実は「朝に飲む」だけで効果がアップする「意外なクスリ」を実名で紹介!

同じクスリでも「飲む時間」を変えるだけで、実は効果が大きく変化する——そんな最新知見をわかりやすく伝える新刊『時間治療』から、人間の体と時間の意外すぎる関係について紹介していきます。 ACE阻害薬をどう飲むか 高血圧治療薬としてよく使われるのが「ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬」です。ACE阻害薬は、血管を収縮させて血圧を上げる「アンジオテンシン�」というホルモンを減らす薬物であり、高血圧や心不全の治療薬として広く用いられています。 ACE阻害薬を、朝投与したときと夜に投与したときの血圧日内リズムに及ぼす影響を比較した研究結果が、これまで多く報告されています。それらによると、朝投与したときに比べて夜に投与したときのほうが夜間の血圧低下が大きいことがわかっています。 とくに、ノンディッパー型の患者さんでは、夜に投与するほうがディッパー型に変わりやすく優れた治療効果が得られるようです。 実際に、ノンディッパー型の患者さんに「ラミプリル(わが国では販売されていません)」というACE阻害薬のひとつを夜に投与すると、心筋梗塞の発症およびそれに伴う死亡がより少なくなることが明らかにされています。 また、私自身の基礎研究では、やはりACE阻害薬のひとつである「テモカプリル」を就寝前に投与したほうが、脳卒中の発症が少ないことを示唆する結果も得ています。 ACE阻害薬の注意点 このように、ACE阻害薬を夜(あるいは就寝前)に投与することで、心筋梗塞や脳卒中の予防効果が向上するものと考えられますが、一部の患者さんには注意が必要です。 昼間よりも夜間の血圧が20パーセント以上低いエクストリーム・ディッパー型の患者さんでは、ACE阻害薬を夜に投与すると夜間の血圧が過剰に低下する恐れがあります。 したがって、ACE阻害薬が処方されたときは、一度、主治医に相談してください。その上で、携帯型血圧測定機器を用いて24時間にわたり血圧を測定し、血圧日内リズムがエクストリーム・ディッパー型でないことを確かめてから、夜に飲むことをすすめます。 ちなみに、ACE阻害薬には空咳が出るという有害作用があります。処方された患者さんの1〜2割に空咳が出現し、そのために投与が中止されることもあります。 その原因である「ブラジキニン」というホルモンについて、私たちは臨床研究を行ったことがあります。 高血圧の患者さんに「エナラプリル」というACE阻害薬を、午前10時、あるいは午後10時に投与し、血中ブラジキニン濃度を測定しました。その結果、エナラプリルを午前10時に投与したときには血中ブラジキニン濃度は上昇するが、午後10時に投与しても上昇しないことを発見したのです。 このことから、ACE阻害薬を朝飲むことで空咳が出ている患者さんは、投与時刻を夜に変更すると空咳が減弱することが期待されます。実際に、私の患者さんたちは、ACE阻害薬の服薬時刻を夜に変更することにより空咳が減弱し、QOLが向上しています。 臨床の現場では、空咳が出るとしばしばほかの降圧薬に変えられますが、ACE阻害薬を1日1回服用している患者さんで空咳を認めたときは、急いでほかの降圧薬に切り替える前に、投与時刻を変えてみる価値がありそうです。 ARBをどう飲むか もうひとつ、わが国のみならず欧米諸国でも広く使われている降圧剤が「ARB(アンジオテンシン�受容体拮抗薬)」です。ARBはACE阻害薬と異なり、血管を収縮させるアンジオテンシン�の作用を抑えて血圧を下げます。 この薬は、夜投与するほうが腎臓の保護作用が大きいことがわかっています。 また、投与するタイミングによって降圧効果は異なります。 たとえば、血圧日内リズムがノンディッパー型の患者さんに「バルサルタン」というARBを3ヵ月間、1日1回朝投与した場合、76パーセントは依然としてノンディッパー型でした。ところが、1日1回夜投与するとノンディッパー型は25パーセントに減り、残りの75パーセントはディッパー型になったと報告されています。 つまり、バルサルタンは夜に投与することで、夜間の血圧が程よく下がる患者さんが増えることがわかりました。 高血圧を治療する目的は、血圧を下げて全身の動脈硬化の進行を遅らせ、心筋梗塞や脳卒中、慢性腎臓病などの発症を抑えることにあります。 高血圧が長く続くと腎障害が生じ、尿中のアルブミン排泄量が増加しますが、前述の臨床研究では、バルサルタンを夜に投与したときにのみ尿中アルブミン排泄量は減っています。これは、バルサルタンを夜に投与したほうが心臓や脳などの臓器保護作用が強いことを意味しています。 私たちは、この点を検証するために基礎研究を行い、バルサルタンの脳卒中を予防する効果は投与するタイミングによって異なることを見出しました。この研究では高血圧の動物を用いていますが、人にあてはめると夜投与が最も効果的でした。 このように、バルサルタンを含めたほとんどのARBは、夜に投与することによって心筋梗塞や脳卒中の予防効果が向上するものと考えられます。 しかし、ACE阻害薬と同様に、昼間よりも夜間の血圧が20パーセント以上低くなるエクストリーム・ディッパー型の患者さんでは、ARBを夜に投与すると夜間の血圧が過剰に低下する恐れがあります。 血圧日内リズムがエクストリーム・ディッパー型でないことを確かめてから、ARBを夜に用いるようにしてください。 降圧剤は「朝」に飲むな、「30分」以上のうたたねで糖尿病リスクが上がる、予防接種は「午前中」、虫歯の治療は「夕方」に受けるといい……知っているだけでグンと健康になる知識が詰まった新刊『時間治療』は全国の書店・ネット書店で好評発売中! 塩分を減らしても「血圧が下がらない人」がいる…その「驚きの理由」

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