アメリカ大リーグ・シアトルマリナーズのイチロー会長付特別補佐兼インストラクター(51)が6月20日、大阪・関西万博の会場・夢洲で、ユニクロのチャリティーTシャツプロジェクト「PEACE FOR ALL」3周年記念トークショーに登壇した。 テーマは「好きなことを見つけて、扉を開こう」熱く語るイチローさん〈2025年6月20日 大阪市此花区・夢洲〉 テーマは、「好きなことを見つけて扉を開こう」。 イチローさんは、約130人の高校生、大学生らを前に開口一番、「僕のこと、知ってる?野球やってたんだよ」と語りかけた。 「僕、野球やってました!」高校生に語りかけるイチローさん オリックスブルーウェーブ(当時)でリーグ優勝(1995・96年)、読売ジャイアンツを破って日本一(96)、さらにメジャーリーガーとしてマリナーズ、ヤンキース、マーリンズ、再びマリナーズ(2001〜2019)と、経歴にこだわらないイチローさん流のシニカルな言葉が、逆に笑いを誘った。 イチローさんは、「これまでにさまざまな扉を開けてきた」という思いがあったからこそ、殿堂入りの会見で、ドアの絵のTシャツを着たのだという。 そして、「好きなことを見つけて、(それを極めるために)一歩ずつ進むために扉を開いてほしい。扉はどっちに開くのかわからない。押すのか、引くのか。若いみなさんには、恐れることなく勇気を持って、ドンと押してほしい。そして、少し人生経験を重ねたら、慎重に考えて、さらに一歩を踏み込んでほしい。(ドアを)ノックしないと成果はない。それか将来への礎をつくるし、自分の目で見て、肌で感じることが大切」と語った。 「プロの厳しい世界で、いろんな逆風があった。でも、野球を取り巻く環境から逃げることとは違った」。 イチローさん「扉をノックしないと成果はない。それか将来への礎をつくるし、自分の目で見て、肌で感じることが大切」と語りかける〈2025年6月20日 大阪市此花区・夢洲〉 野球界で道を切り開いたイチローさん。「今、開けてみたい扉は?」と尋ねられると、返ってきた言葉が「料理」。7か月ほど前から始めたという。 「僕の場合、料理はもがいて扉を開けに行ったんじゃない。気づけばそこに扉があった」と振り返る。 「いつの間にか、下ごしらえや片付けまで好きになった。集中力があるから、どんどんのめり込んでいく。他のことがまったく頭に入ってこない。バターを何グラム使うとか考えるようになるぐらい。ある日、カルボナーラに和えるベーコンを1枚ずつ丁寧に炒めていたら、妻に『職人か?』と言われるぐらい、没頭していた」と近況を話した。 最後にイチローさんは、「僕は早い段階から、野球と出会い、いろいろな扉を開けてきた」と自らのステップアップを振り返り、「最も大きな扉はメジャー挑戦だった。みなさんも、早く好きなことを見つけてほしい。そこにはいろいろな扉がある。どんどんこじ開けて、未来をつかんでほしい」とエールを送った。 プロジェクトでは、イチローさんや俳優・役所広司さん、デザイナー・佐藤可士和さんらが平和への願いを込めてデザインしたTシャツを、ユニクロで販売している。 この日は国連が定めた「世界難民の日」。ペルーに暮らすベネズエラ難民の少年野球チームの様子を映像で紹介。世界で1億2000万人あまりが故郷を追われている実態(2025年4月現在)に触れたイチローさんは難民問題について、「他人事をいかに自分のことにできる、考えないといけない」と、プロジェクトの意義を訴えた。 ベネズエラの ユニクロを展開するファーストリテイリングは、Tシャツ販売金額の20%相当を、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)など、貧困や差別、紛争などに苦しむ人々を支援する国際的な団体に寄付している。寄付金額は、2025年1月末までに約20億円に到達したという。