1トンの灯篭担いで「イヤサカサッサイ」…能登キリコ祭りの先陣「あばれ祭り」、記者も熱気を体感

 能登伝統のキリコ祭りの先陣を切る「あばれ祭」が4、5日、能登町宇出津地区で開催された。  能登半島地震の影響で昨年は4町会が参加を断念したが、今年は全36町会がそろい、地区は熱気に包まれた。奥能登地域を担当する記者も担ぎ手として練り歩き、多くの観衆を引きつける祭りの魅力を体感した。  最高気温が30度を超える4日午後3時。「せーの!」のかけ声を合図に、キリコと呼ばれる巨大な灯籠を40人ほどで担いだ。高さ6メートル超、重さ約1トンのキリコが上がると、肩にダンベルを乗せているかのような重みがのしかかった。  記者は能登地域に赴任して3か月で、祭りに参加するのも初めて。強い日差しで体力を消耗し、だんだんと息が切れて足踏みも遅くなった。ぎこちなく歩いていると、隣で担ぐ地区出身で野々市市の会社員男性(32)が、「垂直に担ぐのではなく体をキリコ側に傾けた方がいいよ」と声をかけてくれた。  真上から重みを感じていたが、体を斜めにすると足の力で踏ん張りがきく。コツをつかむと漁師町の風景や祭りの熱気を楽しめるように。家屋解体で更地が増え、道路は凸凹のままで1年半たっても地震の爪痕は残るが、担ぎ手や観衆の表情は晴れやかだ。気恥ずかしかったかけ声も終盤には「イヤサカサッサイ!」と自然に出るようになった。  あばれ祭運営改善協議会事務局長の諸角浩司さん(65)は「キリコを一度担いだ人は次も参加したくなる」と言う。一緒に担ぐと「どこから来たんや」「疲れたな」と自然と会話が生まれる。足踏みをそろえて2キロ・メートルほどの距離を約2時間かけて担ぐと、疲労感よりも達成感と高揚感で満たされた。  祭りは能登の人にとって「ハレの日」。祭りになれば地震で家をなくして町外に住む人も戻ってくる。能登の復興を後押しするため、祭りはなくてはならないと感じた。(宮本悠希) 火の粉浴び熱さ感じ確かな満足感…復興への決意体現する祭り  「肩入れろ! 声出せよ!」。4日午後10時過ぎ、担ぎ手として加わった町会の勇壮なキリコが燃えさかるたいまつの周りを練り歩く。火の粉を髪の毛や服に浴び、すさまじい熱さを感じた。活力ある周りの担ぎ手は、お構いなしに雄たけびにも似たかけ声を出し続ける。負けじと腹から声を出し、終わった後は確かな満足感があふれた。  翌5日は2基の神輿(みこし)が登場。暴れ方が激しいほど神輿に宿る神様が喜ぶという。「チョーサ」のかけ声で地面にたたきつけたり、神輿に乗ったり。たいまつの火の粉を浴びながら神輿が豪快に川に投げ入れられると、盛り上がりは最高潮に達した。  昨年も取材したが、地区が一体となる祭りを担ぎ手として間近で体感したかった。復興にはまだまだ時間がかかるかもしれない。だが、「生きる力」や復興への決意を体現する祭りがあれば能登は必ず復活する。そう信じている。(成島翼)

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