首位阪神との差がどんどん開く…巨人の球団関係者は「大型補強に走るべきではなかった」 “優勝や日本一を逃せば即補強”が今季の低迷を招いたのか

 間もなく前半戦が終了する今年のプロ野球。パ・リーグは上位チームの混戦状態が続いているが、セ・リーグは阪神が頭一つ抜け出した一方で、昨年の優勝チームである巨人が苦しんでいる。【西尾典文/野球ライター】 【写真】ファン感動!チームが低迷する中で輝いた小林誠司選手の気迫溢れるプレー 停滞している選手が目立つ  開幕直後は順調に勝ち星を重ね、阪神と首位争いを演じていたものの、その後チームは失速。セ・パ交流戦でも11位に沈み、首位阪神と8ゲームもの大差をつけられての3位となっているのだ(7月7日現在)。4位のDeNAとは0.5ゲーム差しかなく、優勝はもちろん、このままではAクラス入りが危ない。  巨人苦戦の最大の原因は、やはり主砲・岡本和真の離脱である。5月6日の阪神戦における守備での交錯プレーで左肘を痛めて途中交代となると、翌日には一軍登を抹消。現在も実戦復帰を果たすことができていない。 低迷が続く巨人 出口は見えるか(巨人軍の公式ホームページより)  セ・パ交流戦後のリーグ戦を見ても、6月27日からのDeNAとの三連戦では投手陣の踏ん張りによって3試合連続無失点で3連勝を飾ったものの、その後の阪神、広島との6連戦は1勝4敗1分で、6試合でわずか6得点に終わっている。  そんな巨人に追い打ちをかけたのがリリーフ陣の乱調だ。7月3日の阪神戦では2対2の同点で迎えた9回から登板した絶対的守護神のマルティネスが今季初失点を喫してサヨナラ負け。さらに、打球を足に受けた影響で翌日から2試合はベンチ外となったのだ。  マルティネスの代役を任せられた大勢も7月6日の広島戦では1点差を守り切れずに逆転負けを喫した。巨人の今年最大の強みであるマルティネスと大勢が続けて打ち込まれて敗れたことは、単なる2敗以上の重みがあると言えるだろう。  ただ、そんな中心選手の故障、不調以上に大きな問題があるように見える。それは、チームの世代交代が停滞しているという点だ。原辰徳前監督は2019年からリーグ連覇を達成した後、3位、4位、4位という順位に終わり、2023年限りで退任となったが、投手は戸郷翔征、山崎伊織、大勢、野手では吉川尚輝、大城卓三、秋広優人、門脇誠らが主力へと成長した。  それが昨年のリーグ優勝に繋がる原動力となった。しかし、今シーズンの巨人を見てみると、この中で十分な活躍を見せているのは山崎、大勢、吉川に限られ、秋広はトレードでソフトバンクに移籍するなど、停滞している選手が目立つのだ。 どんぐりの背比べ  阿部慎之助監督が就任した昨年から台頭してきた選手は、井上温大、赤星優志、泉口友汰、増田陸らが挙げられる。井上は昨年と比べて大きく成績を落としている。また、秋広とのトレードで獲得したリチャードは、ここまで打率.095と全く結果を残すことができていない。  現状について、巨人の球団関係者は、以下のように話す。 「新監督が自分の色を出そうとして、新たな選手を引き上げることはよくあることです。阿部監督も就任前から二軍監督、一軍ヘッドコーチを歴任しており、自分が監督になったらこうしようという思いは持っていたはず。昨年はリーグ優勝こそしましたが、クライマックス・シリーズでDeNAに敗れたこともあって、チームを変えようという意識がより強くなったのではないでしょうか。ただ、ここまではそれがどちらかというと裏目に出ている。泉口や増田陸は頑張っていますが、なかなか腰を据えて起用されている選手はいません。良い言い方をすれば、チーム内の競争が激しいということになりますが、悪い言い方をすれば“どんぐりの背比べ”ですよね。岡本の不在でそれがより明らかになっているように思います」  巨人は7月7日時点で80試合を消化しているが、70試合以上に先発出場しているのは、セカンドの吉川とショートの泉口のみだ。多くの選手を起用しながら“使える選手”を見極めていると言えなくもないが、そこからチームの看板となるような選手はまだ見当たらない。それが現状である。 問われる手腕  そして、そのようなチーム状況になっているのは球団の構造的な問題点があるという。前出の球団関係者はこう話す。 「巨人は常に優勝争いをしなければならない。これは、常々言われることですが、それに縛られ過ぎていると思います。実績がある選手がいれば、とにかく獲得を調査する。昨年オフにマルティネス、甲斐拓也、田中将大らを獲得したのも、その典型例ですね。でも、チームを牽引してきたのは坂本勇人、岡本和真、菅野智之、戸郷翔征ら生え抜きの選手たちです。補強ももちろん必要ですけど、他球団から獲得して長く中心選手として活躍できる例はほとんどないですよね。また、育成選手を多く指名して抱えていても、他球団から実績のある選手が入ってきたら、育成から支配下に昇格できる選手はごくわずかです。一軍にもどうしても実績のある選手が優先して呼ばれる。それでは、若手選手のモチベーションが上がらないですよね。昨年もレギュラーシーズンでは優勝しているわけですから、そこまで大型補強するのではなく、既存戦力を引き上げる方に注力しても良かったのではないかなと思います」  実際、近年、巨人がFAで獲得した選手で期待通りの活躍を見せたのは、丸佳浩しかいない。それにもかかわらず、優勝や日本一を逃せば即補強に動くというやり方を続けてきた“ツケ”が現在のチームに表れている。  ライバルである阪神もかつては大型補強でチームを作っていたが、現在の主力は、生え抜きの選手が大半であり、スカウティングと育成が巨人よりも機能している。巨人は阪神との差をどうやって埋めていくのか。残りのシーズンで阿部監督とフロントの手腕が問われることになりそうだ。 西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 デイリー新潮編集部

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