静岡県伊東市の田久保真紀市長(55)が、東洋大学卒業の詐称疑惑を受けて辞任表明し、反対してきたメガソーラーや図書館の問題がどうなるか、関心を集めている。 田久保市長を巡っては、卒業ではなく除籍と分かり、市議会は2025年7月7日、辞職勧告と百条委員会設置を全会一致で決議した。また、公職選挙法違反に当たるとして、市内の建設会社社長がこの日、県警に刑事告発したと報じられた。 前市長が進めた新市立図書館の計画は一転中止 四面楚歌状態になった田久保氏は、同日夜の会見で、「改めて市民の判断を仰ぎたい」と出直し選挙に臨む考えを示し、「卒業証書」を検察に提出するなどの手続きを終えれば、速やかに市長を辞任すると明らかにした。 田久保氏は、25年5月の市長選で、小野達也前市長(62)を破って初当選したばかりだ。しかし、翌月には、東洋大は除籍されていたとする「怪文書」が市議会に出回り、田久保氏は、追及を受けて難しい対応を迫られた。 市長選では、田久保氏と小野氏には、明確な争点があった。 小野氏は現職として、約42億円をかけて伊東市桜木町に新しい市立図書館を作る計画を進めていたが、田久保氏は、税金の無駄遣いになるとして、これに反対した。田久保氏は当選後、直ちに計画の中止を表明している。 そもそも、田久保氏が政治家を目指したのは、市民運動を通じてだとされている。 伊豆高原にある伊東市八幡野でメガソーラーが18年に着工したときは、計画に反対する市民団体の事務局長として活動した。この活動をきっかけに、翌19年に市議選に出て当選し、市長選では、図書館計画に対して問題提起した。 田久保氏が詐称疑惑から辞任表明に至ったことに対し、ネット上では、「改革の芽を、自らの不誠実さで潰してしまった」などと批判が出た。その一方で、田久保氏は、守旧派に潰されようとしているのではないかとの声も一部で上がっている。 今後、田久保氏が中止を命じた図書館計画などはどうなってしまうのだろうか。 メガソーラーは、対立候補の政策次第か 図書館を担当する伊東市教委の生涯学習課は7月8日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように現状を説明した。 「市長は、老朽化した現在の市立図書館を改修する案と廃校した小学校の校舎を活用する案の2つを示しています。現在は、検討材料を集めており、今年度中に方向性を出したいと考えています」 新図書館の建設計画があった土地は、市が2億円強で取得したが、計画が中止された現在は、公民館の臨時駐車場として利用されているという。今後については、「何にするかは、決まっていません」と答えた。 市議会では、図書館建設の工事費などを減額する補正予算案が賛成少数で否決されているが、それは建設に備えてではないという。国から補助金を受けることになっており、図書館改修などに使えるようにとの配慮からだとしている。現状では、市長の計画中止に反対する動きまでにはなっていないようだ。 メガソーラーについては、市の都市計画課は8日、取材に対し、法的な基準に合っていたため土地の造成について許可を与えたが、着工翌年の19年から工事が止まっていると説明した。施設は何も建設されておらず、山を削って整地している途中の状態だという。今後については、「特に聞いていません」と答えた。 韓国系企業も出資した「伊豆高原メガソーラーパーク合同会社」が計画を進めているが、この企業はその後に撤退し、現在は北九州市内の企業が加わっている。計画については、小野氏も田久保氏も、白紙撤回を求めて反対してきており、次の市長が2人以外でない限り、市の立場は変わらないようだ。 (J-CASTニュース編集部 野口博之)