能登半島地震から1年半 輪島市町野地区から“復興への思い” 鈴江キャスターが現地取材『every.特集』

鈴江キャスターが6月、石川県輪島市の町野地区を訪ねました。2024年1月の能登半島地震から1年半。地震や豪雨で倒壊した民家など、まだ多くの爪痕が残されていました。復興が進まない現状で、二度の災害から立ち上がろうとしている人々を取材しました。 ■地震から1年半 輪島の復興状況は… 6月、石川県輪島市。 鈴江奈々キャスター 「朝市の場所に来ました」 「今はすっかり建物などは撤去されています」 かつては観光客で賑わっていた輪島朝市。2024年1月の能登半島地震後に起きた火災でほぼ全焼しました。 その近くではビルが倒壊。甚大な被害を出した地震から、およそ1年半。 鈴江キャスター 「完全に撤去されていますね」 「いま重機が置かれていますが、既に更地になっています」 輪島市の中心部では被害を受けた建物の撤去が進んでいます。 ■地震に加え豪雨被害も “非常にショック” そこから車で30分ほど。輪島市の町野地区を訪ねました。 地震や豪雨で押しつぶされたままの民家が、まだそこかしこにあります。 輪島市・町野地区 崎田明さん(76) 「豪雨で全部、山津波で全部こっちに、道路の方に」 「非常にショックをうけた」 崎田明さん。生まれも育ちも、ここ町野です。 「(地震で)亀裂が入っていたところに水が入ったから」 鈴江キャスター 「地震で地盤が緩んでいたところに」 2024年1月の地震、9月の豪雨。二度の災害の爪跡が町野地区にはまだ深く残っています。 ■二度の災害で…復興進まぬ現状 崎田さんの自宅があった場所を案内してもらいました。 崎田さん 「ここ玄関」 地震で大きな被害をうけ現在は更地になっています。 「この辺は居間、隣が炊事場」 鈴江キャスター 「ああ、台所があって…」 こちらは地震前の崎田さんの自宅。3人の子供を育て、盆や正月には孫たちが集まってきました。 しかし、2024年の地震で全壊。解体を余儀なくされました。 鈴江キャスター 「大事な場所ですね」 崎田さん 「大事な場所…」 「しょうがない…しょうがない…」 かけがえのない我が家。思いは離れないと崎田さんはいいます。 ■四畳半の仮設暮らし “我が家を再建したい” 崎田さんは現在、仮設住宅で妻と2人で暮らしています。 崎田さんの妻 祐子さん(73) 「まな板を置くところもない」 鈴江キャスター 「ここでいつも斜めにして切って」 妻 祐子さん 「斜めにして」 キッチンに四畳半のスペース。2人ではなにかと手狭です。 崎田さん 「ここに寝ているから。私トイレが近いので夜中、足が(妻の)頭にぶつかって」 妻 祐子さん 「静かに歩いてって」 自宅の再建については—— 「これからの生活をどうしていくか悩んでいるところ」 崎田さん 「なんとか小さい家を建てて住みたい」 「お正月とお盆だけ、祭りと。(子や孫)が泊まれる部屋は確保したい」 子供や孫が集まれる我が家を再建したい。それが願いだといいます。 ■“負の財産にできない” 自宅再建の難しさ 生活の再建に向けて見通しが立たない人は他にも。 輪島市町野地区の住民 「(自宅は)がけの横なので建てられないし、土地を買ってまでこの年で建てて、子供たちの負の財産になっても困る」 「あと10年若かったら(家を)建てます」 70代の女性の自宅は地震後、危険な区域に指定されたため、同じ場所に自宅を再建することはできません。 ■地震後に地域の人口減少“さみしい” 輪島市では地震だけで約6割の住宅が半壊以上。被災者むけの災害公営住宅は完成までまだ3年かかる見通しです。 輪島市・町野地区 崎田明さん(76) 「私らは(輪島に)残るけど、金沢の方に行くという人も…さみしい」 鈴江キャスター 「やっぱりさみしさも…」 崎田さん 「さみしさ」 町野地区では、地震後に人口が約17%減少しています。(6/1時点) ■国重文も絶景スポットも…観光地の被害が心配 一方、崎田さんは、町野地区の観光地が大きな被害をうけたことが心配だといいます。 崎田さん 「これは屋根」 鈴江キャスター 「地震の被害で?」 崎田さん 「地震で」 ここは、地震の前は観光客で賑わっていた国の重要文化財です。江戸時代に建てられた「時国家住宅」。地震で倒壊しました。 崎田さん 「観光バスが駐車場いっぱいで待っていた。そういう賑わいがあった」 時国家近くの岩地も人気の観光地でした。 地震前には「窓岩」と呼ばれ、岩にあいた丸い穴に夕日が収まる絶景スポットでした。しかし、地震で岩が崩落。 鈴江キャスター 「ここ(観光地)が復興すると、町野の復興にも大きな意味?」 崎田さん 「そう思う。地元も活気が出る」 「観光地を元通りに、役所もそれなりに力を入れてほしい」 観光地の復興を崎田さんは待ち望んでいます。 ■カフェ開設“日常の会話を” ボランティアの思い また、仮設住宅や避難先での暮らしが長引く中、課題の1つとなっているのが“地域のつながり”です。 鈴江キャスター 「地域のつながりとか、何か変わったことはありますか?」 妻 祐子さん 「他の地区の人も一緒にここ(仮設)に入っているから、隣とあまりしゃべらない。都会のアパートと一緒」 崎田さん 「(一人暮らしの人は)なかなか仮設から出ないようになる」 コミュニティーの存続が危ぶまれる中、人々をつなごうとする取り組みも行われています。 こちらはボランティアが開設したカフェ。 住民 「やっぱりいいですね。コーヒーいれてお話すると楽しいし、会えなかった人にも会えるし、良かったですよ」 ピースボート 川村勇太さん 「日常を失ってしまった方たちが多くいる」 「『おはよう』とか当たり前の会話を交わしていただく。日常の会話を楽しんでいただけるように」 ■ふるさとに地域密着ラジオを開局 また、地元の有志が7月7日に地域に密着したラジオを開局。人々をつなげる助けになればと考えています。 災害ラジオの代表者 町野復興プロジェクト実行委員会 山下祐介 委員長 「みんなで前に向けて進んでいけるように。そのきっかけを作るラジオに」 ラジオでは、町野地区のイベントや住民からの手紙など、地域に特化した情報を発信しています。 山下委員長 「地域の人たち、町野の人たちにとって、必要な情報を流すことを一番に心がけたい」 「ラジオだったら、高齢者も若い人も使えるツール。情報が広く早く正しく伝わる」 ふるさとの人々と共に、二度の災害からどう立ち上がるのか、模索は続いています。 (2025年7月7日『news every.』より)

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