 「下阿達」という新種の薬草です。 健康によいとされるポリフェノールを多く含み、レモンの香りがするのが特徴です。 ほかにも「漢方の王様」とも言われる高麗人参など、4種類の薬草を栽培しています。 (シミックホールディングス 西山大介さん)「コメに次ぐような特産の農作物を育てたいという意向を持って町長が何か探していたところ、薬草をやってみようという流れになった」 蘭越町が試験栽培を始めたのは2021年。 町と京都大学、医薬品開発支援大手のシミックホールディングスが協定を結び、栽培が本格化しました。 現在は6戸の農家で契約栽培が始まっています。 (百瀬記者)「こちらが定植しておよそ1か月が経った赤紫蘇です。手のひらくらいの大きさまで成長するんです。特別に許可をいただいたので試食させていただきます。紫蘇本来の味もするが、そこまで主張が強くなくて、レモンの香りもするため、食べやすい印象です」 無農薬で栽培されている赤ジソ。 町内のカフェでは新メニューを開発しました。 (IKIGAI Cafe 小山英樹シェフ)「サラダ系が合うんじゃないかなと思いますけどね」 トマトやベーコンなど、具材たっぷりのサンドイッチに、味のアクセントとしてー そして、道産の野菜で作られた生春巻きやおにぎりにも赤ジソを使ったメニューを考案し、6月24日から提供を始めます。 さらに、5月には大阪・関西万博にも赤ジソの商品を出展。 2000人分の試供品がおよそ2時間でなくなるほど、人気を博しました。 (蘭越町農林水産課 田縁幸哉課長)「ニセコエリアに(蘭越町が)あるので、富裕層に供給をしたいなと考えている」 国内有数の「薬草」生産地・北海道 栽培に適した環境 薬草の魅力を発信するのは、蘭越だけではありません。 (薬用植物資源研究センター 吉松嘉代センター長)「シャクヤクの根には、筋肉の緊張を緩める作用であったり、炎症を鎮める作用があるので」 名寄市には日本に3つしかない国立の研究センターがあり、この日は研究農場が一般開放されました。 吉松センター長は、北海道は国内有数の薬草の生産地で、品質が高く、栽培に適している環境だと話します。 (薬用植物資源研究センター 吉松嘉代センター長)「栽培面積が最も多いのが北海道で、農家の規模が大きくて、機械化が進んでいるので、効率的な栽培ができている。(本州のように)暖かいところは害虫や病気もあるので、それが少ないというのはメリットだと思う」 シソ栽培を始めたワケは…先が読めない“コメの需要” 薬草の栽培を始めた蘭越町。 そこには、「コメのまち」ならではの懸念がありました。 25年以上、コメやトマトなどを作り続けている気田洋人さんです。 赤ジソの栽培はほかの農作物に比べ、手入れが簡単だと話します。 (コメ農家 気田洋人さん)「虫にかじられたものを植え替えたり、通路の除草や水やりですね。一か所に労力をかけなくてもいい作物があるというのは、その分、他の作物に手をかけられるので大事だと思う」 3年前に栽培を始めた気田さん。 きっかけは、先が読めないコメの需要でした。 (コメ農家 気田洋人さん)「コロナのときみたいに、需要がないからということで、1000円2000円と(販売価格が)一気に下がるときがあるので」 一方で、赤ジソは手入れが簡単で、希少性が高く、高収益。 マチを上げて取り組む薬草栽培は、農家を守るためでもありました。 (蘭越町農林水産課 田縁幸哉課長)「当時コメの販売価格が低迷していて、農家の所得の向上が課題だった。リスクを軽減するような薬草の栽培も、政策を進めていく上では大事」 (コメ農家 気田洋人さん)「コメみたいに、そのときになって(販売価格が)いきなり下がったり、ことしみたいに変に上がったりがないので魅力だと思います」 コメのまちを支える希少な薬草栽培。 その魅力を消費者、そして世界へと発信します。