親のダメ出しが子どもの「自己肯定感」を破壊する…日本でありがちな「推論力」を潰してしまう子育てとは

上司と部下、先輩と後輩、取引先、夫婦、親子……、いつも会話がすれ違うのは、じつは対話の様式が大きく違っているから。累計100万部超の「トリセツ」シリーズ産みの親が、満を持して書き下ろしたコミュニケーションの秘訣『対話のトリセツ ハイブリッド・コミュニケーションのすすめ』から、注目の章をご紹介! 『「家族」や「部下」を傷つけないために!…“大切な人”の心理的安全性を守るための“二つの原則”』より続く。 「いきなりダメ出し」に注意 日本の子育ては、「いきなりダメ出し」がけっこう多い(韓流ドラマを見ていると、韓国の子育ても同じ)。子ども部屋に入ってきた母親が開口一番、「ランドセル、ちゃんとかけなさい」「作文の宿題、まだやってないの」「机の上、片付けて」などなど、ダメ出しと指示のオンパレード。 靴は揃えてあるし、算数の宿題は終わってるし、おもちゃは片付けているのに、それらはあっさりスルーされる。たぶん、宿題を全部終えて、お片付けが完璧でも、「今日は、風呂に早く入りなさいよ」のように、未来のまだしてもいないグズグズにくぎを刺される。母親は、無限に、できていないことを見つけ出してくるのだ。もちろん、子どもを守るために。 ダメ出しをしながら歩く母親のもとでは、子どもはたしかにお片付けもするし、宿題もする。優等生に見える。けれど、子どもたちの脳から、万能感と自己肯定感を奪うことがある。 私たちの脳は、「自分の脳神経信号の出力に見合った、環境からのフィードバックがあること」で、自分の脳が正しく作動していることを知る。 そもそも、脳は、一生、推論をしている。たとえば、目の前にあるコップを持ち上げて、ジュースを飲むとき。このコップの形状や重さ、容器の表面のすべりやすさ、ジュースの量、ジュースの粘性、自分の姿勢、着ている服、腕時計をしているかどうか——これらの条件すべてが、筋肉運動のバランスにかかわっているのだけど、それは常に一期一会でしょう? 変化する環境で生きる動く生命体である私たちの脳は、都度推論してことに当たっているのである。常に推論をしてことに当たっているため、うまく行ったことを都度確認してもいる。もしも、少しでも口からこぼれたら、即座に手を止めなきゃならないからね。 推論してことに当たり、目論見通りにことが進めば、脳は自らが目論見通りに動いたことを知り、脳は自らへの信頼に換える。脳は、一生涯、それを繰り返している。 実はこれこそが、万能感と自己肯定感の源なのである。 自己肯定感の培い方 たとえば、壁にボールをぶつけて、それをキャッチして遊ぶとき。 左に逸れたな、と感じて、左にグローブを差し出したらキャッチできた。まっすぐだ、と直感して、グローブを真ん中に構えたらキャッチできた。そんな繰り返しが、子どもの脳に「自分は目論見通りに動けている。あらゆる推論がうまく行っている。未知の事態にもきっとなんとかなる」という万能感をもたらす。 そして、同時に、自分を取り巻く環境(壁や床、空気や重力やボール)との整合性がいいことも知るので、ここに自分がいることが正しいと思え、自分の存在意義を疑わなくなる。これが自己肯定感である。 子どもたちが、飽きずに壁にボールをぶつけるのも、ブロックを積み上げるのも、ゲームをするのも、縄跳びをするのも、脳がこれをしたがっているから。そして、脳は自分への信頼を着々と積み上げて、生きる意欲に換えているのである。 ——そのボールが目論見通りに返ってこなかったら? ましてや、返ってこなかったら? 返ってこないボールを、延々と投げることは、誰にもできないのではないだろうか。 10のうち1できていないことがあって、いきなりその1を指摘される。いきなりのダメ出しとは、そういうことだ。 すると、言われた人は、9の正しいことの評価を受けていないことになる。脳は、自分が正しく動いていることを確認できないので混乱する。これが続けば、万能感や自己肯定感を培えない。 『なんでもできる「優等生」ほど「自己肯定感」が低い?…「デキる人」の存在価値を見失わせるいきなりの”ダメ出し”』へ続く。 【つづきを読む】なんでもできる「優等生」ほど「自己肯定感」が低い?…「デキる人」の存在価値を見失わせるいきなりの”ダメ出し”

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